著者
西山 厚
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

正倉院の内部は3つの部屋に分かれており、北倉には聖武天皇遺愛の品々、中倉にはさまざまな献納品と造東大寺司関連のもの、そして南倉には東大寺の宝物が納められている。そのいずれにも飲食に用いる器物が含まれており、あるいは楽器などの宝物に飲食の場面が描かれているものもある。人のための飲食器ばかりではなく、仏のための飲食器もみられる。中倉には厖大な古文書(正倉院文書)が伝わっており、それは写経所の帳簿であるのだが、紙背は反古となった公文書で、役人のための食糧についての記述も少なくない。正倉院宝物からみえてくる古代人の飲食の世界を、美しい画像を用いて紹介したい。
著者
亀井 文 坂岡 優美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】 レジスタントスターチ(RS)は難消化性のでんぷんで、大腸において発酵し短鎖脂肪酸を産生することから腸内環境に重要であることが明らかになってきている。長芋は草本蔓性の多年草で,日本には平安時代に中国から伝来したとされており、青森県,長野県,北海道,茨城県が主産地である。長芋は他のやまのいも類に比べ水分が多く粘り気が少ないことが特徴で、シャキシャキとした歯触りを生かして山かけや千切りとして生で食するほか,揚げ物のつなぎや和菓子としても利用されている。生の長芋にはRSが多く含まれていることはこれまでの研究で報告されているが、調理形態や加熱による長芋のRSに関する研究は少ないことから、本研究においては、長芋のすりおろし状態と半月切り状態の二つの調理形態別の加熱処理温度の違いによるRS量の変化について調べることを目的とした。【方法】 実験には青森県産の長芋であるガンクミジカ(平成28年産)を用いた。直径4.5cm厚さ1cmの半月切りとすりおろした生の長芋、70℃15分加熱処理した半月切りとすりおろした長芋,沸騰水浴中10分加熱した半月切りとすりおろした長芋の6条件のRS量を測定した。RS量測定は脱水操作後、Megazyme社のRS測定キットを使用した。【結果】 生の長芋のRS量は半月切りが33.54%、すりおろしが20.21%であった。70℃加熱のRS量は半月切りが5.24%、すりおろしが3.25%、沸騰加熱のRS量は半月切り4.73%、すりおろし6.11%であったことから、生の長芋のRS量は70℃および沸騰加熱後のRS量と比べて5~6倍のRS量であることが明らかとなった。調理形態については,生において半月切りのRS量はすりおろしたRS量と比較して有意に高かったが、70℃加熱処理、沸騰水浴中加熱処理においては有意な差が見られなかった。このことより、生のすりおろしていない長芋の摂取によりRSをより多く摂ることができることが示唆された。
著者
新城 知美 貝沼 やす子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.69, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 食物繊維や大豆たんぱく質、イソフラボンを含むおからをそのまま添加した食パンは比容積の低下などが生じ品質が低下したが、おからを焙煎してパン生地に添加するとパンの性状改善効果が認められた。本研究では焙煎処理によるおからの変化について検討し、パンの性状改善との関係を明らかにすることを目的とした。また、パン生地調整に最適な加水量および添加時期の検討を行い、更なるおから添加食パンの性状改善を目指した。【方法】 おからの乾燥は30℃で10時間、焙煎は180℃にて吸水率が最低値を示す時間焙煎し、重量、色、食物繊維量、吸水率を測定し、DSC分析、たんぱく質定量、Native-PAGE、SDS-PAGEを行った。食パンの作製はホームベーカリーを使用し、パン生地についてはファリノグラフ試験及び走査型電子顕微鏡観察を行った。パンについては、体積測定、破断強度測定、官能検査、断面の走査型電子顕微鏡観察を行った。 【結果】 おからを焙煎すると食物繊維量はやや減少し、たんぱく質の低分子化が認められ、吸水率が低下した。焙煎処理おからを添加すると、パン生地中にグルテン形成の改善が認められ、乾燥おから添加食パンに比べ膨化し、食味も改善された。コントロール生地と同じ硬粘度となる加水率(最適加水率)で焼成したパンでは、全ての測定項目においてコントロールの性状に近づく変化を示し、官能検査でも高い評価を受けた。この加水率はおからの吸水率を用いた簡単な関係式から算出することができ、市販の多くの生おからを利用した焙煎おから添加食パンに有効であった。おから添加時期を変えた製法では焙煎おから添加パンの物性がよりコントロールに近い結果となった。
著者
松本 美鈴 阿部 芳子 坂口 奈央 柘植 光代 時友 裕紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】山梨県の郷土料理ほうとうは、塩を加えずに麺を作り、野菜などの副材料と一緒に汁の中で煮込んでつくる麺料理である。文献調査、聞き書調査およびアンケート調査により、ほうとうが時代とともにどのように変遷してきたかを明らかにするとともに、アンケート調査によりほうとうが現代の食生活に受け継がれてきた要因を考察する。<br>【方法】文献調査は、社団法人農山漁村文化協会刊行『日本の食生活全集』聞き書山梨の食事を主要資料とし、大正末期から昭和初期にほうとうがどのように食べられていたかを捉えた。聞き書調査は、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に実施した。アンケート調査は、山梨県在住の家事担当者および中学校・高等学校の生徒を対象とし、ほうとうに関する質問用紙を地域の協力者に郵送した。930部が回収された。<br>【結果】文献調査の結果、大正末期から昭和初期、地粉で打った自家製麺と手近にある野菜、いも、きのこ等の複数の食材を一緒に汁の中で煮込んでほうとうを作っていた。ほうとうは山梨県の日常の夕食として一年を通して食べられていた。聞き書調査から、昭和30年代もほうとうは日常の夕食として食べられていたが、副材料には、油揚げ・豚肉・鶏肉を用いる地域が出現したことが分かった。アンケート調査から、現在のほうとうは、秋から春の寒い時季の日常の夕食として食べられていること、ほうとうに入れる副材料は野菜・いも・きのこに加えて豚肉や鶏肉などの動物性食品が多用されていることが分かった。山梨県の郷土料理ほうとうが受け継がれてきた要因として、市販麺の利用など調理の簡便性が示唆された。
著者
川上 栄子 小嶋 汐美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.115, 2011

【<B>目的</B>】日本には様々な年中行事があり、気候、風土を生かした様々な行事食がある。しかし、現在の食を取り巻く環境は、近年急速に変化し、伝統的な食文化の伝承が困難な状況である。食育の1つの要因である食文化の伝承は、食育を推進する管理栄養士の教育において意義を理解させ、実践を促すことが必要である。そこで、今回、どのような行事食が作られ、食べられているか実態調査を行ない、本地域の特徴を生かした今後の指導対策を検討することとした。本報では主な行事食の実施状況を分析し、地域特性等検討結果について報告する。<BR>【<B>方法</B>】本校健康栄養学科(管理栄養士養成課程)1年~2年生64名及び保護者を対象に平成22年1月に行なった。調査方法は日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食」の調査票及び10項目のアンケートを自己記入方式にて実施。調査結果の内、五節句の行事食の喫食状況に着目、学生と保護者別に集計し比較した。<BR>【<B>結果及び考察</B>】回収票は学生55枚、保護者58枚であった。正月料理の雑煮は学生92%、保護者97%の喫食状況率であった。五節句では人日の七草粥では学生42%、保護者57%。上巳の寿司は学生61%、保護者93%。端午の柏餅は学生45%、保護者73%。七夕のそうめんは学生3%、保護者13%。重陽の菊花酒は学生0%、保護者0%であった。お正月の雑煮の他は上巳のお寿司が両者とも過半数の喫食率であったが、他の節句では学生の喫食率の低さが目立った。この結果から食文化伝承に必要な要素は、まず食べる機会があること、そして自分自身が作る立場となって初めて受け継がれていくことが明らかになった。このことから、大学生の実習内容に年中行事の実施、伝承の価値を高める工夫し、喫食率、継承意識の向上を図る必要がある。
著者
藤田 倫子 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2015, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】平成20年3月、新学習指導要領が公示された。小学校家庭科では、「B.日常の食事と調理の基礎」として、「食事の役割」「栄養素の種類とはたらき」「調理の基礎」を指導することになった。「調理の基礎」を指導することは、従来より小学校家庭科の重要課題である。そこで本研究では、新学習指導要領下で実施可能な調理実習教材探求を目的に、小学校家庭科調理実習教材の変遷(戦後~現在)について調査を実施した。 【方法】小学校学習指導要領家庭科編および小学校家庭科検定済教科書(T社およびK社。計28冊)を資料として調査を行った。 【結果】小学校学習指導要領家庭科編は、昭和22年に試案が出され、7回改訂後現在に至っている。昭和22年の試案には、学習題材として「蒸し芋・青菜のひたし・いり卵」(6年)が示された。昭和33年改訂では「野菜の生食・ゆで卵・青菜の油いため」(5年)、「ごはん・みそしる・目玉焼き・こふきいも・サンドイッチ」(6年)が示された。昭和43年および52年改訂では大きな変化はなかった。平成元年改訂では、「野菜や卵を用いた簡単な調理」(5年)、「米飯,みそ汁,じゃがいも料理,魚や肉の加工品を使った料理,サンドイッチ,飲み物」(6年)が挙げられた。平成10年改訂では、「米飯とみそ汁」のみ題材指定され、本内容は平成20年改訂の指導要領に引き継がれた。指導要領に対応して教科書が作成・改訂されるが、平成10年改訂に対応した教科書から、5・6年で一冊となった。2社の教科書は、改訂時期や変更内容は類似しているが、平成10年改訂に対応した教科書から実習例や使用食材が異なってきた。
著者
渡部 佳美 奥田 弘枝 岡本 洋子 上村 芳枝 木村 留美 杉山 寿美 原田 良子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】各地には地域の気候、風土、産業、文化、歴史等に培われ、伝承された行事食が残されている。しかし食生活の変化に伴い、食文化が変容している現状がある。そこで、行事食の認知状況や摂食状況等を明らかにするため、日本調理科学会特別研究として平成21~23年度に実施した「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査から得られた行事食「土用の丑」「重陽」「月見」の結果を報告する。【方法】当学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行った。広島県に在住する大学・短期大学の学生およびその家族等を対象とし広島県の地域間および世代間の比較を行うため、地域を安芸地域(西部)と備後地域(東部)とした。年代を10~20代の学生と30代以上の一般に大別し、西部の学生143名、一般166名、東部の学生87名、一般129名、計525名とした。解析にはエクセル統計2003を用いた。【結果】調査対象者のうち「月見」「土用」は90%以上の者が行事を認知していたが、「重陽」は西部で約20%、東部では約10%と低かった。また、行事および喫食の経験についても「重陽」は他の行事に比べ低く、「月見」は「月見だんご」の喫食経験が高く、東部に比べ西部の方がより高い割合であった。また、「月見だんご」は「買う」と答えた割合が高く、「小芋」は「家庭で作る」割合が高かった。「土用」は、「鰻のかば焼き」を「毎年食べる」と答えた割合が学生約50%、一般約60%と高い割合であった。喫食経験はすべての行事で一般の方が学生に比べ高い割合であったが、いずれの行事食も「家庭で作る」が、現在の方が以前に比べ減少していた。
著者
成田 亮子 島村 綾 名倉 秀子 峯木 眞知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.25, 2016 (Released:2016-08-28)

(目的) 琉球王朝菓子ちんすこうは、豚脂(ラード)を使用し、西洋の焼菓子とは異なった食感と風味に特徴があり、保存性にもすぐれている。ラードの代わりに多種の油脂を用いて調製し、テクスチャーに与える影響を調べた。(方法) ちんすこうはラード(油脂)、薄力小麦粉(日清フーズ㈱)、砂糖(三井製糖㈱)で調製する。油脂は8種(ラード、バター、アボガドオイル、オリーブオイル、キャノーラ油、ココナッツオイル、胡麻油、米油)で、基本配合は予備実験より、小麦粉120g、砂糖90g、油脂58gとした。油脂を60℃に温め、砂糖を加え、みぞれ状態になったら、小麦粉を加えた。それを、Ø3.5㎝の大きさ(各15g)に形成後、150℃で28分焼成した。焼成後の試料は、重量、体積、比体積、水分含有率、表面の焼き色、破断特性を測定し、官能評価を行った。焼成後の伸びを示すスプレッド値は、直径(㎜)/厚さ(㎜)で算出した。製品の水分含有率は赤外線水分計(㈱ケット)で110℃、80分の条件下で測定した。破断特性はレオナーRE2-3305 B-1(山電(株))で測定した。(結果) 8種の油脂を用いた試料では、ラードを用いた試料より、破断応力および破断歪が低く、もろい製品であった。アボガドオイル試料、オリーブオイル試料では、もろさおよびもろさ歪がかなり低かった。キャノーラ油試料ではスプレッド値、比体積、水分含有率がラードに近い値を示した。ココナツオイル試料では、スプレッド値が6.0と最も高く、水分含有率は3.6%で最も高い値を示した。胡麻油試料ではもろさおよびもろさ歪が高く、水分含有率が2.6%で最も低かった。油の種類により、食感の異なるちんすこう製品ができた。
著者
森井 沙衣子 上田 眞理子 坂本 薫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.82, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】第1報の結果より,浸漬温度が異なる米の吸水率を検討する際には,流出固形物量を加味した吸水率の検討が必要であると考えられた。そこで浸漬温度の異なる精白米の吸水曲線を明らかにする目的で,浸漬温度を変化させたときの流出固形物量を加味した吸水率を経時的に測定・算出した。 【方法】第1報と同様の試料を用い,浸漬温度は5℃,10℃,20℃,30℃,40℃,50℃とし,それぞれ5,10,20,30,40,50,60,80,120,240分間,各設定温度の水に浸漬させた。浸漬後,小型遠心分離機を用いて3,000rpmで5分間遠心脱水を行い,米と溶出固形物を含む浸漬水をそれぞれ回収し,米の吸水量から単純吸水率を求めた。また浸漬水は定温乾燥機で恒量になるまで乾燥させ,乾燥した溶出固形物重量を吸水率に加味した補正吸水率を算出した。 【結果】単純吸水率を算出した結果,短時間浸漬においては浸漬温度依存的に吸水率が増加する傾向がみられた。しかし,長時間浸漬を行った場合では,低温浸漬は温水浸漬と比較して吸水量が多くなったことから,初速吸水率は温水浸漬米が低温浸漬米の吸水率よりも高値となり,長時間浸漬では,浸漬温度が低いほど米の吸水率が大きくなることが示唆された。しかし,温水浸漬では溶出固形物が浸漬液中に多く溶出されたため,乾燥溶出固形物重量を測定し,吸水率を乗じて補正吸水率を算出し,溶出固形物の影響を考察したが,補正吸水率は単純吸水率と同じ結果が得られた。これらの結果から低温長時間浸漬米は吸水率が高くなることが明らかになった。
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果,タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
橋爪 伸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1034, 2009 (Released:2009-08-28)

【緒言】地域固有の歴史を背景とする食文化史の研究は、現代の地域活性化事業に有用な情報を提供し、ひいては地域アイデンティティ確立の一端を担うことができると考える。本報では、熊本城築城400年記念事業で監修を担当した、近世熊本の食史料の再現三事例を検証し、食文化史研究の現代への活用について、可能性、課題などを考えてみたい。【方法】再現の典拠とした主な史料は、熊本藩士による飲食物製法記録「料理方秘」(都立中央図書館加賀文庫蔵)、「歳時記」(熊本県立大学文学部蔵)、同藩における献立記録「御入国御拝任御祝」(熊本市歴史文書資料室蔵)である。これらの解読および翻字に加え、それぞれの活用の目的に応じて食素材や調理法などの具体的な調査研究を行った。【結果】1飲食物製法記録をもとに、所収の料理を再現できる料理書『熊本藩士のレシピ帖』を刊行した。県内主要書店、熊本城売店にて販売され、県内外から需要を受けている。また県内料理店、宿泊施設などでは、同書を参考にした再現料理が、肥後熊本の古料理等と称され活用されている。2献立記録をもとに、万延元年(1860)熊本藩主初入国の御祝御能で供された本膳料理二汁七菜を、レプリカによって再現した。それは同事業で復元した本丸御殿内大御台所に常設展示されている。食記録の模型化により、近世の食を視覚でより具体的に印象づけることが可能となるが、一方で有形化に際し根拠の不足という問題も生じた。3上記史料や2で模型化した一部の料理再現を中心とした「本丸御膳」が、2の展示される大御台所で、同市の郷土料理店により提供されている。再現料理の食体験として、季節ごとに献立を変えながら継続される予定である。
著者
中島 美樹 丸山 弘明 跡部 昌彦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】レモンジュースの香味特性は、原料果実の産地、収穫時期や搾汁方法、殺菌方法などの違いで変化し、現在、市場にも様々な香味特性を有する商品が存在する。本研究では、これら市販レモンジュースが、どういった香味特性を有するのか評価し、さらに、これらの香味特性が製菓調理後の香味特性と、どう関係するのか解析した。平成23年度大会では、第1報として、レモンジュースの配合量を合わせて試作した、ゼリー、ベイクドチーズケーキでの結果を報告した。今回は、添加するレモンジュースの酸度が同一になるように、添加量を調整して試作し、同様に香味特性を評価、解析した結果を報告する。【方法】市販レモンジュース(22品)、青果レモンを搾ったもの(2タイプ)について、官能評価による香味評価を行なった(第1報)。その結果で特徴的であった市販レモンジュース(7~8品)を用いて、焼き菓子(ベイクドチーズケーキ、マドレーヌ)を試作し、官能評価による香味評価を行なった。官能評価は両極7段階尺度法で評価した。 【結果】<ベイクドチーズケーキ>レモンの添加量を統一した第1報では、レモンジュースの香り特性は、チーズケーキの評価では区別されなかった。しかし、酸度によって添加量を調整した今回は、レモンの香り特性の一つである「レモンの果皮の香り」と「レモンの果肉の香り」が、チーズケーキの評価で区別された。また、「レモンの果皮の風味」「レモンの青っぽい風味」の強いレモンジュースは、チーズケーキの「チーズの風味」を弱く感じさせることが確認できた。<マドレーヌ>「後引く感じ」の強いレモンジュースは、マドレーヌの「バターの風味」「卵の風味」を弱く感じさせることが確認できた。
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.147, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。
著者
吉村 葉子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.424-428, 2004
参考文献数
15
著者
楠瀬 千春 木村 利昭 藤井 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.10-18, 2002-02-20
参考文献数
14
被引用文献数
2

スポンジケーキの主材料は小麦粉,鶏卵,砂糖である。本報では小麦粉の全量を澱粉(小麦澱粉,あるいは馬鈴薯澱粉)に置き換え,馬鈴薯澱粉を大粒と小粒に分級することによって,スポンジ組織の気孔形成に澱粉粒径のおよぼす影響を検討した。スポンジケーキの調製方法は,3材料を同重量づつ配合し,卵(全卵)糖液を泡立てた後,小麦澱粉あるいは馬鈴薯澱粉を混合し,ケーキバッターを調製した。2種類のバッターを同時にオーブンで焼成し,次のような実験を行った。ケーキバッターの焼成中の膨張・収縮時の高さの変化をカセトメーターを用いて計測した。また,バッターに含まれている気泡と,澱粉粒の相互作用を,加熱・放冷中にわたって,モデル実験的に,顕微鏡観察した。更に,澱粉粒の糊化状態を偏光顕微鏡で観察した。焼成したスポンジケーキの気孔構造と,膨潤・糊化した馬鈴薯澱粉粒の変形した形状を,ケーキのSEM写真によって比較検討した。その結果,分級した馬鈴薯澱粉の粒径分布が狭い範囲に限られると,ケーキバッターの気泡の表面を澱粉粒が覆いやすくなり,ケーキバッターが加熱された時,気泡の合一,破泡が抑制される。この状態で加熱を継続すると気泡は澱粉粒に覆われたまま徐々に膨張する。同時に気泡表面を覆っている澱粉粒の糊化が進行し,膨張した気泡は粒に覆われたまま固定化し,放冷後において球形を保持したまま気孔を形成した。要するにスポンジケーキの気孔は,気泡が膨張し固定化して形成されたものである。
著者
山崎 歌織 外西 壽鶴子 加藤 和子 河村 フジ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 2000-02-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

材料の種類と水煮時間が異なる煮こごりの品質に付いて調べた結果は次のようであった。1.煮汁をゲル化させた場合,最も硬いゲルを形成する水煮時間は,ぶりやまだらが鶏手羽先よりも短かった。ゲルの硬さは,鶏手羽先が最も高く次いでぶりであり,まだらはかろうじてゲル化する程度であった。2.鶏手羽先のゲルは長時間水煮において安定した硬さを保持するが,ぶり,まだらのゲルは水煮30分以降徐々に軟らかくなった。3.煮汁の透明度は水煮時間の経過と共に低くなり,煮汁中のタンパク質は,ぶり,鶏手羽先では増加した。4.煮汁中のタンパク質には,ゲル形成を促進させるゼラチンの他に阻害するものが含まれている。5.長時間水煮により煮汁中のゼラチン分子は低分子化してゲルは軟らかくなった。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.3, 2006 (Released:2006-09-07)

〔目的と背景〕正月に食べられるとろろ飯は、餅の形・年取りの魚と同様に日本の東西文化の指標になる可能性を明らかにした。日本の民俗学研究では、在来種である山芋に関しての調査が行われてこなかった。そのことが儀礼食としての山芋調査が行われなかった理由の一つである。先行調査により山芋が儀礼食であることを想定し、山芋の調理法の一つであると考えられるとろろ飯に注目した調査を行ってきた。その結果、正月に食されるとろろ飯は、正月の儀礼食であることを明らかにした。さらに東日本を中心に分布していることも明らかにしてきた。本発表では、この儀礼食の東西分岐の分布集積地が愛知県知多半島であることの可能性を示唆する。〔方法〕資料調査、アンケート調査〔結果〕調査により、正月のとろろ飯は儀礼食としての役割を果たしていることが明らかになった。さらに東西文化の食の一つとなる可能性が高いとの推論を出すことができた。愛知県の知多半島での調査結果を示し、分布状況から、伝播起点を想定する。
著者
洲戸 歩 白杉(片岡) 直子 本多 佐知子 祗園 景子 増田 勇人 大村 直人
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】茶道における抹茶の点て方やその仕上がりには、熟練者と⾮熟練者の間に⽬に⾒えてわかる差異が存在し、熟練者は暗黙知、すなわち⼈間が無意識のうちに⻑年の経験や勘などから得た、簡単には⾔語化できない知識をもつ。本研究では、茶道流派の一つである裏千家のきめ細かい抹茶の泡立ち方に着目し、撹拌動作を分析することで、化学工学の視点から撹拌に有効な動作の抽出を試みた。【方法】抹茶2 gを入れた内径10.5 cmの茶碗に80℃の湯70 mLを注ぎ、完全形、内穂のみ、外穂のみの3種類の茶筌を用い、熟練者(3名)と⾮熟練者(3名)に抹茶を撹拌させた。撹拌動作による泡⽴ちへの影響を調べるために被験者の肘、⼿⾸、中指の第⼆関節の3点に印をつけて、正面から動画撮影し、Dipp-Motion V(DITECT 社製 Ver.1.2.6)を用いて動作解析を⾏った。泡立ち評価は、茶碗の真上から撮った画像をImage J(v.1.53o)を用いてモノクロ二値化し、黒の部分の面積を比較し行った。【結果・考察】熟練者は3種類の茶筌を用いて撹拌した場合、いずれにおいても泡のきめ細かさや泡立ち具合のばらつきが少なかった。一方、非熟練者は茶筌の違いによる泡立ちに大きなばらつきがみられた。動作解析の結果、熟練者は肘の変位が⾮熟練者よりも大幅に小さく、肘を軸とした撹拌を行うことがわかった。さらに、手首と中指の変動が同期し、熟練者に見られる肘の変動が逆位相の場合、細かな泡立ちとなったが、非熟練者に見られる肘の変動が手首と中指の変動と1/4周期の位相差がある場合、荒い泡立ちとなった。
著者
川嶋 かほる 櫻井 朝美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成14年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2002 (Released:2003-04-02)

食べ物は生物に由来し、他者の「いのち」によって、自らの生命維持をはかることが「食べる」ことである。しかし、食物生産の場から遠く離れ、飽食の時代といわれる現在、食べ物と「いのち」の関係はどのように意識されているかを、調査紙法によって調べた。食べ物に「いのち」があると考える人は76.4%であった。「いのち」を持っていると感じているのは、魚介類が最も高く80%以上を占め、畜肉類は約70%、鶏卵55%、野菜類は35%であった。「いのち」が失われると考える段階は、「切った時」「収穫した時」が多く、「料理した時」「食べた時」は少なかった。「いただきます、ごちそうさま」は79.8%の人がしているが、その対象は「食事を作ってくれた人」へが57.5%、「食べ物そのもの」は24.8%であった。
著者
山田 節子 今野 祐子 三森 一司 出雲 悦子 大久 長範
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.173, 2006 (Released:2006-09-07)

[目的]近年、ペットボトル飲料を日頃から水分補給のために利用する人が増えている。缶入り飲料に比べて、いつでも手軽に飲みたい分だけ飲め、そのうえキャップを閉めればどこへでも持ち運べるという利便性がある。また、消費者の健康志向も伴って、さまざまなペットボトル飲料の中でも、茶系飲料の売れ行きが好調である。しかし開栓後、直接口をつけて飲み、それを持ち運ぶことで様々な細菌に汚染されることが予測される。そこでペットボトル飲料に口内細菌と大腸菌を植え、どのくらい増殖および変化がみられるかを実験したので報告する。[方法]茶系飲料、スポーツドリンクおよびミネラルウォーターのペットボトル飲料に、自身の唾液より採取した口内細菌と、大腸菌をそれぞれ添加し、25℃で24_から_48時間保存したあと、菌数の変化をペトリフィルムで測定した。[結果]口内細菌を接種したところ、24時間後では、ブレンド茶は約、3.6倍、ミネラルウォーターは約、1.5倍と大きく増加する傾向が認められ、48時間後には無限大となった。ウーロン茶は、48時間後ではほぼ一定を保ち、緑茶は減少傾向を示した。PHが3.7と低いスポーツドリンクは口内細菌が減少する傾向にあった。大腸菌接種では、ウーロン茶、緑茶、ブレンド茶、スポーツドリンクは24時間で検出限界にまで減少し、ミネラルウォーターは一時的に減少したが、48時間後にも接種菌数の約、1/6が検出された。ペットボトル飲料が一般細菌に汚染された場合には、pHが中性に近づくに従い汚染が進行しやすく、pHが3付近では進行し難かった。