著者
植月 学 丸山 真史 菊地 大樹 武井 紀子 庄田 慎矢 覚張 隆史 諫早 直人 平野 修
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

牛馬に関わる文化複合の歴史的変遷と地域性を明らかにした。歴史的変遷については大陸の影響が残る古墳時代から古代において若齢での屠畜や肉食が行われていたのに対し、中世以降には都市外縁への処理場所の移転や、中世城館で牛馬肉食が常習的ではなかったことを明らかにした。牛馬肉食の忌避や穢れ意識は列島の家畜利用の特徴とされるが、その成立過程を考古学的に跡付ける見通しが得られた。地域的様相については特に北東北における馬利用の変遷が明らかになった。古代には同時期の東国よりも東国古墳時代との共通性が認められ、律令国家との歴史的関係性の差異が馬利用のあり方にも反映されていることが窺われた。
著者
白石 憲史郎 垣見 和宏
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

生体に備わる免疫応答を意図的に増幅し全身的な治療効果すなわちアブスコパル効果を惹起させることは腫瘍学上も大変斬新で魅力的であり、革新的な次世代の治療法に貢献し得る。近年癌治療の場面で最大の注目を集め続ける腫瘍免疫に着目しつつ、免疫チェックポイント阻害薬を用いて放射線照射を局所から全身治療へと発展させる新規治療戦略の開発を見据えた科学的根拠を分子細胞レベルで確立し臨床応用することが本研究の目的である。飛躍的に運用が拡がる免疫チェックポイント阻害剤だが、依然として以下の問題点が挙げられる。I. 標的病変の良好な反応性および生命予後延長が期待できる治療患者選別のためのバイオマーカーが未だ十分に確立していない II. 放射線治療併用における安全性有効性の検証が不十分 III.アブスコパル効果誘導に対するバイオマーカーが不明 IV. 腫瘍特異的遺伝子変異由来の新生抗原(ネオアンチゲン)が未解明これらのcriticalな問題点を解決するため、下記プロトコールの前向き臨床研究を検討した。I.放射線治療未施行例の原発巣または少数転移病巣:標的腫瘍に50Gy/5分割でSBRT II.放射線治療既施行例の照射野内再発病巣:サイズに応じて30-40Gy/5-8分割でSBRTprimary endpointは非標的病変に対する治療効果=アブスコパル効果の有無、secondary endpointは、IVR技術を用い治療前後に採取した標的・非標的病変腫瘍組織における特異的遺伝子変異の全エクソンシーケンスによる同定である。初年度は国内外で進むphase I/IIのoligometastasis症例に対する臨床試験等のバイオマーカー探索の詳細を徹底的に調査し、二年目は免疫治療で不可欠なPD-(L)1抗体等が投与される内科・泌尿器科・頭頸部腫瘍科・乳腺外科を含む横断的協力体制を構築し研究継続している。
著者
大江 朋子 高田 剛志 小川 充洋 古徳 純一
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

人は自らの身体と環境の状態を監視し,その時々で処理した情報を瞬時に統合させている。この情報統合において身体や環境の温度が社会的反応を導く可能性や,それに体温調節システムが関与している可能性はすでに論じられてきたものの,体温調節システムが社会的反応に影響するかは直接検討されないままであった。本研究では,身体の深部温や皮膚表面温の測定によりこれを可能にするとともに,温度情報が統合される過程で情報処理モード(攻撃と親和)の切り替えが生じるとするモデルを提案し,唾液中ホルモン(テストステロン,オキシトシン)などの生理的反応の測定とVR(virtual reality)技術を用いた実験を通してモデルの実証を試みる。
著者
安達 三美 岡崎 具樹
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

加齢により、糖尿病などの糖質コルチコイド(Glucocorticoid: GC)の過剰分泌によって起こる病態が発症しやすくなる。そこで、老化によるGC産生系の変化と、老化への影響について検討した。(1)ヒト副腎皮質腫瘍細胞株(H295R細胞)を用いて細胞老化を惹起させると、GADD45Aおよびp38MAPK を介して、GC産生が亢進することを見出した。(2)血清中のGCが高齢マウスで高いことを見出した。また若いマウスで認められるGCの日内変動が、高齢マウスで消失することを見出した。加齢によるGC分泌系の撹乱により、老化そのものや、老化関連疾患の発症および進行が促進されることが示唆される。
著者
平野 修 河西 学 平川 南 大隅 清陽 武廣 亮平 原 正人 柴田 博子 高橋 千晶 杉本 良 君島 武史 田尾 誠敏 田中 広明 渡邊 理伊知 郷堀 英司 栗田 則久 佐々木 義則 早川 麗司 津野 仁 菅原 祥夫 保坂 康夫 原 明芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

奈良・平安時代において律令国家から、俘囚・夷俘と呼ばれたエミシたちの移配(強制移住)の研究は、これまで文献史学からのみ行われてきた。しかし近年の発掘調査成果により考古学から彼らの足跡をたどることが可能となり、本研究は考古学から古代の移配政策の実態を探るものである。今回検討を行った関東諸国では、馬匹生産や窯業生産などといった各国の手工業生産を担うエリアに強くその痕跡が認められたり、また国分僧尼寺などの官寺や官社の周辺といったある特定のエリアに送り込まれている状況が確認でき、エミシとの戦争により疲弊した各国の地域経済の建て直しや、地域開発の新たな労働力を確保するといった側面が強いことが判明した。
著者
青山 晃治
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

Alzheimer病(AD)患者の脳内では、酸化ストレスの亢進と抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の減少が報告されており、神経細胞内のGSHを増加させることはADの進行に対し抑制的に働くと考えられる。しかし、末梢投与されたGSHは血液脳関門を通過できないため有効な治療法となり得ない。本研究では、神経GSH産生を抑制するmicroRNA(miR-96-5p)に対し、そのinhibitor(miR-96-5p anti-miR)を経鼻投与することにより脳内GSH産生を促進し神経変性抑制効果を発揮するかどうかを明らかにすることが第一の目的である。まず、経鼻投与によるanti-miRの中枢移行性を確認するために、蛍光標識されたmiR-96-5p anti-miRをC57BL6マウスの鼻腔内に投与する実験を行った。経鼻投与3日後に採取した脳組織から海馬組織切片を作成し、miR-96-5p anti-miRの中枢移行性を共焦点蛍光顕微鏡下で確認したところ、海馬神経細胞層CA1~CA2にかけて蛍光が確認され、経鼻投与によるanti-miRの中枢神経(海馬)への移行性が示唆された。さらに、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与による海馬GSH量の変化について、GSH蛍光標識であるCMFDAを用いて検討した。対照群には、生理食塩水およびscrambled anti-miRを同様に投与した。miR-96-5p anti-miR投与群においては、経鼻投与3日後に海馬神経細胞層のCMFDA蛍光シグナルの増強が確認された。この結果から、miR-96-5p anti-miRの経鼻投与により海馬GSH量は増加すると考えられた。現在、海馬サンプルを用いたHPLCによるGSH測定を行っているが、統計学的評価を行うためのサンプル数には至っていない。
著者
渡邉 公太
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、戦間期日本の国際連盟外交の実態を、外務省内の「連盟派」と呼ばれた外交官たちの活動を通じて明らかにするものである。国際法・条約解釈に関し、「連盟派」たちはいかにして日本の国際協調と満蒙権益の維持という重大な外交目標を両立しようとしたのか。本研究はこれまで本格的な検証がなされることのなかった「連盟派」を、国際情勢の変化にいかなる法理論でもって対応しようとしたのか考察し、当該時期の日本の「国際協調」の実態をとらえなおす。
著者
日暮 吉延
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本人戦犯釈放をめぐる戦後日本外交の政策と対応を一次資料にもとづいて分析するものである。研究代表者は、これまで戦犯釈放問題に関して、対日講和条約発効(日本の主権回復)の前と後に分けたうえで「連合国側の行動」を分析した。これに対して、本研究が取り組んだのは、1950 年代の日本外交が戦犯釈放問題でどのような行動をとったのか、この問題に関する事実を解明することである。そして、この「日本側の行動」は上記の「連合国側の行動」と統合され、研究代表者の「日本人戦犯釈放史」が完成することとなる。
著者
張 賢徳
出版者
帝京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

(1)自傷行為中に解離状態が生じている、(2)自傷行為中の解離状態が強いほど自傷は重症になる、(3)解離性向が強いほど自傷を起こしやすい、という3つの仮説を立て、これらを検証することが本研究の目的である。対象は精神科患者であり、自傷行為歴、自傷行為歴があった場合にはその行為中の解離度、そして普段の解離性向について、面接ならびに質問紙法によって情報収集を行った。解析方法は、仮説(1)に対して、自傷行為時に解離状態を呈した者の割合を調べる。仮説(2)に対しては、自傷行為中の解離度を質問紙(Peritraumatic Dissociative Experiences Questionnaire)で測定し、その程度と身体重症度との相関を調べる。仮説(3)に対しては、普段の解離性向を質問紙(Dissociative Experience Scale;DES)で測定し、自傷行為群と非自傷行為群の間でその得点を比較する。うつ病性障害の患者200名、精神分裂病患者50名が現在解析可能な段階にある。その他の疾患群では情報収集を続けてきたが、十分な解析に耐えうる数がまだ集まっていない。うつ病性障害では、上記の仮説3つとも支持される結果が得られた。精神分裂病では、仮説(1)、(2)は支持されたが、仮説(3)は支持されなかった。この解釈として、精神分裂病患者は解離性向に無関係に強い覚悟の上の自殺念慮によって自傷行為を起こすと考えられる。つまり、彼らの自殺念慮の高まりには解離はあまり関係せず、一旦強い自殺念慮を抱くと、解離性向に関係なく実行する(「覚悟の上の自殺」と考えられる)。しかし、DESの質問事項の一部が精神分裂病症状に近似しているものがあるため、これらの項目の扱いを再検討して解析することも予定している。本研究から、うつ病性障害では、希死念慮プラス強い解離性向が自殺の危険因子であることが示唆された。
著者
長綱 啓典 バッソ ルカ シュトルク セバスティアン
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の主要な目的は、ライプニッツの公共の福祉論を彼の実践哲学の核心として取り出し、その特徴と歴史的意義を明らかにすることに存する。この目的を実現するために、一年目にはイタリアからルカ・バッソ博士を、二年目にはドイツからセバスティアン・シュトルク博士を招聘し、それぞれ講演を開催した。また、研究代表者自身も、ライプニッツの公共の福祉論の重要なファクターである、彼の保健・衛生行政論について学会発表を行った。これらの研究により、ライプニッツの公共の福祉論の特殊近世的な特徴がこれまで以上に明らかとなった。
著者
黒田 美保 浜田 恵 辻井 正次 稲田 尚子 井澗 知美
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は,心理士を中心にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された自閉スペクトラム症幼児療育方法であるJASPER日本版を実施し,効果検証を行った。(方法)参加者:介入群は病院や療育施設より紹介を受けた8名で,対象群は1つの療育施設に通う8名。手続き:介入群は,中京地区と関東地区の3施設で実施した。実施回数は週1回で20回,1回のセッションは,UCLAと同じく40~45分とした。対象群は,関東地区の施設で,従来からやっている構造化による療育を週1回20回行った。実施前に,子ども自身に,新版K式発達検査,ADOS-2(自閉症観察検査第2版)を実施。効果検証としては,子どもには,SPACE(Short Play and Communication Evaluation)および「心の理論課題」中のアイトラッキング(視線移動計測)を行った。SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査とアイトラッキングは介入前後のみである。保護者には,Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し,これらの変化を比較する。現在は,データを蓄積している段階であるが,JASPERを実施した介入群では,現在までに,要求行動・共同注意行動の改善と遊びの水準の向上が見られた。また,視線移動計測による自閉スペクトラム幼児の「心の理論」の理解については,両群を合わせた初期データを解析した。その結果,自閉スペクトラム児でも近親化課題では全員正解することができたが,「心の理論」課題では正答率は低下し個人差が大きくなった。同時に,SPACEの妥当性を調べるために,定型発達児10名についてSPACEとADOS-2を行い,現在解析中である。また,心理士のJASPERの実施スキルの向上のための勉強会を月1回実施した。
著者
森谷 公俊 鈴木 革
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

紀元前329年から326年までのアレクサンドロス大王遠征路の実地調査を行った。ウズベキスタン(古代ソグディアナ)では、アムダリヤ川の渡河点および正妃ロクサネの故郷とされるクズルテパ遺跡を調査した。最大の課題は地元住民が立てこもった3つの岩砦の特定であったが、現地の状況により登山は不可能で、完全な実証には至らなかった。パキスタン(古代インド)では北西辺境州において、スワート地方の住民が立てこもったピールサル(古代アオルノス)へ2度の日帰り登山を行い、現場を精査して戦闘状況を復元できた。またインダス川下りの行程を可能な限りたどった。大王の遠征地域がいかに豊かな多様性を持っていたかが認識できた。
著者
藤澤 明
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジョージアを含む南コーカサス地方での銅合金利用の歴史は古く、初期青銅器時代からの多くの資料が発掘されている。それらを収蔵しているのがジョージア国立博物館である。そこで、2014年より国立博物館と共同で、初期青銅器時代から鉄器時代までの銅合金製資料の調査を行った。その結果、検出された銅合金の種類は、砒素銅、青銅、銅-錫-砒素合金、真鍮であり、初期青銅器時代から初期鉄器時代にかけて砒素銅合金が検出されている。これまで当該地域においては、中期から後期青銅器時代の間に使用される銅合金が砒素銅から青銅に切り替わるとされてきた。しかし、砒素銅は初期鉄器時代に至るまで使用され続けたことが明らかとなった。
著者
五十嵐 敏雄 五十嵐 正雄
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

卵巣チョコレート嚢胞を有する不妊症患者は自然妊娠を期待して嚢胞病変摘出術を受ける。術後119名に関する多因子分析を行い、自然妊娠までは平均15ケ月間要したが、患者さんがエピナスチンなどの花粉症薬を使用した場合は平均2.7ケ月で自然妊娠に至っていた。また花粉症合併症例は3.3倍再発が多いが、3.9倍自然妊娠も多いという結果になった(95%信頼区間;1.065-15.007)。つまり、卵巣チョコレート嚢胞花粉症合併例は、再発のハイリスクだが、妊娠に関しては花粉症薬のためか早期自然妊娠しやすい。現在、自然妊娠しやすい術式を開発中で、病変のアポトーシス抵抗性からの解放も今後続けて検討していきたい。
著者
井上 史子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、フィンランド、オランダ、シンガポール、日本の各高等教育機関を訪問し、職業教育やアントレプレナーシップ教育の状況について聞き取り調査を行った。おもな訪問大学は、フィンランドはJAMK University of Applied Sciences、Metropolia University of Applied Science、オランダはAmsterdam University of Applied Sciences、シンガポールはSingapore University of Technology and Design、National University of Singapore、Nanyang Technological University、日本は九州大学QRECの各高等教育機関である。JAMK University of Applied Scienceでは大学における研究開発活動や教育プログラムの外部への提供等について教育開発担当者や質保証担当者にヒアリングを行った。また、当該大学で学ぶ留学生にも学修成果についてのヒアリングを行った。Singapore University of Technology and Design(SUTD)では、教学担当の副学長よりシンガポールにおける専門職養成の現状について話を聞くとともに、カリキュラム担当者より当大学におけるカリキュラム内容についてヒアリングを行った。SUTDでは工学の専門教育に加え、デザイン思考の授業やHASSと呼ばれる教養科目も組み込んだカリキュラムを設計しているとのことであった。教員のFDについては、授業はティーム・ティーチングで行うためそれが相互研修となり、教育力向上に役立っているとのことであった。なお、シンガポールではすべての大学にアントレプレナーシップセンターが置かれている。
著者
佐々木 茂 渡辺 博芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

著者らは,質の高い Web 教材開発のため,インストラクショナルデザインのモデルに沿って授業全体の構成や流れを記述した「授業アウトライン」を作成するとともに,教材そのものの設計に特化した「コンテンツアウトライン」を作成する手法を提案している.本研究では,この手法をシステム的なプロセスと考え,この手順に沿った授業・教材設計を支援するツールを開発した.また本ツールを用いた教材コンテンツの設計・開発を実践した.
著者
大藏 直樹 大石 勝隆 谷口 雅彦 厚味 厳一
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血栓を予防するとされる健康食品を対象にして探索を行い、 あした葉やプロポリスが血栓症予防効果を持つ可能性のある食品であることを見出した。また、あした葉に含まれるキサントアンゲロール、プロポリスの成分であるクリシンが有効な成分であることを示した。しかし、血液凝固系の日内変動を考慮した健康食品の摂取の有効性については明らかでない点が多く、機能性食品の開発に向けては今後も有効な物質の探索や摂取法の検討など、基礎的な研究を継続する必要がある。
著者
大野 雅子
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

17世紀後半に東インド会社によってイギリスに持ち込まれた紅茶や陶磁器などの茶道具は、富裕層にとっては自らが上品でポライトな階級に属していることを示すための重要な物質文化を形成した。紅茶や茶道具に熱狂する女性は17世紀から18世紀にかけての文学作品に数多く登場し、皮肉や揶揄の対象となる。さらに、女性の物欲の激しさは性欲の激しさと同一化される。聖書に始まる女性蔑視の伝統は紅茶と陶磁器という新たなメタファーを得ると同時に、「脆き器」としての女性はその激しい欲望を携えて消費文化の中を跋扈する存在となるのである。