著者
大向 一輝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.473-477, 2012-11-01

学術情報サービスにおいて,コスト面での制約がある中で大量のアクセスを高速に処理するためには,サービスが備えるべき機能を精査し,その機能の実現に適したシステム設計を行う必要があるCiNii Articlesでは月間3500万〜5000万のアクセスに対応するため,機能要件を検索と書誌表示に限定し,高速な検索エンジンと単純な処理のみを行うRDBを組み合わせることで性能要件を達成した。また,書誌IDを維持・管理するシステムを構築することで信頼性の高い情報サービスの提供を行っている。
著者
仁上 幸治
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.310-317, 2005-07-01

大学における学術情報リテラシー教育に図書館員が参画する機会が増えている。司書職の専門性が崩壊の危機に瀕する状況にあって, 専門性の社会的認知を回復し向上させるためには, パブリック・リレーションズとマーケティングの視点が必要不可欠となっている。本稿は, 図書館員の社会的イメージの問題点を整理し, 新しい学術的専門職像の訴求をめざす広報イメージ戦略の基本的な考え方と取り組みのアイディアを例示する。
著者
椎名 ゆかり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.146-152, 2014-04-01

アメリカの図書館でマンガが所蔵されるようになったのは近年のことである。長い間マンガ,特に「コミック・ブック」と呼ばれるマンガの刊行物は,「子供向けの低俗な読み物」として時には規制運動も巻き起こるほど批判され,図書館はむしろ「コミック・ブック」に対して批判する側であった。その図書館が21世紀に入り,マンガを積極的に支持し,所蔵対象にするようになっている。本稿では,マンガが図書館に所蔵されるようになった歴史的経緯を概観し,この変化の起こった要因の一部に,マンガが「グラフィック・ノベル」として再発見された点や日本マンガ人気があった点を考察することにより,アメリカ社会におけるマンガの文化ヒエラルキーの変遷を検証する。
著者
千 錫烈
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.420-427, 2010-10-01

本稿では問題利用者への対処法を示すことを目的とする。最初に図書館における問題利用者の定義や問題行動の種類について概観し,問題利用者の範囲は広く,状況によっては問題行動かどうかの判断が困難なことを指摘する。次に日本における問題利用者の実態調査のレビューを行い,現実問題として問題利用者の被害が深刻であり,図書館員の精神的負担となっていることを示す。最後に,問題利用者の対処法として,最も遭遇頻度が高いであろう「怒った利用者」に焦点を当て,傾聴法に代表されるコミュニケーション・スキルを用いた方法や,意見が対立した際の「優位」と「回避」を用いた対処法を紹介する。
著者
緑川 信之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.238-243, 2007-05-01

フォークソノミーという用語はフォーク(folkまたはfolks)とタクソノミー(taxonomy)の合成語である。Wikipediaによれば,フォークソノミーは,インターネット上での情報検索の方法論であり,協同的かつ自由に付与されるタブで構成されている。このダグによって,ウェブページやオンライン上の写真,ウェブリンクなどのコンテンツがカテゴリ分けされる。本稿では,フォークソノミーに関するいくつかの論文・記事を分析し,フォークソノミーの新奇性がどこにあるのかを明らかにした。
著者
松永 憲明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.493-499, 2005-11-01

平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震阪神・淡路大震災により, 神戸市立図書館も大きな被害を受け, いったんは機能停止状態となった。地域により被害に差はあったが, 全館の機能回復するまでに約2年を要した。その復旧までの過程とコンピュータシステム変更, 神戸市図書館情報ネットワークシステムの稼動, 新館建設による1区1図書館構想の実現, 利便性の向上を目指したサービスの拡充, 中央図書館, 地域図書館, 分館の計11館による図書館システムの構築などへの取り組みが行われた10年間を振り返って, 市民が求める図書館の再生までの道のりを紹介する。
著者
宍道 勉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.591-596, 2009-12-01
参考文献数
9

本論は単なる「イタリア図書館法」の紹介・解説に留まらない。同法の日本語訳と日本の図書館法を読みながら,幾つかの相違点を取り上げ,比較考察を試みた。そしてその違いが実際の両国の図書館活動にどのような影響を及ぼしているのかを探った。その結果,図書館に関する法とは,国家が図書館をどう見ているか,その図書館思想を鏡に映したものであることが分かった。しかし残念ながら日本の図書館法はその思想を持たないことに気付く。日本の改正「図書館法」は平成24年から施行されるが,その思想は旧態已然であり,図書館の方向を見据えているイタリアの図書館法との隔たりは一向に縮まっていない。
著者
岡野 裕行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.233-237, 2011-06-01

文学館と呼ばれる施設は,文学を対象とした専門図書館として機能している。また,文学館は博物館や文書館としての特徴も兼ね備えている。図書館と文学館との連携には,施設の規模による違いが見られる。連携を考える場合には,それぞれの施設の形態のみに注目するのではなく,収集対象としている資料の主題分野のほか,それに関係する個人や団体にも関心を払うことが求められる。
著者
安藤 誕 井上 真琴
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.329-334, 2008-07-01
被引用文献数
1

インターネット情報源の増大にともない,レファレンスサービスは変容の機を迎えている。情報源の紹介から,多様な情報源を総合的に活用し利用者の問題解決を支援する,より踏み込んだサービスに変わりつつある。また,従来の図書館のオントロジー(分類法,件名法,目録法など)に加え,ウェブ時代の新たな情報技術とそれが生み出すオントロジーを見据えたレファレンス対応が求められる。本稿は,現場での実例を挙げながら,今後のレファレンスライブラリアンに必要な能力要件を検証する。
著者
後藤 敏行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.68-74, 2010-02-01

コンピュータゲームは一大産業化し,現代文化の要素になっているため,保存して後世に残す必要があると考えられる。保存に対する課題には,メディアの短命さや技術の陳腐化がある。対策にはマイグレーション,エミュレーション等があり,特にエミュレーションに期待が集まる。だが,完成された技術ではまだなく,著作権や特許権を侵害する可能性もある。複数のコンピュータゲームアーカイブがすでに設立され,運用を開始している。それらは,世界のすべてのコンピュータゲームを収集するには至っていない。今後の施策として,ゲーム会社とコンピュータゲームアーカイブの連携協力や,図書館界の一層のコミットメントを提言する。
著者
橋元 博樹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.244-250, 2015-06-01

学術コミュニケーション界,出版界ともにデジタル化が浸透していることは疑いようもない事実である。しかしこのふたつの領域で活動している学術出版社による電子書籍ビジネスは期待されているほど進んでいるわけではない。出口がみえないと言われる出版物販売額の低迷,すなわち「出版不況」のなかで,その一端を占める学術書市場はどのような状況にあるのか。本稿では学術出版社の活動に焦点をあて,大学教科書と大学図書館の印刷本市場を概観し,電子学術書の可能性を探る。
著者
時実 象一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.426-434, 2014-10-01

この記事は,ここ数年のオープンアクセスの動向について詳述するもので,前後編に分かれる。この前編では,はじめにオープンアクセスの定義と歴史について,特にゴールド・オープンアクセスとグリーン・オープンアクセスについて簡単に説明した。近年研究助成機関と各国政府のオープンアクセス志向が強まり,米国・英国など主要国で助成研究成果論文の無料公開が義務付けられている。なかでも,2013年2月の米国OSTPのメモ,2012年6月の英国のFinch Reportとその影響,ECの動向などについて解説した。さらに,米国では,この義務化に対応するための出版社の取り組みCHORUS,図書館の取り組みSHAREなどの動きがある。 CHORUSはCrossRefのFundRefに支えられている。こうした,義務化を支えるインフラストラクチャーについて述べた。
著者
伊藤 倫子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.401-409, 2011-10-01

図書購入予算が減少を続ける現在,米国図書館はインターライブラリー・ローン(ILL)を利用し図書館間のリソース・シェアリングを効果的に行うことで対応している。世界的な減少傾向に反し,米国のILL活動は以前活発であるが,その要因として,図書館がITを積極的に活用し,図書館のサービスやマネジメント技術の向上を図ってきた点が指摘できる。一方で,新しいサービスの導入や電子リソースの急激な増加に伴い,図書館は新たな問題に直面している。本稿は,米国におけるILL活動について概観し,ILLサービスの変化,発展,あるいは課題について述べる。
著者
三根 慎二
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.156-161, 2010-04-01

オープンアクセスに対する社会的関心の高まりや,その促進を後押しする欧米政府・研究機関による政策・制度の策定が続いている。オープンアクセス関連の情報は大量に流通し続けており,一人ですべてを発見し読むことはもはや不可能である。よって,情報収集の負担を軽減しより効率的にするためには,何らかの方策が必要となる。本稿では,オープンアクセス関連の情報を収集するための重要な10大ツール(人,イベント・学会・各種委員会,Twitter,メーリングリスト・メールマガジン,ブログ,Webサイト,ソーシャルブックマーク,ニュースレター,雑誌,図書)を紹介する。
著者
米澤 誠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.305-309, 2005-07-01
参考文献数
6

図書館で行う展示会は, 図書館資料の利用を促進する活動の一環であり, 図書館の存在を社会に示す広報活動としても意義づけ, 図書館展示の持つ積極的意義を見直す。また, 東北大学で実施した「企画展」を事例として, 展示・解説の効果的実践方法を示す。
著者
ティムソン ジョウナス
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.207-212, 2014-06-01

2010年に文部科学省から出された『大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる図書館像-』では,大学の教育機能に対する社会的要請が急速に高まっている中で,図書館員による教育支援がこれまで以上に期待されていること,そして効果的な教育支援を実現するための専門性が図書館員に求められていることが記されている。本稿では,これから大学図書館員として働こうとしている人を対象として,大学図書館の実際の業務の内容と,それらの業務を最大限に展開するための要素を踏まえながら,教育に関わる図書館員として活躍していくために必要な知識や専門性について述べた。
著者
大向 一輝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.595-601, 2008-12-01
被引用文献数
2

近年,学術情報サービスには専門家だけではなく一般の人々に対する情報の提供という役割が求められるようになっている。国立情報学研究所では,論文情報ナビゲータCiNiiについて,ファインダビリティ向上を目的とした大規模なリニューアルを行った。リニューアルに際しては,新たなユーザである一般のウェブ利用者のユーザモデルに関する検討を行い,オープン化ならびにウェブ検索エンジンとの連携が必要であるとの結論を得た。これをふまえて2006年から2007年にかけてシステムの改良を行った結果,サービスの利用回数が従来と比較して3〜10倍程度に増加し,CiNiiの知名度を高めることができた。本論文では,学術情報サービスにおけるユーザモデルについて議論するとともに,CiNiiリニューアルで実施したファインダビリティ向上のための具体策とその効果,ならびに今後の展望について述べる。
著者
飯野 勝則
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.355-360, 2011-09-01

佛教大学図書館は,2011年4月に「ディスカバリーサービス」であるSummonを日本で初めて導入した。だが,その能力を十分に発揮するためには,図書館で従来から利用されてきたOPACやリンクリゾルバとの連携が欠かせない。とはいえ,OPAC連携においては,削除レコードや通信プロトコルの問題など,日本の図書館システム特有の課題も存在する。一方,リンクリゾルバは,Summon上の論文メタデータから図書館の紙媒体の雑誌への誘導をシームレスに行うことを可能にし,またハーベストを行えない非連携サイトへの誘導すら可能にすることから,再度着目すべきツールとなった。今後はSummonの日本語コンテンツの強化とともに,リンクリゾルバの機能強化が課題になるだろう。
著者
藤代 裕之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-63, 2011-02-01
参考文献数
28

ソーシャルメディアの登場は, ジャーナリズムに大きな影響を与えている。ソーシャルメディアを利用することで, 新聞やテレビといったマスメディアを介さずに多くの人々に対して情報発信することが可能になった。本稿では, 海外と日本においてソーシャルメディアがジャーナリズムに与えた影響や課題についての事例を紹介し, まず, 記者だけでなく個人もジャーナリズム活動に関与するようになっていることを明らかにする。次いで, 情報発信者も, メディアスクラムやプライバシー侵害, 倫理問題に直面していることに触れ, 情報発信者である「私たち」がどのような役割や責任を担っていくかを考察する。