- 著者
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岡田 匡史
- 出版者
- 美術科教育学会
- 雑誌
- 美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, pp.139-150, 2010-03-20 (Released:2017-06-12)
筆者は,A.アレナスが卓抜たる対話形成スキルをもって行い,日本では上野行一が主導的に理論整備し普及を図る,対話型鑑賞の妥当性の及びうる範囲・限界を検討し,その射程を越えた部分をカバーしうる指導形態として読解的鑑賞を考える。本稿目的は,この読解的鑑賞のための準備的論察を固めることである。メソッドを継ぐ1人,岡本芳枝の識見を参照する所から論を起こし,次いで作品鑑賞の年齢段階・習熟差を,A.ハウゼンやM.パーソンズの発達説を振り返り,実践者の考えも踏まえることで確かめる。その結果,創話主体の対話型鑑賞は,内省優位で言語能力・情報活用力を培うべき中学校段階では課題多き点が明らかとなる。網・螺旋状構造の対話型鑑賞と対照的な,E.フェルドマンの階梯型批評メソッドも吟味し,中学生を主対象とする読解的鑑賞(別稿準備中)の必要性を説く。