著者
山田 晴通
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100196, 2012 (Released:2013-03-08)

今日の大学教育の現場において、何らかの自習課題、宿題等を与えた場合に、学生がまずインターネット上の検索サイトを利用して情報を求めようとするのは、既にいわば常道となっている。また、Yahoo!知恵袋に課題をそのまま質問として投じるようなことさえ起こっている。そして、そうした検索の結果としてヒットする可能性が高く、レポートの作成に参考される事の多いサイトのひとつがウィキペディア、特にその日本語版である。<BR> そもそもウィキペディアは、ネットにアクセスできる者であれば、誰もが加筆編集に参加できることが最大の特徴であり、一定の権威のある専門家が項目を執筆するような在来型の百科事典とは性格が大きく異なっている。このため、ウィキペディアの個別の記事の内容について、その正確さや、イデオロギー的中立性などが厳しく批判されることも、しばしば生じている。<BR>  こうした状況は、より多くの学術研究者、専門性を持ったアカデミシャンがウィキペディアに参加していくことで、改善されていく事が期待できるが、現実には、アカデミズムに身を置く研究者にとって積極的にウィキペディアに関わるメリットはほぼ皆無の状況にあり、ウィキペディアに参加する研究者を増やしていくことは容易ではない。土木学会(2010)の例のように、学会の活動の一環として、一定の品質管理がなされた記事の作成・編集を行なう取り組みが仕掛けられなければ、ある学問分野に関係するウィキペディアの記事が数多くの専門家の手で量産されるといった状況は成立し得ない。<BR> 例えば、大学レベルの地理教育において学生が学ぶべき内容が、関連するウィキペディアの記事に反映されていれば、学生の自習用の教材としてそれを用いる事が可能になり、より効率的に学生の自修を促せるようになるものと期待できる。そのためには、定評ある教科書等からキーワードを拾ったり、実際に地理学教育に携わっている大学教員からシラバスで重視している概念を集め、その記事を新たに作成したり、既存に記事に加筆して強化したりする取り組みを、学会が関わる形で展開する必要がある。また実際に、少しでも多くの大学における地理学関係の授業において、ウィキペディアの記事を教材として実際に使用し、その経験がフィードバックされるようにしていくことも重要である。

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山田 晴通「ウィキペディアと地理学教育の連携の可能性」https://t.co/X9P8xGGNV2 研究者ももっとウィキペディアに関わっていくべきではないかという意見

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