著者
坂田 美奈子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

アイヌ口承文学を内在的に読み解く方法を立ち上げる試みとして、再帰的モチーフを抽出し、モチーフ相関図を作成した。これによって特定の物語を解釈したり、モチーフ概念を検討したりする際に参照すべき物語のネットワークが可視化される。具体的事例として村の滅亡/再生テーマの物語群を分析した。村の滅亡原因は嫉妬、夜襲、疱瘡の三類型がある。この三つのモチーフ間の概念的な関係や、三つのそれぞれが他のどのようなモチーフ群と隣接関係があるかを分析することにより、個々のモチーフの概念やテーマの示唆する意味が浮かび上がる。このような作業の積み重ねにより、アイヌ口承文学のテクスト分析が可能になるだろう。

18 0 0 0 OA 本邦大地震概説

著者
大森 房吉
出版者
東京大学
雑誌
震災豫防調査會報告
巻号頁・発行日
vol.68, pp.i-"180-1", 1913-03-31

付録30頁
著者
八田 達夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究の目的は、通勤の時間コスト、通勤混雑による疲労コストを別々に金銭換算することにある。まず、通勤電車の混雑度の増大が疲労度の増大をもたらすことを効用関数に組み入れたMills型の都市モデルを構築した。次に、この都市モデル全体を解き、家賃及び地価関数の理論式を誘導型として導出した。この理論式では、家賃が都心からの距離と混雑度との関数となっている。この理論式を用いて2つの実証研究を行った。第1に、家賃関数を中央線沿線住宅地のデータに当てはめて、家賃と距離と混雑度との関数を導き、それを基に効用関数の混雑度に関するパラメーターを推定した。その際、中央線各駅間で混雑度が異なっていることを利用した。パラメータの推定結果を用いて通勤混雑の疲労コストおよび時間コストを算出した。第2に、混雑率の異なる東京の複数の私鉄およびJR路線沿線の各駅から、都心に通勤する際に要する時間と疲労のコストを測定し、金銭換算した。各路線間の混雑率の違いが大きいために、中央線のみのデータを用いた場合よりも、各地点の家賃と混雑率の関係をうまく説明することができた。中央線のみのデータでは、決定係数が0.5段階であったのに対して、複数路線の場合、0.85と高い値を得ることが出来た。この分析を基に、時間と疲労に関する効用関数のパラメータを推定し、それを用いて通勤疲労度、および通勤時間の金銭換算を行った。例えば、新宿までの通勤時間が30分である向が丘遊園では、片道の疲労費用が376円で、時間費用が322円であることが明らかになった。論文は、学術雑誌に投稿中である。さらに、1999年度応用地域学会全国大会で発表し、2000年の日本経済学会春期大会で発表する予定である。
著者
赤川 学 出口 剛司 宮本 直美 新島 典子 柄本 三代子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は、猫に関する社会学的知見を共同研究のなかで蓄積し、「猫社会学」を創設することを目的とする。近年、猫と人間の関わりは他の動物やペットよりも深化している。本研究は、そうした関係の深化が、現代社会のマクロな社会構造の変容によって生起していると想定し、そのミクロなプロセスを、家族、感情、文化、社会運動などの諸側面に即して記述し、文明史的な社会理論によって解釈する。そのために、(A)猫を飼った経験がある人や保護猫活動当事者へのインタビュー調査、(B)猫好きな人の社会的・心理的特性や活動のアンケート調査、(C)猫ブームに関する言説のテキストマイニング、(D)上記データの理論的解釈を実施する。

17 0 0 0 OA 大日本史料

著者
東京大学史料編纂所 編
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.第12編之44, 1967
著者
黒川 峰夫
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

骨髄異形成症候群(MDS)は多様な病態を含む不均一な疾患群だが、主に造血不全が問題となる病態である低risk MDSについては、その機序はこれまでのモデルだけでは十分に説明できず、MDS細胞との相互作用による正常造血幹細胞の抑制などの未知の機序の存在が示唆される。我々は一般的な骨髄異形成症候群(MDS)のモデルであるNUP98-HOXD13(NHD13)トランスジェニックマウスから採取した造血細胞を正常造血細胞と混合し、致死量の放射線を照射したレシピエントマウスに移植してキメラマウスを作製した。白血球表面のCD45多型を利用したLy5.1/5.2システムを用いて、MDS発症過程における正常造血細胞の分化、増殖を解析した。生着後MDS発症前の段階において、コントロール群と比較し正常造血細胞の成熟顆粒球への分化が阻害されることを明らかにした。またIn vitroの系において、NHD13をレトロウイルスを用いてマウス造血細胞に感染させ不死化した細胞を、骨髄造血ニッチを模したOP9細胞上で正常造血細胞と共培養したところ、キメラマウスの系と同様に正常造血細胞の成熟顆粒球への分化が抑制された。また、トランスウェルを用いてNHD細胞と正常造血細胞の直接接触を防いだ状態で共培養した系や、共培養後の培養上清を用いて正常造血細胞を培養した系では、正常造血の分化抑制は認めなかった。これらの結果より、MDS細胞との直接接触により正常細胞の分化抑制が惹起され、MDSにおける造血抑制に関与している可能性が示唆された。また、MDS細胞と共移植したキメラマウスの正常細胞中の骨髄球系前駆細胞をソートし、DNAマイクロアレイを用いて発現変動遺伝子を抽出した。今後遺伝学的解析によりその下流のシグナルを明らかにするとともに、当該分子の作用を阻害することで正常細胞の分化抑制が解除されるか検討する。
著者
笠原 諭 高橋 美和子 松平 浩 岡 敬之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ADHDを併存した慢性疼痛患者100名に対するADHD治療薬(メチルフェニデート and/or アトモキセチン)による薬物調整を完了し、治療前後におけるコナーズ成人ADHD評価尺度(Conners’Adult ADHD Rating Scales: CAARS)の自己記入式、観察者記入式の双方を実施した。約8割の患者においてADHD評価尺度に大きな改善が認められている。そしてADHD症状に改善の見られた患者においては、認知機能の改善とともにNumerical Rating Scale(NRS)で測定した疼痛症状や、Hospital Anxiety and Depression Scaleの不安・うつ等の気分症状、痛みの破局的認知Pain Catastrophizing Scaleにも有意な改善が認められた。薬物調整を完了した40名の患者については、治療後のSPECT検査を実施完了している。薬物療法で治療効果の得られた患者においては脳血流にも改善がみられる傾向があり、1)前頭葉領域の血流低下が改善するパターンと、2)大脳皮質低血流/基底核高血流の不均衡が緩和するパターン、3)モザイク状の血流分布が平滑化するパターンが認められた。研究分担者の異動などにより解析作用が遅延していたが、研究体制も整ったため、上記のADHD診断の有無、ADHD治療薬の効果・薬物反応性の結果と、脳SPECTのデータを合わせて(1)非ADHD群との比較を行うことで、ADHDを併存した慢性疼痛の早期診断指標を確立し、(2)治療効果と関連する脳血流パターンを同定することで、治療反応性(薬剤選択)の予測指標を確立し、(3)ADHD治療薬による鎮痛効果の脳内機序の解明に繋げられるようにする計画である。
著者
大滝 世津子
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.131-144, 2007-03-10

Focusing on two classes of as well as their teachers of three-year-old children as well as their teachers in a kindergarten, this research, which was held between April to October 2005, investigates how gender consciousness among children are related to their social relationships with teachers are peer groups. The research finds out that a majority of the children did not have any gender identity before entering the kindergarten, and there is no clear evidence to show that sex or date of birth are related to the time when children identity their gender. However, before entering the summer vacation at July, most of the children already have clear gender consciousness. The research then shows that children will recognize their gender identity earlier if they prefer playing within a group and communicating more with teachers. On the contrary, for those children who prefer to play alone or to keep a distance from teachers, they will identity their gender later. In addition, for those children who always stick to teacher but prefer to play alone, they still have earlier gender consciousness.
著者
梅崎 昌裕 須田 亙 高安 伶奈 平山 和宏 冨塚 江利子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

人類集団のなかには、タンパク摂取量が極端に少ないにもかかわらず、タンパク欠乏にともなう臨床症状をしめさないものがあることが知られている。これは、「低タンパク適応」と呼ばれ、代表者のグループは特に腸内細菌叢の役割に着目しながら、そのメカニズム解明を目指してきた。本申請課題では、これまで研究をすすめてきたパプアニューギニア高地に加えて、タンパク摂取量が少ないことが想定される2つの地域を対象に加えることにより、「低タンパク適応」メカニズムの固有性と普遍性を明らかにする。
著者
梶田 隆章 内山 隆 大橋 正健 川村 静児 黒田 和明 三代木 伸二 安東 正樹 宗宮 健太郎 森脇 喜紀 麻生 洋一 都丸 隆行 フラミニオ ラファエレ 鈴木 敏一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2014

本研究では重力波の観測と重力波天文学の創成を目指し、別予算で整備がすすめられた大型低温重力波望遠鏡KAGRAの研究基盤をベースに、熱雑音を最小化する低温懸架システムの開発、極低温鏡急速冷却方法の開発、グリーンレーザーを用いた干渉計の迅速かつ安定な動作状態獲得、新たな信号読み出し法を可能にし、干渉光に含まれる余計なノイズを削減する出力モードクリーナーの開発などを行った。また、レーザー強度雑音の低減、さらに最終的には自動で観測モードまで進む高度なデジタル制御システムの開発を行った。これらの開発された技術を全てKAGRAに組込み、重力波観測運転を2020年2月に開始した。
著者
平田 恵子 山崎 由希子
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.162-190, 2006-01-31

国際規範に関する分析は概して,システムレベルの規範の普及に着目している.本稿では,そのような分析はネオリアリズム,新自由主義制度派,構造主義などに根ざしており,主に二つの問題があると主張する.一つは,それらの分析が普及に成功した規範の実例に多大な関心を払っているのに対し,失敗したものについては見過ごしていることである.もう一つの問題はそれらの分析が,規範の普及する過程において国際規範と国内構造がどのように関連しているかを検証できていないことである.この関連を見過ごすことにより,システムレベルの研究は国際規範が国内の領域に広がる具体的なメカニズムとプロセスを明らかにできないでいる.本稿は国内構造(特に文化・政治的構造)が国内レベルにおける国際規範の普及を可能にする主要要素であると主張する.日本における反捕鯨規範の受け入れ拒否を分析するにあたり本稿は,このような国内構造が反捕鯨規範の出現や受け入れを阻むフィルターとして機能していると論じるものである.
著者
西野 嘉章 森 洋久 Osawa Kei
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

戦後日本の美術出版を牽引した美術出版社の写真ネガフィルム・コレクションが東京大学総合研究博物館に寄贈された。18万カットにおよぶこのコレクションを広く共有すべく、美術史学の方法、情報工学の技術そして大学博物館のリソースを最大限に活かして全点の修復・デジタル化・データベース化を行う。本コレクションの記載および比較研究を進め、戦後日本美術史の基礎資料を拡充し、方法論的刷新を促す。国内外の主要研究機関と連携し、美術出版アーカイブによる近現代美術史学の新たな方法論を模索するのと同時に、本コレクションを世界の現代美術史の基礎資料体に組み込むように働きかける。
著者
木下 華子 山本 聡美 堀川 貴司 渡邉 裕美子 陣野 英則 山中 玲子 梅沢 恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本には、古都や古代寺院の遺構、あるいは絵画資料・記録・伝承等に描かれた荒廃した町並みや建造物など、古代以降、文学・美術・芸能に多くの廃墟表象を見いだせる。本研究では、文学・美術・芸能を専門とする複数の研究者を組織し、日本古代・中世における廃墟を、上述の多様な視点から総合的に分析する。また、研究会・シンポジウム・出版などを通じ、廃墟論の学術的フレームと議論の場を創出する。東日本大震災以降、廃墟は物理的にも精神的にも私たちの間近に存在する。古代・中世の人々が廃墟と共存した有様を解明することで、現代社会における、廃墟を内包した新たな文化創造の論理的基盤を獲得することを最終的な目標とする。
著者
馬場 一憲 丸茂 元三 町田 芳哉 海野 信也 岡井 崇 香川 秀之 坂井 昌人 上妻 志郎
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

早産未熟児、特に妊娠24週未満で流産または早産した新生時は、皮膚が弱く肺も未熟なため、従来から使われている保育器と人工呼吸器を用いた方法では、必ずしもインタクト・サバイバルが望めない。そこで、子宮内のような生理的状況下で保育可能な人工子宮の開発を行なっている。本研究では、人工子宮の体外循環回路の改良と以下に述べるような一連の関連実験を行ない、それぞれ示すような成果が得られた。帝王切開により取り出したヤギ胎仔を、人工羊水で満たした水槽内に移し、臍帯動脈から脱血して模型人工肺を用いた装置で酸素化して臍帯静脈に還流するシステムの改良を行ない、良好な結果が得られた。模擬実験にて還流システムの特性試験を行ない、体外循環血流量の変化に対し、回路内の血液量が胎仔循環血液量の10〜20%に相当する量ほど変化することが分かった。しかし、実際の保育実験の結果から判断して、この程度の変動に対しては胎仔は順応可能であることが示唆された。人工子宮の体外循環に相当する胎盤循環の障害が胎仔の脳に与える影響を調べるため、マイクロスフェアを用いた胎仔各部の血流計測および過酸化脂質の測定を行なった。その結果、臍帯の間欠的圧迫により、脳血流が一時的に増加し、その後減少に転じること、およびフリーラジカルによる障害を意味する過酸化脂質の増加が特に脳に顕著であることが確認され、今後の人工子宮開発に役立つ重要な所見が得られた。さらに、人工子宮の適応の対象となりうる横隔膜ヘルニアの動物実験モデルを作成することを目的に、ヤギ胎仔の胎児手術を行なった。横隔膜に切開を加えた胎仔を再び子宮内で育てることで、実際の横隔膜ヘルニア症例と同じように、腸の胸腔内脱出と肺の低形成を作ることに成功した。将来、この実験モデルを用いることにより、横隔膜ヘルニアの外科的修復と人工子宮での保育を組合せた新しい治療法の開発が期待できる。
著者
松田 和樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

4-6月期は、修士課程における研究を更に発展させるとともに、フェミニズム/クィア理論によるリベラリズムに対する批判を検討した。この成果を5月31日のクィア・セミナー(東京大学駒場キャンパス)と、6月18日の日本女性学会(中京大学)にて報告し、そこで討議された内容を研究にフィードバックした(クィア・セミナーにおける研究報告は日本女性学会におけるものとほぼ同様のものであったため、業績欄には掲載していない)。7-9月期は、主にリベラリズムによるフェミニズム/クィア理論に対する批判を検討した。この期間に研究した成果と修士論文の研究内容の一部、そして博士課程での研究計画の一部を、9月初旬の東京法哲学研究会/関西法理学研究会合同研究合宿(同志社大学)にて報告した。10-12月期は、フェミニズム/クィア理論に、リベラルな正義基底性への内在的コミットメントを見出すことができるか否かを検討した。この研究成果の一部と修士論文の研究内容の一部とを、12月のジェンダー法学会(東北学院大学)にて報告した。また、交付申請書に書かれた研究実施計画よりも早くに研究を進展させることができたため、この時期に初年度新たに取り組んできた研究成果全体を一本の軸にまとめ治す作業を行い、これを通して2018年度の日本法哲学会(東京大学)にて報告するテーマと内容とを概ね決定し、分科会報告に応募した(発表確定済みであるが、次年度の研究報告書に記載する)。1-3月期は、次年度の作業を予備的に行いつつ、修士論文の研究成果と初年度の研究成果とを更に発展させた。ここでの研究成果の一部を、国家学会雑誌における論文に掲載する(掲載確定済み)。また次年度の研究計画をより詳細なものに練り上げていった。