著者
古林 万木夫 田辺 創一 谷内 昇一郎
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.96-101, 2007
被引用文献数
1

醤油は日本を代表する発酵調味料の一つであるが,これまで醤油中の小麦アレルゲンの残存性について全く研究が行われていなかった.そこで我々は,醤油醸造工程中の小麦アレルゲンの分解機構を調べるために,小麦アレルギー患者の血清を用いた3種類の免疫学的検査手法により醸造中の小麦アレルゲンを測定した.その結果,製麹中に麹(こうじ)菌が生産する酵素により小麦アレルゲンは分解を受け,さらに諸味(もろみ)中でも経時的に分解されて,生揚(きあげ)や火入れ醤油では小麦アレルゲンは完全に消失していることが明らかとなった.また,10種類の市販醤油(淡口,濃口,再仕込み,白)から小麦アレルゲンは検出されなかった.
著者
吉田 幸一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.308-315, 2019

<p> 保湿剤や食物の早期摂取によるアレルギー疾患の発症予防に関する研究結果が報告され, 医療機関での診療だけでなく, 離乳食の開始など一般的な生活にも大きな影響を与え始めている. </p><p> 高緯度地域にアレルギー疾患をもつ患者が多いという横断的疫学調査の結果から, ビタミンDはアレルギー疾患の発症に関連がある因子の1つとして以前から考えられていた. その後, ビタミンDが免疫や肺の発育にも影響を及ぼすことやビタミンD欠乏症がアレルギー疾患発症のリスクになることが報告され, 最近では, 妊娠中のビタミンDサプリメントによる乳幼児の喘鳴抑制効果を示したランダム化比較試験の研究結果が報告されている. しかし, 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患に対する抑制効果を示す研究は少なく, 現段階ではアレルギー疾患の発症予防のためにビタミンDサプリメントを使用するエビデンスは十分ではなく, 推奨されない. 臨床応用までにはさらなる研究が必要である. </p>
著者
堀向 健太
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.316-325, 2019

<p> アトピー性皮膚炎 (AD) が他のアレルギー疾患の発症リスクを上げることが明らかになってきたため, その発症予防と増悪予防が注目されている. そして皮膚バリア保護により経皮感作を防ぐという観点から, 新生児期からの保湿剤定期塗布によりAD発症リスクを低下させるという報告が増えてきている. しかし, 保湿剤の定期塗布のみでAD以外のアレルギー疾患も防ぐことができるかに関しては, 大規模介入試験の結果を待つ必要がある. 一方, 経皮感作は 「経湿疹感作」 ともとらえることができ, 皮膚の炎症病変に対する早期介入試験が感作を予防するかを検討するために現在進行中である. さらに積極的に経口免疫寛容を誘導する目的で, 離乳食早期導入による食物アレルギー発症予防の検討が報告されるようになった. しかしそこでも, 皮膚の治療を並行して行う必要性があることが判明してきている. 最近, アレルギー疾患発症予防に対し衛生仮説やビタミンD仮説に関しても知見が増えてきており, 多面的に考えていく必要性が出てきている. </p>
著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.78-86, 2005-03-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

目的; 食物アレルギーの実態調査は, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者側の行動に着目した原因食品の販売形態や発症場所, 発症時の対処方法に関する調査研究はないので実態調査を行った.方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1,510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答を得た.結果; アナフィラキシーの原因食品の販売形態は,「容器包装加工食品」,「店頭販売品」「レストラン (食堂) での食事」の順となっていた. 発症場所と販売形態の関係では,「自宅」で「容器包装加工食品」や「店頭販売品」による発生が最も多く, ほぼ毎日摂食している「学校給食」よりも「レストラン」での食事,「ファーストフード」での「店頭販売品」による発生が多い結果となった. アナフィラキシー発症時の軽快までの時間では, そば, 落花生が乳, 卵, 小麦よりも長く発症件数の多さの順とは異なっていた.
著者
村上 佳津美 土生川 千珠 長坂 行雄 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.574-579, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
17

声帯機能不全(vocal cords dysfunction:VCD)は,吸気時に開大するべき声帯が内転し,閉塞するため気流制限が生じ呼吸困難をきたす.聴診される連続性ラ音は,吸・呼気相の全肺野で聴診されることもあり,喘息との鑑別は困難である.またVCDは喘息と併存することもある.そのためステロイド治療に抵抗性であるが,投与される症例がある.今回,10歳女児のVCDと10歳男児の喘息児の連続性ラ音をβ2刺激薬吸入前後で呼吸音解析(LSA 2000)を施行し検討した.解析結果では,VCDは,最強度を示した周波数は,130 Hzであった.それは,喘息の最強度の周波数よりも低周波数帯域で吸気に多く記録されており,またβ2刺激薬吸入で改善を認めなかった.小児では,両疾患の発作時に肺機能検査や喉頭鏡などの検査は困難なことがある.呼吸音解析は,安静呼吸で行う非侵襲的検査である.今回の2症例においては,呼吸音解析による鑑別診断の可能性が示唆された.
著者
大仲 雅之 西川 宏樹 石原 万理子 西山 敦子 吉田 さやか
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.96-101, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

気管支喘息診療において, ロイコトリエン受容体拮抗薬 (leukotriene receptor antagonist : LTRA) は, 重症度を問わず, 単独もしくは吸入ステロイド薬との併用薬として幅広く推奨されている. 一般に副作用は少ない薬剤であるが, 代表的なLTRAの1つであるモンテルカストの添付文書には, 頻度不明の副反応として異夢や夢遊症の記載がある. 今回われわれは, モンテルカスト服用後に睡眠時遊行症 (夢遊症) 症状を呈した症例を経験した. 症例は7歳男児. 食物アレルギーのため外来で経過観察中であったが, 某年9月ごろ, 起床前の激しい咳嗽が持続するようになった. アレルギー歴, 環境抗原への感作, 咳嗽の様式などから気管支喘息症状と考え, モンテルカストの内服を開始した. 内服開始後2日目から2日続けて睡眠時の異常行動を認めた. 内服を中止したところ, 症状は速やかに消失したことから, モンテルカスト関連の睡眠時遊行症様症状と思われた. モンテルカストによる同様の報告はまれであるが, 他の精神神経症状を生じることもあるとされており, 処方開始時には注意を喚起する必要があると思われた.
著者
山本 貴和子
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.20-25, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
24

アレルギーマーチは, いくつかのアレルギー疾患が原因 (抗原) と発現臓器 (疾患) を異にしながら経過していく現象と定義され, 1つのアレルギー疾患を契機にアトピー性皮膚炎 (AD), 食物アレルギー, アレルギー性鼻炎 (花粉症), 喘息といった一連のアレルギー疾患を次々と発症していくことが示された. 一般的に1歳までにまずはじめにアトピー性皮膚炎を発症し, 続いてその後の小児期に, 食物アレルギー, 気管支喘息, アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を次々と発症する. 様々なコホート研究から, 乳児期早期のアトピー性皮膚炎によりその後の食物アレルギー, 喘息, アレルギー性鼻炎のリスクが高まると報告されている. 将来的なアレルギーマーチの予防のためには, アレルギーマーチの源流にあるADに対する適切な介入が重要であると考えられ, 早期積極的治療介入により, その後の食物アレルギー, 気管支喘息, アレルギー製鼻炎などのアレルギー疾患の発症を抑制することができるのではないかと期待されている.
著者
溝尻 素子 真田 幸昭
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-12, 1988
被引用文献数
1

国立療養所兵庫中央病院に長期入院中の気管支喘息児15名に副流煙のみでCO7~8ppm, 30分間の受動喫煙負荷を行った.<br>負荷前及び負荷6時間後まで Flow-volume Curve, FRC, TGV, Raw, SGawを測定し, また, 負荷2時間後までのCO-Hbも測定した.<br>CO-Hbは0.21%上昇し, 負荷中止2時間後も高値を示した。<br>Flow-volume 系には有意の差がなかったが, FRC, TGVの低下, Rawの上昇, SGawの低下が見られた.<br>特に負荷6時間後もRawの上昇, SGawの低下傾向が持続した.<br>タバコ煙に対するアレルゲンテストが陰性であり, これらの受動喫煙による変化はアレルギー機序よりもタバコ煙のもつ易刺激性が非特異的刺激として, 気道過敏性を介して発作誘発をもたらすと推測される.
著者
栗原 和幸
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.737-744, 2008-12-10 (Released:2009-03-09)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

食物アレルギーの治療について考えてみると,耐性化に望みを託しつつアレルゲン食品の除去を続けることと誤食による急性症状の注意を与えることしかないのが現状である.しかし,食物アレルギーの発症に関して,経皮感作の可能性,経口免疫寛容による耐性誘導の成立などが解明され,根本的に病態のとらえ方を刷新しなければならない状況が見えてきた.積極的にアレルゲンとなる食品を経口的に摂取することで食物アレルギーを予防,あるいは治療できる可能性もあり,アレルゲンとの接触を断つ,と言うアレルギー疾患における指導原則は食物アレルギーに関してはあてはまらないのかも知れない.
著者
望月 博之
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.745-754, 2008-12-10 (Released:2009-03-09)
参考文献数
33

気道は外界の刺激に接する機会の多い臓器であり,吸入性のアレルゲンがもたらすアレルギー性炎症だけでなく,大気中の汚染物質や細菌,ウイルス類も,粘膜に傷害をもたらすことが知られている.これらの気道傷害の多くは,気道粘膜上の酸化ストレス反応に起因すると考えられるため,喘息の発症,悪化の病態に酸化ストレスは重要な意義を持つと思われる.一方,気道粘膜は様々な抗酸化因子を有しており,酸化還元反応を介して酸化ストレスに対応し生体の恒常性を保っている.このような制御機構はレドックス(Reduction and Oxidation; Redox)制御と呼ばれるが,喘息患者の気道ではレドックス制御に何らかの破綻が生じている可能性も推測されている.酸化ストレスとレドックス制御の側面から考えれば,喘息の治療に抗酸化薬を加えることは有意義であると思われる.
著者
楳村 春江 和泉 秀彦 小田 奈穂 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.691-700, 2015
被引用文献数
1

【目的】鶏卵・牛乳アレルギーであった児の除去解除が進み,完全解除が許可された時点における食生活の実態を評価した.【方法】2013年5月~12月の外来受診時に主治医より完全解除を許可された鶏卵アレルギー16名,牛乳アレルギー1名,鶏卵+牛乳アレルギー21名を対象にアンケート調査を実施した.さらに,その中で協力の得られた21名の保護者からは,写真判定を含む3日間の食事調査を行った.【結果】家庭内,外食,買い物においては改善がみられ,保護者の負担は軽減していた.しかし,大量摂取や卵低加熱料理については,未だに症状誘発に対する恐怖感,不安感を持っていた.食事調査の結果からは,一日当たりの鶏卵,牛乳そのものの摂取は過半数の患児が鶏卵1/2個,牛乳100ml以下であり,牛乳アレルギー児は,カルシウムの摂取量が目標量を下回っていた.【結語】除去食生活の長期化による食べないことの習慣化や保護者の不安などが要因となり,多くの患児にとって「真の解除」を得ることが困難である実態が明らかとなった.
著者
相原 雄幸
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.138-145, 2012 (Released:2012-05-31)
被引用文献数
1

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn)は食物アレルギーの特殊型に分類される比較的稀な疾患である.その発症機序については明らかでない点も少なくない. PubMedを用いたFEIAnに関連する論文の調査結果からは,1979年の最初の症例報告以降その報告数は増加傾向にあり,近年はアジア地域でも認知度が向上していることが推察される.また,わが国からの報告数が多いことも特徴といえる. 発症頻度については学童生徒では約1万2千人に1人程度であるが,成人の頻度は明らかではない.原因食物としては小麦製品の頻度が最も高く,その抗原解析の結果からは成人発症例ではω-5 gliadinが関連していることが明らかにされた.さらに,抗ω-5 gliadin IgE抗体の有用性が報告されている.一方,小児期発症例では必ずしもこの抗体の有用性は明らかではない. 近年,加水分解小麦蛋白含有化粧石鹸を一定期間使用後に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する例が多発し社会問題となった.経皮あるいは経粘膜感作が発症の誘因となっており,FEIAnの発症機序の解明に新たな示唆をあたえるものとも考えられ興味深い.また,難治性の即時型食物アレルギーに対する免疫療法が研究的に行われており,その治療中あるいは寛解到達後にFEIAnを発症する症例があるため注意が必要である. 治療については最近prostaglandin E(PGE)製剤の有用性も報告されている. 今後も,患者に対する不要な制限やQOLの改善のためにはこの疾病の啓発が重要である.
著者
松井 照明 杉浦 至郎 中川 朋子 武藤 太一朗 楳村 春江 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-71, 2017
被引用文献数
1

<p> 【背景】卵黄の経口負荷試験 (oral food challenge : OFC) は, 微量の卵白負荷試験という位置づけで実施されることが多いが, 卵黄に残留する卵白量に関する情報は限られている.</p><p> 【目的】卵黄に残留する卵白量を推定したうえで, 症状誘発閾値の低い卵アレルギー患者に対する加熱卵黄摂取の可否について検討した.</p><p> 【方法】鶏卵から卵黄を分離したうえで加熱し, 卵黄表面の卵白と卵黄膜を用手的に剝離し, 重量を測定した. 2014年6月から2015年2月に施行した加熱卵白OFC陽性者から, 加熱卵白1.0gが摂取可能と判定された11人を対象として, 加熱卵黄OFCを施行した.</p><p> 【結果】卵黄に残留した卵白と卵黄膜の合計量は0.7g (0.6~1.0g, <i>n</i>=6) であった. 加熱卵黄OFCを施行した11例中9例は陰性, 1例は局所の紅斑, 1例は複数範囲の紅斑を認めた.</p><p> 【結語】加熱卵白1.0gの摂取が可能な卵アレルギー患者は, 生の状態で取り分けた加熱卵黄負荷試験で8割以上が陰性であった.</p>
著者
秋谷 進 宮本 幸伸 木村 光明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.139-146, 2009-03-01
参考文献数
23

原因不明の乳児肝炎として経過観察していた症例で,IgE 非依存性牛乳アレルギーと診断した2症例を経験した.IgE 抗体非依存性食物アレルギーは,IgE 抗体が通常陰性であるため食物アレルギーとは気づかれず種々の侵襲的検査を余儀なくされ,診断の遅れのために栄養障害や重症化をきたした報告も多く認められる.現在のところ IgE 抗体非依存性食物アレルギーの診断には評価の一定した検査方法がないが,臨床経過から IgE 抗体非依存性牛乳アレルギーを疑い,食物特異的リンパ球増殖反応検査を用いることで IgE 抗体非依存型牛乳アレルギーと診断した.乳児の慢性肝機能障害を呈する疾患のうち食物アレルギーの可能性を考慮し診察することで,侵襲性の高い検査が回避されることが考えられた.
著者
岩崎 栄作 馬場 実 上野川 修一 榎本 淳 戸塚 護 小西 奈緒 木本 実
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.23-31, 1995
被引用文献数
1

食物アレルギー患児10例を対象に, 大豆蛋白を酵素分解して得られた大豆ペプチド (ハイニュートD3; 不二製油) を利用した飲料を投与し, 栄養管理の面から有用性を検討した. 大豆ペプチドの平均ペプチド鎖長は5.2, 遊離アミノ酸は1.0%であった. 大豆ペプチドの特異的IgE抗体の結合能は大豆蛋白に比較して有意の低下 (p<0.001) が認められた. 対象患児10例のうち, 試験飲料によって2例に発疹, 〓痒などの反応を認めたが, 8例は長期投与が可能であった. 1日1缶 (200g, 蛋白含量6g) を3カ月間以上, 継続投与した結果, 栄養学的指標の血液ヘモグロビン, 血清総蛋白, アルブミンは有意に改善し, 身長と体重の標準偏差値は全般的に順調な体重増加が認められた. 投与期間を通して, 大豆ペプチド飲料によるアレルギー症状の悪化は認められず, 長期間飲用による副作用を認めなかった. また, 一般血液検査, 生化学検査, 尿検査に異常を認めず, 患児ならびに保護者の評価は風味面 (おいしさ) を含めて良好であった.
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
井上 寿茂 高松 勇 村山 史秀 亀田 誠 土居 悟 豊島 協一郎
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.102-108, 1994

気管支喘息の急性増悪に対するイプラトロピウム吸入液の効果を検討するため2~5歳の年少児23例と8~14歳の年長児18例を対象とし無作為にサルブタモール+イプラトロピウム群とサルブタモール単独群に分けてネブライザー吸入を行い, 光井のスコア (スコア), パルスオキシメーターによる酸素飽和度 (SpO<sub>2</sub>), 1秒量の予測値に対する百分率 (%FEV<sub>1</sub>) の変動を吸入前, 吸入後15分, 60分に経時的に検討した.<br>年少児, 年長児ともスコアは15分後から著明に改善し, イプラトロピウム併用による効果の差は認めなかった. SpO<sub>2</sub>は年少児ではサルブタモール単独群に比ベイプラトロピウム併用群で有意な改善を示したのに対し, 年長児ではイプラトロピウム併用による差は認められなかった. %FEV<sub>1</sub>は年長児のみ検討しスコアと同様15分後から著明に改善したが, イプラトロピウム併用による差はみられなかった. 以上より, 気管支喘息の急性増悪時, イプラトロピウム吸入液をサルブタモール吸入液と併用することにより年少児では効果の増強を期待できるが, 年長児では効果の増強を期待できないことが示された.
著者
南部 光彦
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.737-743, 2005-12-31
参考文献数
18

4か月健診を受診した400人を対象とし, 家族背景・生活習慣とアレルギー疾患発症との関連性を検討した. 月齢4か月時と3歳6か月時にアンケート調査をした. また乳幼児健診時にアレルギー疾患の有無を調べた.<br>4か月健診では, アトピー性皮膚炎 (AD) は37人, 湿疹は62人に認められた. ADも湿疹も1-6月生まれより, 7-12月生まれに多かった. 3歳6か月時のアンケート調査でのAD, 食物アレルギー, 気管支喘息の発症は, 既往を含めて314人中それぞれ71人, 52人, 21人であった.<br>家族の人数とAD発症には関連性はなかったが, 1-6月生まれでは, 家族風呂に入る時期を生後3か月以降にした者の割合が月齢4か月時のAD群に高かった. また7-12月生まれでは, 風呂上りのタオルを使い回ししている者の割合が月齢4か月時の湿疹群に高かった. ただし, 入浴順, 浴槽洗いの頻度, 口で噛んだものを子どもに与える, 唇同士のキスとアレルギー疾患発症には有意な関連性はなかった.<br>家族背景・生活習慣とADや湿疹との関連性が示唆されたが, その因果関係は不明である.
著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-77, 2005-03-01
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

目的; 食物アレルギーの実態調査について, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者家族の食品の購買行動に着目した実態調査は充分には行われていないので, その実態を調査した.<br>方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答が得られた.<br>結果; 食品の購入先は,「生協」「スーパー」,「自然食品店」の順である. 99%の家族では, 食品購入時に表示を確認している.「可能性表示」がなされた場合には, 原材料に含まれているものと解釈され, 購入を回避する可能性があると推察された.<br>患者家族は, 表示内容からその食品中に含まれる食物抗原量を推定し, 食品を選択しているが, その情報提供の機会や内容は十分ではないと考えており, 今後, インターネットの活用など, 表示以外の方法を用いて, より詳細な原材料等の情報提供を必要としている.