著者
山根 靖弘 坂井 和男 香月 秀雄 岡本 達也
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.141-147, 1978-06-25

4-ニトロキノリン1-オキシド(4-NQO)のマウス肺癌発生におよぼすタバコタール中性分画の影響を検討したところ, 発癌促進効果をみとめた。そこで, タバコタール中性分画のマウスにおける4-NQO代謝への影響をしらべると, 肺で4-NQO還元酵素活性の顕著な上昇効果がとくに見い出された。したがって, タバコタール中性分画は, 4-NQO代謝活性に影響を与え, 4-NQOのマウス肺癌誘発を促進させるものと推定した。
著者
赤荻 栄一 三井 清文 鬼塚 正孝 石川 成美 吉田 進 稲垣 雅春 間瀬 憲多朗 山本 達生 稲毛 芳永 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.483-488, 1994-08-20
被引用文献数
9

原発巣と同側の肺内に転移を持つ肺癌切除67例の術後成績をみて, 同側肺内転移を遠隔転移ではなく腫瘍の局所進展と考えるAmerican Joint Committeeon Cancer(AJCC)新分類の妥当性を検討した.原発巣と同一肺葉内に留まる肺内転移を持つ41例の術後中問生存期問は25.8ヵ月で, 他肺葉に及ぶ肺内転移を持つ例に比べて有意に良好であった.同一肺葉内転移例につき, 肺内転移を除いた病期別にみると, I期11例では42.9ヵ月と他に比べて有意に良好で, IV期5例では9.6ヵ月と最も不良であった.AJCC新分類による中問生存期間は, I期とII期を合わせた4例が48.3ヵ月, IIIA期21例28.3ヵ月, IIIB期34例22.2ヵ月, IV期8例11.1ヵ月であり, リンパ節転移がないかあっても肺門までに留まる例が最も予後良好で, 肺内転移以外に明らかな遠隔転移を持つIV期例は最も予後不良であった.これは, AJCC新分類が, より臨床に即した有用な分類であることを示すものと思われる.
著者
由佐 俊和 伊豫田 明 門山 周文 佐々木 一義 鈴木 実 山川 久美 藤澤 武彦
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.241-247, 2005-06-20
参考文献数
19
被引用文献数
11 14

目的.びまん性悪性胸膜中皮腫の臨床像・診断・治療・予後および予後因子について検討することを目的とした.対象.多施設から集積したびまん性悪性胸膜中皮腫51例を対象とした.結果.男性47例, 女性4例, 平均年齢60.0歳.アスベスト曝露歴を37%に認めた.発見動機は, ほとんど(88%)が自覚症状によるものであった.胸腔鏡下胸膜生検が確定診断法として最も多く行われたが, 初診から診断が得られるまでに, 60日(中央値)を要した.胸水の細胞診やヒアルロン酸値は, 両者ともに異常所見を示さない例がおよそ半数にみられた.治療は, 28例に手術が, 13例に放射線もしくは化学療法が, 10例には支持療法のみが行われた.全例の生存率は1年, 2年, 3年がそれぞれ50.6%, 25.0%, 12.7%で, 生存期間中央値は12.3ヶ月であった.予後因子の分析では, 単変量解析では年齢, IMIG臨床病期, 手術の有無が有意な因子であったが, 多変量解析では, IMIG臨床病期のみが有意な因子であった.術後補助療法として胸腔内灌流温熱化学療法を行ったものに良好な予後を示す例がみられた.結論.1)原因不明の胸水貯留例については, 確定診断を得るために遅滞なく胸腔鏡下胸膜生検を行うべきである.2)適正な手術適応の設定, 術後補助療法や新たな化学療法の開発などによる予後の改善が今後の課題である.
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 鈴木 公典 宮澤 裕 杉戸 一寿 河端 美則
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1065-1069, 1993-12-20
被引用文献数
3

肺転移にて発見された後腹膜原発絨毛癌の一例を経験したので報告する.症例は24歳男性.主訴は血痰で, 精査目的にて当院に入院した.胸部エックス線所見上, 両側肺野に多発した結節影および両側胸水を認めた.外性器に異常所見は認められなかった.腹部CT写真にて後腹膜に腫瘤を認め, 泌尿器科にて腎腫瘍が疑われたが, 検査拒否にて組織型を決定できず, 呼吸状態が急激に増悪し, 呼吸不全にて死亡した.剖検にて, 両側肺を多発した腫瘤がしめ, また, 後腹膜に腫瘤が存在し, その一部は下大静脈壁内腔に浸潤していた.同腫瘤, 肺転移巣の両者の病理組織より, 絨毛癌の診断が得られ, 免疫組織学的検索で胞体がhCG陽性であることが確認された.生殖器には原発巣は認めず, 後腹膜原発絨毛癌と考えられ, きわめて稀な症例と考えられ報告した.
著者
西岡 雅行 福田 正博 根来 俊一 高田 実 楠 洋子 益田 典幸 瀧藤 伸英 松井 薫 中島 俊文 小野山 靖人
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.335-341, 1991-06-20
被引用文献数
2

切除不能の肺非小細胞癌17例に対して,シスプラチン(100mg/m^2,day1),ビンデシン(3mg/m^2,dayl and day8)と胸部放射線照射(2Gy/day,day2〜15)の同時併用療法を行った.適格例は16例で,腫瘍効果はPR/2例,NC3例,PD1例,奏効率は75%であった.骨髄抑制は強く,食道炎も高頻度に発生したが一過性で,その他に重篤な合併症はみられなかった.本療法は許容範囲内の副作用で,高い奏効率が示されたことから,IIIA,IIIB期の切除不能肺非小細胞癌に有効な治療法と考えられた.
著者
吉井 千春 森本 泰夫 二階堂 義彦 田尾 義昭 津田 徹 永田 忍彦 城戸 優光
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.917-923, 1993
被引用文献数
3

rG-CSFは, 白血球数最低値を底上げし, 白血球数減少期間の短縮が期待される薬剤として, 肺癌化学療法での併用が定着しつつある. しかし, どの時点からの投与開始が最適であるかの検討は十分にされていない. 今回我々は, 3つの化学療法レジメン (3日間) で, 投与開始時期により4群 (A群: rG-CSF非投与, B群: 白血球数2000/mm<SUP>3</SUP>以下からの開始, C群: day2からの開始, D群: day5からの開始) に分け, r G-CSFを2μg/kg皮下注して, 各群の白血球数最低値と白血球減少期間を比較した. この結果, D群は全例で白血球数最低値が2000/mm<SUP>3</SUP>以上になり, A群と比べ有意に最低値が底上げされた. またB, C群は同一症例で同一レジメンの比較で白血球数減少期間の短縮傾向を認めた. この結果から, 今回行った化学療法レジメンでは白血球数最低値を確実に底上げする目的ならば, day5からの投与開始が最も有用と思われた.
著者
服部 良信 根本 浩路 小林 靖典 山本 徹 杉村 修一郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.341-345, 1998-08

症例は68歳の女性.1990年9月25日原発性肺癌で左上葉切除+R2a郭清を施行した.高分化腺癌で,p-stage I(T1N0M0)であった.術後化学療法(VP-16,CDDP)を施行した.1991年7月頃より呼吸困難・喘鳴が出現した.胸部CTと気管支鏡検査で左上葉切断部の中枢側の左主気管支の狭窄を認めたが,再発は認めなかった.経過観察中狭窄による症状が進行した.1994年2月22日の胸部単純X線写真で残存下葉に腫瘤陰影を認め,CT下針生検で再発性肺癌が疑われた.他臓器転移は認めなかった.左主気管支狭窄を考慮し,4月26日左残存肺全摘術を施行した.左主気管支は上方に偏位し,時計方向に約90度捻転じ,狭窄は上薬支断端部の中枢側にあり,内径は3mmであった.再発性肺癌であった.術後呼吸困難は消失し,PSは1であった.左残存肺全摘術後3年7ヵ月で全身転移のため死亡した.
著者
橋詰 寿律 菊地 敬一 鶴見 豊彦 泉 陽太郎 鳥潟 親雄
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1083-1089, 1993-12-20
被引用文献数
6

症例1は48歳の女性.職場検診で胸部異常陰影を指摘されたため来院した.右肺中葉にair bronchogramを伴った浸潤影がみられ, 気管支鏡下生検でリンパ腫が疑われた.平成3年4月18日, 右肺中葉切除および縦隔リンパ節郭清術を行った.病理診断は非ホジキンリンパ腫(びまん性, 小細胞型)であった.補助療法は行わずに退院し, 術後1年9ヵ月の現在再発の徴候なく経過観察中である.症例2は38歳の男性.感冒で来院した際, 左舌区に辺縁が鮮明で, air bronchogramを伴わない腫瘤陰影を指摘され入院となった.術前検査では確定診断はえられず, 平成3年10月17日肺腫瘍の疑いで左肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清術を行った.病理診断は非ホジキンリンパ腫(びまん性, 小細胞型)であったが, 症例1に比べ細胞の異型性が強く, 肺内リンパ節にも腫瘍性病変がみられたため, 術後CHOP療法を2クール施行した.術後1年3ヵ月の現在再発の徴候なく外来通院中である.本疾患は稀な疾患ではあるが, その報告例は最近増加してきており文献的考察を加え報告する.
著者
城谷 良文
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.189-195, 1997-04-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

染色体末端に存在するテロメア構造は染色体の安定化などの作用を有しているものと考えられているが, 細胞分裂に伴い短縮していくことが報告されており, 細胞が無限の分裂増殖をしていく機構においてテロメア構造の維持は不可欠なものと思われる.本研究において著者は外科的に切除された肺癌組織検体におけるテロメア長の変化と病期, 組織型およびテロメラーゼ活性との関係を検討した.肺癌症例71例においてテロメア長の変化を認めたものは19例(26.8%)でそのうちの13例が短縮, 6例が延長例であった.小細胞癌において非小細胞癌に比べ有意にテロメア長の変化例が多く認められたが, 病期との関連は認められなかった.またテロメア長の変化とテロメラーゼ高活性との間には有意な相関を認めた.肺癌における分裂寿命を規定する要因としては, 組織型や遺伝子変異が重要であることが示唆された.
著者
井上 勝一 中島 収 宮本 宏 川上 義和 伊藤 正美
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.513-520, 1990-08-20

赤血球亜鉛量と血清亜鉛量を64例の肺癌患者で測定し, 以下の結果を得た.1)進行肺癌患者では健康成人に比し血清亜鉛量は低下し, 赤血球球亜鉛量は増加した.2)しかし, 炭酸脱水素酵素量に差はなかった.3)進行肺癌患者の赤血球をヘパリン加生食で洗浄すると, 赤血球亜鉛量の約1%の亜鉛の遊離を認めた.4)以上より, 進行肺癌患者では亜鉛の赤血球への集積が見られ, 担癌生体の亜鉛の動態に多大な影響を示すものと考えられた.
著者
伊達 学 佐藤 功 中野 秀治 中川 準平 伊達 和
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.445-452, 1995-08-20

症例は57歳男性,右胸背部痛を主訴に近医受診し,1992年8月11日当科紹介された.胸部X線にて大量の右胸水を認め胸腔ドレナージ施行.胸水中のCEA,ADA,ヒアルロン酸値は正常で,頻回に施行された細胞診も陰性であった.その後胸水の増大傾向なく経過観察していたが,右胸膜のび慢性肥厚増強を認めたためCTガイド下胸膜生検施行.免疫染色を含めた組織学的検索により低分化型腺癌疑いと診断された.また,同時期より有顎下に腫瘤を認め,細胞診にて胸膜生検と同様の細胞が採取された.以上より原発部位は不明であるが,胸膜播種および頸部リンパ節転移を伴う肺癌が疑われた.しかし,臨床的にび慢性胸膜中皮腫も否定できず,疼痛の解除および確定診断を得るために胸膜肺全摘術,顎下腫瘤摘出術を施行した.術後病理診断にて,顎下腺腺様嚢胞癌および胸膜転移と診断された.
著者
中田昌男 伊達 洋至 河田 真作 小橋 雄一 宮井 芳明 三宅 敬二郎 森山 重治 清水 信義 寺本滋
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.141-146, 1989
被引用文献数
6

昭和51年1月から昭和62年5月までの12年間に肺多発癌8例を経験した.7例に手術を施行し, 6例は生存中である.7例中6例は呼吸機能上の問題で縮小手術を行った.肺多発癌においても呼吸機能を正確に把握し, それに対応することによって手術は可能であり, 積極的に切除することにより比較的良好な予後が期待できる.