著者
豊原 英子 猪谷 富雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.43, pp.22-23, 2002-08-01

クズ(Pueraria lobata Ohwi)は万葉の昔から秋の七草の一つに数えられ、秋の風物として鑑賞されてきた。多くの歌にも詠まれていて、古人の見たクズの生態的特徴を良くとらえていて味わい深いものもある。又、図1に示すように、クズの利用価値も高く評価されていて、根から採られるでんぷんは病人の高級な食材、原料として古くから使われてきた。漢方薬としても利用されてきた。その他、葛布や高級襖紙、また紐代わりや工芸品素材としても使われ、人々の暮らしの中にクズ全体が根付いていた。ところが、戦後、農耕用肥料や牛馬の餌その他あらゆることに殆ど使われなくなり、現在ではクズが猛威を振るって林業関係者、農業従事者などには、最強の雑草として嫌われている。このようなクズを見直す為、昔から我々の祖先が生活の中で深く関わってきた自然界のクズを現代人はどんな捉え方をしているのかを探るためにアンケート調査をし、実態把握をした。1人でも多くの理解者を得て、クズを有効に利用したいと願っている。
著者
杉本 秀樹 越智 由紀恵 浅木 直美 諸隈 正裕 加藤 尚 荒木 卓哉 ホセイン シェイク タンヴィ-ル
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.246-252, 2019-10-05 (Released:2019-11-12)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近年,クラゲが日本近海に大量発生し,水産業や臨海施設に大きな被害を与えているが,このクラゲを脱塩・乾燥した細片(クラゲチップ)を水田に施用すると肥料効果だけでなく抑草効果を併せ持つことが示された.しかし,収量が慣行栽培(化成肥料,除草剤使用)より約10%低いこと,抑草効果が不十分でかつ不安定であることなど実用化に向けての様々な課題が指摘された.そこでクラゲチップと同様に2つの効果を併せ持ちながら含有成分や肥料効果の発現時期の異なる米ぬかに着目し,これをクラゲチップと併用して試験を行った.その結果,クラゲチップを単独に施用した場合に比べ,両者を併用した場合には収量は慣行栽培とほぼ等しく雑草発生量は顕著に減少した.本研究よりクラゲチップと米ぬかを併用することで,慣行栽培なみの収量が得られ,抑草効果も顕著に高まることが明らかになった.収量性の向上は,両者の成分含有率と肥料効果発現時期の違い,抑草効果の向上は両者がそれぞれ持つ成長抑制物質の違いによる相乗効果に起因したと考えられた.
著者
劉 建 辺 嘉賓 塩津 文隆 GHOSH Subhash Chandra 豊田 正範 楠谷 彰人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.326-332, 2008-07-05
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

日本型水稲4品種の幼植物を50mMのNaClストレス下で16日間水耕栽培し, 品種の耐塩性を調査した. 生育にはグロースポーチを使用し, 画像解析を用いて根の直径別の根長と根表面積を測定し, 根系形態と耐塩性との関係を解析した. 対照に対する塩処理の全重と相対成長率の低下程度から, 農林18号の耐塩性が最も高いと判断された. 処理別, 両処理込みにかかわらず相対成長率は葉面積比ではなく純同化率に一義的に規定されていた. 純同化率は個体当たり根長および根表面積と正の, 茎葉部Na含有率および葉面積/根表面積比(LA/RA比)と負の相関関係にあった. 茎葉部のNa含有率は個体当たり根長や根表面積が増加するほど指数関数的に減少し, LA/RA比とは正の相関関係にあった. 塩ストレス下において農林18号は直径0.169mm以下の2次根や3次根, および直径0.5mm程度の冠根の減少程度が少なかったため, 個体当たり根長と根表面積は他品種よりも多かった. 塩ストレス下において農林18号の根系の減少程度が小さく, LA/RA比が低いことは他の品種より吸水能力に優れていることを示唆している. このことから, 農林18号は塩ストレス下でも蒸散速度が高く, 蒸散流中のNa排除機構が効率的に作用したために茎葉部のNa含有率が低く抑えられたと推察される. また, 体内の水分含有率の低下を抑えたことにより高いNARを維持し, その結果高いRGRを達成したと推察された.
著者
谷山 鉄郎 河田 いこい
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.72, pp.33-39, 1975-05-01

近年、セメント工場排煙による公害が大きな社会問題となっている。本間(1973)は東京都日の出村におけるカドミウム汚染が同村の日本セメント工場の排煙に基因していることをつきとめた。また、板野ら(1974)は三重県員弁郡藤原町の小野田セメント藤原工場の排煙によって、同工場周辺の農地が汚染され、この汚染源が小野田セメト藤原工場であることを明らかにした。その後我が国各地でセメント工場による重金属による汚染が表面化している。セメント工場排煙中には重金属(Cd、Zn、Pb、Cu)、いおう酸化物(SO_2、H_2SO_4)、窒素酸化物(NO、NO_2)および粉じん等が含まれている。これらは、それぞれ単独でも農作物および自然植生植物の生長を阻害し、作物の生産を減退させることが明らかにされている。本実験は小野田セメント藤原工場の排煙に基因した藤原町の重金属等によって汚染された農地(畑土)と非汚染土壌における生長および乾物生産の比較を行ない、どの程度の生育阻害および乾物生産の減退がみられるものかを明らかにしたものである。また、本実験の結果、汚染土における生育.生産の減退が明らかになったので、藤原町における玄米収量が歴史的に小野田セメントのセメント年間生産高と何らかの関係が成立するものと考え、三重県と藤原町の10a当たり玄米収量の比較を行ない、セメント生産高との関係を検討したものである。また1973年と1974年に同工場周辺の汚染農地の水稲の坪刈り調査を行なった。
著者
永松 土巳 立野 喜代太
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.17, pp.6-10, 1961-10-25

著者ら(1960)は前報において,原爆稲の後代に出現した三染色体植物を,形態的に5型に分類できたとを明らかにしたが,これら三染色体植物種子の発芽性について,二三の知見を得たので,その概要を報告する。
著者
Shigeto Fujimura Kunio Yoshioka Takashi Saito Mutsuto Sato Makoto Sato Yuuki Sakuma Yasuyuki Muramatsu
出版者
日本作物学会
雑誌
Plant Production Science (ISSN:1343943X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.166-170, 2013 (Released:2013-03-19)
参考文献数
13
被引用文献数
45

Radionuclides were released into the environment as a consequence of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident that occurred on 11 March 2011. Radiocesium at an abnormal concentration was detected in brown rice produced in paddy fields located in northern part of Fukushima Prefecture. We examined several hypotheses that could potentially explain the excessive radiocesium level in brown rice in some of the paddy fields, including (i) low exchangeable potassium content of the soil, (ii) low sorption sites for cesium (Cs) in the soil, and (iii) radiocesium enrichment of water that is flowing into the paddy fields from surrounding forests. The results of experiments using pots with contaminated soil indicated that the concentration of radiocesium in rice plants was decreased by applying potassium or clay minerals such as zeolite and vermiculite. The obtained results indicated that high concentrations of radiocesium in rice are potentially a result of the low exchangeable potassium and sorption sites for Cs in the soils. Application of potassium fertilizer and clay minerals should provide an effective countermeasure for reducing radiocesium uptake by plants. Radiocesium-enriched water produced by leaching contaminated leaf litter was used to irrigate rice plants in the cultivation experiments. The results indicated that the radiocesium concentrations in rice plants increased when the radiocesium-enriched water was applied to the potted rice plants. This indicated the possibility that the radiocesium levels in brown rice will increase if the nuclide is transported with water into the rice paddy fields from surrounding forests.
著者
桑村 友章 中川 祥治 木村 友昭 善本 知孝
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.38-39, 1995-04-03

微生物資材「救世EM-1」の使用説明書に基づいた条件での土壌改良および葉面散布処理は, エダマメの生育・収量・品質には影響を及ぼさなかった.
著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-12, 2008 (Released:2008-02-08)
参考文献数
121
被引用文献数
57 70

近年, 登熟期の高温により米の品質や玄米1粒重が低下する, いわゆる高温登熟障害が頻発していることが指摘されている. 地球的規模の温暖化の進行にともない今後の被害の拡大と甚大化が懸念される. このため高温登熟障害の克服に向けて, メカニズムの解明と対策技術の開発が喫緊の課題である. 本稿では, イネの高温登熟障害の実態, 背景を示すとともに, 主な症状である白未熟粒, 充実不足, 胴割れ粒の発生と玄米1粒重の低下, 食味の低下のメカニズム, 耐性品種など発生回避技術の開発に関する知見を整理し, 今後の研究方向を論じる.
著者
福井 春雄 藤原 公 村岡 高志 次田 隆志
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-8, 1989-12-25

キチンとはカニ・エビなどの甲殻類,昆虫などの甲皮,きのこ,細菌細胞壁などに広く分布する天然高分子多糖であり,その脱アセチル化物がキトサンである。それらの化学構造は,木材などの構成成分であるセルロースに似ているが,セルロースの構成単位がグルコースであるのに対し,キチンはグルコースにアセトアミド基がついたN-アセチルグルコサミンが構成単位となっている。キトサンはキチンのアセトアミド基からアセチル基が取れたものである。当社では,冷凍食品,特にエビフライの製造工程で排出されるエビ殻から得られるキチン・キトサンの有効利用研究を行っており,その一つである農業分野への利用として,さまざまな方法でキトサン処理を施した植物の生長促進効果に関する研究を推進している。高等植物はキチン・キトサンをその構成成分として有さないにもかかわらず,それらの分解酵素であるキチナーゼやキトサナーゼを持っている。これらの酵素の植物における機能は,未だ充分には明らかにされていないが,平野らによれば,病虫害に対する植物の自己防護機能に関与しているとされている。また,植物種子をキトサン被覆することにより種子発芽過程においてキチナーゼ活性が誘導されることや,キトサンが植物カルス形成におけるキチナーゼ活性を誘導するとともにカルス形成を促進することが報告されている。さらに,ダイコンの種子被覆により,収量が7〜13%高まったといっ報告もある。すなわち,キトサンにより,外敵に対する植物の自己防護機能が作用し,さらに細胞の活性化機構が働くことによって植物の生長が促進されるというメカニズムが推測されており,キトサンの有するこの機能を応用して,植物生産を人為的に高める新しい手法の開発が期待される。本研究は,種々の方法でキチン・キトサン処理した野菜とくに根菜類の生長状況と植物体中のキチナーゼ活性および無機成分含量を調べることによって,植物に対するキチン・キトサンの生長促進効果とその作用性を明らかにすることを目的として実験を行った。