著者
高橋 砂織
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.636-648, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
24

味噌の効能に関する研究は多く,抗酸化性や抗腫瘍性など多くの論文が報告されている。著者らは,ここ10年ほど味噌中の血圧調節作用物質に注目し,レニン,キマーゼ,アンギオテンシン変換酵素やアンギオテンシン変換酵素2阻害物質の探索を行った。その結果,味噌には複数の血圧関連酵素阻害物質が存在することを見出された。味噌の効能に新たな可能性が期待されている。
著者
砂野 唯
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.866-873, 2014 (Released:2018-04-09)
参考文献数
14

科学的にも,また,文化人類学的にもアフリカのアルコール飲料の研究は魅力的である。アフリカのアルコール飲料には様々な原料が使用されており,未だに十分な調査がされていないものや希少な酒は数多い。本稿では,食事として摂取されるエチオピアの珍しいアルコール飲料について解説して頂いた。
著者
橋本 彩子 神戸 大朋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.836-841, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
28

日本人の食生活については,献立の欧米化,インスタント食品化が進み,最近では伝統的日本食の価値が見直されている。現代日本人の食事では,タンパク質,脂質の摂取が十二分となっているが,金属元素等の微量成分が不足しがちであることが明らかになってきた。本解説の著者らは,人体における亜鉛(Zn)の重要性に着目し,Znの栄養研究を実施してこられた。その中で,味噌等の発酵食品の成分がZn吸収促進効果を持つことを示された。ここでは,亜鉛栄養研究の現状を概観していただき,発酵食品の成分への期待を含めて,今後の研究の展望をわかりやすく解説していただいた。
著者
楠見 晴重
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.36-43, 2014 (Released:2018-02-16)
被引用文献数
1 1

京都盆地の地下には約211億トンという,琵琶湖に匹敵する豊富な水量の水瓶(京都水盆)がある。この京都水盆へは,京都府から滋賀県,三重県にまたがる7,050km2の地域に降った雨から毎年45億トンが供給される。平安京の昔から1200年間,京都の文化や伝統産業,たとえば茶道,京友禅,京豆腐や湯葉,伏見や京都の酒造りをこの良質で豊富な地下水が育んできた。この大切な地下水資源を将来にわたって守り抜くために,著者は3次元地質構造モデルを作成され,地下水汚染対策に利用されています。地球上では水不足が進行しており,2025年には48カ国17億人が深刻な水不足になると予想されている。この大切な水を守るために京都や日本から発信する必要があると述べられています。
著者
西脇 俊和
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.8, pp.575-582, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
22

従来,キノコは食材として捉えられることが主であったが,近年は新たに酵素のソースとしての側面に関心が寄せられているという。著者は,日常の食卓に上るようになって久しいおなじみのマイタケのタンパク質分解活性の高さに注目した取り組みを行っている。ここでは,マイタケアミノペプチダーゼの基質特異性を利用したタンパク質分解物の苦味除去や,血圧降下作用を有するぺプチドの生成などについて述べていただいた。ご一読いただければ,マイタケひいてはキノコの酵素の食品加工への広範な応用の可能性の一端がうかがえるはずである。
著者
小野 朋子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.100-109, 2012 (Released:2017-10-23)
参考文献数
32
被引用文献数
1

弱酸性次亜塩素酸水溶液は本来アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウムを塩酸でpHを5.5~6.5の弱酸域に調整し,殺菌作用の強い非解離型の次亜塩素酸の比率を増加させたもので,醸造食品の現場において問題となる芽胞菌のBacillus属菌やClostridium属菌に対しても殺菌効果が強い。そこで,著者に実際の食品加工現場における適用事例について解説頂いた。弱酸性次亜塩素酸水溶液は次亜塩素酸ナトリウムよりも低濃度・短時間で殺菌が可能であるために,食品や部材に対するダメージが少なく,塩素臭も低減されるので,これを醸造食品工場において適用し,各種麹の一般細菌を含め特に芽胞菌を低減頂けるならば幸いである。

24 0 0 0 OA 甘味の基礎知識

著者
前橋 健二
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.818-825, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 5

味覚として,最も重要な位置にある甘味について,甘味を発する物質として糖やアミノ酸の天然甘味物質から人工合成甘味料・甘味タンパク質・甘味阻害物質までを概観していただくとともに甘味を感知する仕組みを細胞レベルから受容タンパク質まで最近の知見を幅広く網羅し,平易に解説していただいた。
著者
島津 善美 藤原 正雄 渡辺 正澄 太田 雄一郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.747-755, 2011 (Released:2017-03-21)
参考文献数
43
被引用文献数
1

味と温度の関連性については必ずしも一致した結論が得られてないのが現状であるが,近年,清酒の特性を生かした飲み方の提案として,温めて飲む燗酒及び酒質と様々な食材・料理との相性を求めるような研究も多く見られるようになった。そこで,ワインの有機酸の研究を長年に亘って研究を重ねてこられた筆者らに,清酒の味を左右する二つの成分,有機酸及びアミノ酸と飲用温度の関係について,官能評価の結果に基づいて,詳しく解説して頂いた。日常の料理メニューで最も普及している21品目について,清酒と料理の相性基本表など新しい知見も提示されている。得られた知見が清酒の需要拡大につながるものと期待し,清酒業界の方々にも是非参考にしていただきたい。
著者
田村 隆幸
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.139-147, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
28

酒と料理との関係は,お互いに引き立て合うことが肝要だが,ワインによっては魚介類の生臭味を強調させてしまうことがある。著者らの研究によって,その一因がワインの鉄含量によることが確かめられた。本記事をワインと魚介料理を楽しむための参考にしていただければ幸いである。一読をお薦めしたい。
著者
稲橋 正明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.14-21, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
14

近年,健康面で乳酸菌が話題になることが多い一方,清酒醸造において生?系酒母が見直され,多くの酒造場で製造されるようになっている。従って,目にはみえないものの,私共の身の回りにこれまで以上に乳酸菌がはびこっていることが容易に想像される。清酒醸造にとっては,腐造の原因微生物として恐れられているが,その性質をよく知ってみるとそれ程恐れることはないし,応用面でも再評価してよさそうである。ご一読をお勧めします。
著者
都甲 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.86-94, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
11

著者が開発された味覚センサは,研究の用途にとどまらず食品生産の現場でも広く活用されている実用性の高い計測器として知られている。味覚の計測は客観的な基準が明確でない感覚を,客観的に計測するという説得力を持ちにくい困難な作業である。著者らのグループはデバイス自身の開発のみならず,多くの測定事例の積み重ねとその結果を精力的に周知することで信頼性を確保されている。ここでは,味覚センサの測定原理“なぜ味が測れるのか”を詳しく解説していただき,併せてにおいセンサについても解説を頂いた。
著者
山田 修
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.64-67, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
11

泡盛麹菌がAspergillus luchuensisとして初めて記載されて以来,100年以上の年月が過ぎたが,この間,焼酎・泡盛麹菌を含む黒色Aspergillusの分類は長きに渡り混乱状態が続いてきた。著者は数年来,分子系統解析やトキシン生産性試験の結果に基づき,黒麹菌の再分類を提唱してきたが,最近その取り組みが実を結び,海外の分類の専門家を交えた検討の結果,黒麹菌はA. luchuensisとして,A. nigerなどのクロカビと別種として分類されることが改めて確認された。本稿では,分類が混乱した原因も含めて黒麹菌の再分類に至る経緯を概説し,これまで記載された主な黒麹菌の素性を振り返っていただいた。
著者
有田 正規
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.98-103, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
9

今回の原発事故により,人々は放射線に関して大きな不安を感じることになった。一方,被災地の生産者は風評被害の影響を大きく受け,今もなお苦労されている。本稿では放射線に関する科学的な知見をわかりやすく紹介していただいた。放射線対策を正しく考えるきっかけになると思う。
著者
吉田 晋弥
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.710-718, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

酒米の醸造適性については酒米研究会による膨大なデータの蓄積があり,これまで気候条件との関係のほかクラスター分析による品種間の類似性などが報告されている。しかし,その遺伝的な背景についてはまったくの手付かずであった。現在,SSRマーカーのDNA多型データを収集し,集団構造解析という新たな手法で遺伝的背景に基づいた集団の分類を行った上で酒米品種群でのコアコレクションの選定が進められている。今後,ゲノムワイド関連分析によりDNAマーカーと形質との相関関係の解析を進ることで,これまで蓄積されてきた酒米の醸造適性に関する遺伝子の解析を大きく進めることができ,酒米育種での選抜効率を飛躍的に高めることが期待される。
著者
舩山 淳
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.801-807, 2016 (Released:2018-08-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

清酒の製造に豊富でよい水は欠かせない。名水あるところ名酒ありとも言われる。水は,清酒の重要な原料である。この水の成分は,全国一律ではない。それは,降った雨が地面に浸み込み通ってきた地層等に関係しているからである。今回は,水と酒質の関係をさらに進めて,地質学の専門家に日本列島全体を俯瞰して地質と清酒の酒質との関係について解説いただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.306-317, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

フランス北部,ベルギーとの国境に近いシャンパーニュ地方は,寒冷な気候でワインブドウが完熟するには厳しい条件だが,逆にその条件を活かしたシャンパンは世界のスパークリングワインをリードしている。このシャンパン造りを支えるブドウの栽培方法は,厳しい自然環境のなかで先人たちの努力と試行錯誤の積み重ねによって見出されたものと言えるだろう。シャンパン醸造について研修・情報収集をされた筆者に,この地方のブドウ栽培の概要とシャンパンの品質と名声を維持するために設けられている種々のルールについて解説していただいた。
著者
岩田 博 磯谷 敦子 宇都宮 仁 西尾 尚道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.534-538, 2004-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
3

口噛み酒製造工程への米α-グルコシダーゼの働きを検討するため, 生米と炊飯米で口噛み試験を行い, 糖組成, α-グルコシダーゼ活性, pH及び有機酸組成の各変化を調べた。<BR>糖組成について, 24時間後で, 生米はグルコースが5%, マルトースが0%であったのに対し, 炊飯米ではマルトースが5%, グルコースが0.8%で両者は全く異なっていた。この理由は, 糖組成とα-グルコシダーゼ活性の測定結果から, 唾液アミラーゼにより生成されたマルトースが, 生米のα-グルコシダーゼによりグルコースに分解されたためと推定された。また, 有機酸組成の検討から, 微生物が生成した乳酸などによるpH低下と酵素抽出促進効果がおこり, α-グルコシダーゼが有効に機能する環境条件下で口噛み試験の反応が起こっていることが分かった。<BR>以上から, 口噛み酒は生米のα-グルコシダーゼを巧みに利用した酒造りであると推定された。
著者
橋本 直樹
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.492-499, 2010 (Released:2016-01-25)
被引用文献数
1

日本の酒について,現在に至るまでの各時代において酒の果たした役割,人との関わりあるいは飲まれ方などを改めてまとめて戴いた。特に最近の酒類の消費動向を詳細に解析して,日本人の飲酒に対する考え方が大きく変化し,かつその方向性をも見失っている時期に突入している事に警鐘を鳴らすとともに,今まで日本が辿ってきた酒の歴史を再度振り返る事の中に各酒類が低迷から抜け出すヒントがあるのではとのご指摘を戴いた。
著者
森山 達哉
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.645-655, 2011 (Released:2017-03-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

近年,花粉症,アトピー性皮膚炎等のアレルギー症や食物アレルギーが増加し,その治療法のために原因究明の研究が精力的に行われている。中でも大豆アレルギー等の食物アレルギーについて抗原蛋白質が同定されるなど研究が進んでいる。近年の研究によってアレルギー発症機構からクラス1,クラス2の食物アレルギーが存在することがわかってきた。味噌,醤油,納豆等のわが国の伝統発酵食品と大豆アレルギーとの関連性が注目されているが,アレルゲン蛋白質の消長に関する研究が進んでいる。本解説では,食物アレルギー研究をご専門とする著者に,最新の研究成果の一端を紹介していただくとともに食物アレルギーの多様性と味噌のアレルゲン蛋白質の低減化について分かり易く解説していただいた。
著者
Ayako HASHIMOTO Taiho KAMBE
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.811-817, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
37
被引用文献数
4

本解説では人体における亜鉛(Zn)の生理機能について概説し,Znの摂取の重要性及び最近発見されたZn輸送タンパク質(ZIP4)の機能についてわかりやすく解説していただいた。つづいて,著者らが実施した,各種の味噌を添加することによるZIP4発現促進に関する研究を中心にして,味噌成分がZIP4発現促進効果をもつ可能性,ならびに近年の都市型生活の中で懸念されるZn欠乏に対する発酵食品の有用性についての期待と展望を示していただいた。味噌の新しい機能性の概要と有用性についてわかりやすく解説していただいた。