110 0 0 0 OA 感冒後嗅覚障害

著者
近藤 健二
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.271-277, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
54
被引用文献数
1

感冒後嗅覚障害は,上気道のウィルス感染罹患後に上気道炎症状が消失したあとも嗅覚障害が持続する状態である.発症は中高年齢の女性に多く,嗅神経上皮および中枢嗅覚伝導路の傷害による神経性嗅覚障害と考えられている.内視鏡検査,画像検査では異常を認めず,上気道炎罹患後に嗅覚低下を自覚したという病歴が本疾患の診断の決め手となる.基準嗅力検査では中等症以上が大半で高度低下,脱失例が半分以上を占める.治療は本邦では亜鉛製剤,漢方製剤,ステロイド点鼻および内服,ビタミン製剤,代謝改善剤などが使用されている.また嗅覚トレーニングが回復に有効との報告もある.機能回復には長期間(1年以上)かかることが多い.
著者
矢田 英樹
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.382-389, 2015-11-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
3
被引用文献数
2

日本で芳香消臭剤が使われ始めて60年あまり,現在では家庭での手軽なにおい対策商品として,また香りを積極的に楽しむ商品として多くの人に認知され多数使用されるようになっている.芳香消臭剤で使用されている香りは時代と共に大きく変化し,1980年頃までは香りには消臭という機能的価値が求められていた.1990年頃以降は機能的価値に加えて香りを楽しむといった情緒的価値も求められるようになってきた.使用される香りの種類も時代と共に大きく変化しており,当初の比較的シンプルな香りから,最近では上質で高級志向の香りが多く使用されるようになってきている.
著者
庄司 健
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.424-430, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
13

香りの情報が同時に取り込んだ他の感覚の判断に与える影響についてまとめた.香りの違いによりモノの重さや温冷の判断,日常使用されている化粧クリームの使用感や肌実感にも違いがみられることが,実験により明らかになってきた.香りの質的な特徴が,こうした香りの働きを生み出すことに影響していると考えられた.本研究で検討した感覚の判断を変化させる香りの働きを活用することで,より豊かで満足感の高い生活に役立てることが出来るのではないかと考えている.

16 0 0 0 OA 茶の香り

著者
澤井 祐典
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.179-186, 2007 (Released:2008-03-22)
参考文献数
17

茶の香気は主に3つの要素から成り立っている.(Z)-3-ヘキセノール,(E)-2-ヘキセノール,ノナナール,(Z)-3-ヘキセニルヘキサノエートなどは若葉の青臭の原因成分であり,2,5-ジメチルピラジン(ピラジン類)などは香ばしい焙煎香の原因成分である.紅茶やウーロン茶に多く含まれるリナロール,ゲラニオール(テルペンアルコール)は花や果実の香りの成分である.このほか,玉露やてん茶には特別にジメチルスルフィドが多く含まれており,おおい香(葭簀などで遮光して育成することにより発生する)の海苔様の香りの原因成分である.
著者
坂井 信之
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.431-436, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿では,まず,においを溶かした溶液の色やにおい源をイメージさせる写真などの視覚情報が,嗅覚情報処理にどのような影響を与えるかということを調べた研究を紹介した.さらに,これらの影響について,視覚と嗅覚の連合学習,視覚による事物の認知と嗅覚に対するトップダウン処理,視覚による認知の誘導とそれと一致するにおいの側面の強調という3つの考え方から解釈した.最後に,視覚以外の感覚がにおいの知覚や認知に与える影響を調べた研究を紹介し,人間のにおい認知が非常に複雑に行われている過程を理解することによって,におい世界の個人差の理解へつながる可能性を示した.
著者
広津 崇亮
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.191-199, 2015-05-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
48

微量のにおい物質の検知には,従来は物理・化学的手法が用いられてきたが,感度,選択性を追求すると大型化,高コスト化を招く問題があった.そこで近年注目されているのが,生物の嗅覚の高感度性,高選択性を生かしたバイオセンサである.その中には,生物の嗅覚機構を模倣するセンサ,生物の機構や設計思想を活用するセンサが含まれるが,本稿では生物そのものを利用するセンサについて紹介する.最近線虫C. elegansががんのにおいを高精度に識別できることが発見された.線虫嗅覚を用いたがん診断技術(n-nose)は,高感度,低コスト,非侵襲性,簡便,早期がんを発見できるなど,これまでのがん検査システムを変える可能性を秘めている.
著者
岸本 徹
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-20, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

ビールの製造工程,および製造後の酸化によってビール中に生成するオフフレーバーについて解説した.ビールのオフフレーバーには原料,水に由来するもの,仕込工程,発酵工程中に生成してくるもの,缶やビンに詰めた後の保存後に生成してくる酸化劣化臭がある.それらの中にはSH基をもつ低閾値化合物のように,ビール中にng/L程度しか含まれない微量成分もあるが,近年では分析機器が発達し,定量することも可能となった.ビールのオフレーバーとして過去から近年,着目されている化合物について述べた.
著者
阿部 恒之 高野 ルリ子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.338-343, 2011-09-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

化粧に関する心理学的研究は,1980年代から盛んになってきた.化粧は慈しむ化粧(スキンケア)と飾る化粧(メーキャップ・フレグランス)に大別されるが,感情に及ぼす影響に関する研究は,そのいずれもが高揚と鎮静をめぐるものであった. 喩えるなら,メーキャップによって心を固く結んで「公」の顔をつくって社会に飛び出し,帰宅後にはメーキャップを落とし,スキンケアをすることで心の結び目を解いて「私」の顔に戻るのである.すなわち,化粧は日常生活に組み込まれた感情調節装置である.
著者
寺井 岳三 植田 秀雄 行岡 秀和
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.275-279, 2005 (Released:2005-11-25)
参考文献数
10

放屁の有無の測定は,腸管運動の機能の評価において重要である.とくに手術後の患者では,腸管の動きが抑制されるため,放屁の出現は,腸管の運動が回復したことを正確に示し,経口摂取開始の指標となる.放屁を客観的に評価する放屁モニターの,指標として用いることができるガスは,大気中にほとんど含まれず,放屁中に必ず存在する事が必要条件であり,炭酸ガス(CO2)と水素(H2)が適する.CO2は呼気に5%含まれるため,部屋の換気や部屋にいる人数により大気中のCO2は変動するが,H2は,呼気中に含まれる濃度がCO2に比べるとはるかに少ないため,測定に影響が少ない.H2を指標とした小型で,簡便な放屁モニターを試作し,CO2アナライザーと比較した結果,信頼性が高く,CO2アナライザーより優れていた.今後,H2を指標とした放屁モニターの臨床での実用化が期待される.
著者
小川 治雄
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.330-339, 2015-09-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

日本酒の香りや旨みについて概説した.多種の日本酒,すなわち精米歩合や酵母種,醸造法,醸成期間などの醸造工程の異なるタイプの日本酒が対象となった.日本酒の成分と日本酒の持つ特有の香りや旨味の特徴との関わりをまとめた.酸度やアルコール類,カルボニル類,エステル類,アミノ酸,フルフラールの定量値などにより,それぞれのタイプの香味を伴った日本酒が特徴づけられた.アルコール成分と健康についても触れた.試飲からも日本酒の成分とその特徴が確認された.
著者
城 斗志夫 工藤 卓伸 田﨑 裕二 藤井 二精 原 崇
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.315-322, 2013-09-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

キノコにおいて香りは美味しさを構成する大事な要素である.そのために多くのキノコにおいて香気成分が分析されている.キノコの中にはマツタケや干しシイタケのように特徴香を持つものもあるが,大部分のキノコにおける香りの主成分は1-オクテン-3-オールや1-オクテン-3-オン,3-オクタノン,3-オクタノールなどの揮発性C8化合物である.C8化合物の生合成には,脂質過酸化酵素,過酸化脂質開裂酵素,酸化還元酵素が関与すると考えられているが,よくわかっていない部分も多い.そこで本稿ではキノコの香気とその生合成に関わる酵素について述べる.
著者
宇都宮 仁
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.352-360, 2007-09-25 (Released:2008-09-19)
参考文献数
23
被引用文献数
4 7

官能評価は,清酒の研究や製品分析に不可欠である.最初に,これまで行われてきた清酒の官能評価の歴史とその問題点について紹介する.最近,筆者らは,記述的試験法のために,用語,標準見本とフレーバホイールで構成される評価用語体系を作成した.この評価用語体系中のにおい・かおりに関する用語とその由来について説明する.また,専門家と専門家以外を比較するため,標準見本18種類と3種類の製品を利用して一般パネルによる清酒のかおりの表現,類別,嗜好について調査を行い,一般パネルによる清酒のかおり構造を作成した.
著者
池内 龍彦
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.118-129, 2017-03-25 (Released:2021-05-21)

乗物での移動中にもトイレが快適に利用できれば気持ちの良いものである.最近の公共交通機関のトイレはにおいのない快適な空間が求められている.乗物にトイレが付いていれば悦ばれていた時代から,付いているのが当たり前の時代,そして最近では入ってみたくなるような豪華なトイレが付いている乗物も登場してきた.乗物のトイレは,上下水道の完備した住宅用とは環境条件や不特定多数の人が使用するなどの条件が異なるため,独自の歴史をたどった.時代の流れと共に,様々に改良された列車やバスのトイレと排水処理を紹介する.
著者
石田 裕
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.216-225, 2010-07-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
20

近年,食に関する苦情が多く寄せられている.生活環境の中には多くの化学物質が存在しており,ものによっては環境中から食品へ移染する場合もあり,摂取により安全性が妨げられる場合もある.食品への化学物質の移行に関していくつかの例を示したが,特に気化しやすい物質についてはその挙動を念頭におき,近くに食品を置かないことや,包装の材質を考え透過しない容器に入れておくなどが対応策として重要である.
著者
斉藤 幸子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.363-379, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
18
被引用文献数
2

臭気公害における臭気質の評価は,苦情や快不快と関わりのある課題であるが,まだ十分な対策が検討されていない.本稿では,先ず,提示した悪臭を言葉で表現した場合の特徴について,次に,98のにおいの記述語に基づく日本の日常生活臭の類型について述べる.前者では,悪臭の表現には大きな個人差があることが示され,共通の記述語の選定が望まれた.後者では,悪臭も含む日本の日常生活臭の類型の数が,4から19まで階層的に得られ,臭気質の新たな評価軸として「安全—危険」が導かれた.最後に,環境臭気の臭気質評価のための記述語の選定方法について言及した.
著者
白田 志保 石川 清宏
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-45, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
2

食品の味覚とにおいが密接な関係にあることは知られている.しかし,その味覚・においを特徴付けている化学物質を明確にするためには,感覚的な分析手法と化学的な分析手法を組み合わせる必要がある.感覚的な指標をもとにした分析手法としては,におい識別センサーや味覚センサーなどが使用されているが,それらでは味覚・においを特徴付けている化学物質を特定することはできない.一方で,アミノ酸分析機や質量分析計を用いる化学分析手法では,化学物質の特定はできるものの,感覚的な指標との関連を議論することは難しい.今回,アミノ酸分析装置とガスクロマトグラフ質量分析計(以下GC-MS) に官能分析の一手法であるスニッフィング機能を組み合わせた,スニッフィング-GC/MSを用いて,数種類の市販チーズをそれぞれ分析することにより,感覚的な指標とその背後にある化学物質の同定を試みた結果,いくつかの知見が得られたので以下に報告する.