著者
井田 仁康
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.29, 2021 (Released:2021-09-27)

地域区分は、地域区分をする目的により、また何を指標とするのかで異なってくる。ある地域を理解するために、その地域を一つとしてみなすのか、空間的特徴のあるいくつかのまとまり(地域)に分けてその地域を理解する方がいいのか、そういったことが検討されて地域区分が行われる。他方で小学校社会科および中学校社会科地理的分野の教科書などでは、日本を7地域に区分して学習するようになっている。日本を7地域区分は明治期に画定されたとされるが、この7地域区分が定着し、日本の地誌学習が進められてきた。日本を7地域に区分して考察することが日本地誌を理解しやすくしているのだろうか、そのような議論がなされないまま、子どもたちは日本を7地域に区分できることを所与のものとし、その地域区分の意味を考えることもなく形式的に分けたものとして学習していないだろうか。それでは日本地誌が7地域の寄せ集めという認識でおわり、総合的に日本の地誌を理解したということにならないではないだろうか。2.地域区分の重要性 2021年から施行されている中学校学習指導要領では、日本の地誌学習のはじめに地域区分の学習が行われる。地形、気候、地震・災害、人口、資源・エネルギー、産業、交通・通信などから、これらのいずれかを指標とすると、その指標に応じて日本が地域区分され、どのような特徴をもつ地域から日本が構成されているのかを明らかにすることができる。上記の項目すべてで地域区分を行なう必要もないが、どれかの項目で地域区分を行うことで、地域区分の意味が理解でき、指標により地域区分が異なり、どのような事象に対して地域区分して日本の理解をすべきかといった判断ができるようにもなるだろう。指標をつかって地域区分することは地図活用の技能となるが、地域をどのような基準でいくつに分けることで日本の理解につなげるかを判断することは、分布などに着目してどのような観点で区分するのかという思考力・判断力を伴うものである。また、地図で表現することじたい表現力を必要とするものである。このように地域区分には、知識・技能、思考力・判断力・表現力といった資質が必要とされ、また養うことができる。さらには、次の学習となる日本の諸地域でどのような地域区分が日本を理解していくのに適切なのかといった学習課題を明確にし学習する意欲をわかせる、すなわち主体性につなげることができる。このように、地域区分の学習は資質・能力の3つの柱にかかわる学習となりえるのである。3.地域区分とSDGs 17の目標と169のターゲットから成るSDGsには、それを理解し達成させるための教育が必要となる。その教育には、社会的事象の地理的な見方・考え方をはたらかせた思考力を養うことや知識・技能の習得が含まれる。このような教育がSDGsを支えるものとなる。その意味では地域区分の学習は、SDGsを支えるための基礎的な学習となる。さらには、世界地誌においては、SDGsにかかわる指標で地域区分図を作成することで、SDGsにかかわる地域的課題がみえてくる。人口や貧困に関する指標により、具体的に「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」といった目標にかかわってこよう。日本国内においても気候災害にかかわる指標で地域区分図を作成することで、その地域にふさわしい「気候変動に具体的な対策」を考えることができ、それをどのような地域的範囲で考えていけばいいかといった効率的な対策にもつながっててくる。子どもたちに地域区分をさせることは、日本や世界を俯瞰できるという意味においてSDGsにとって重要なのである。

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>日本を7地域に区分して考察することが日本地誌を理解しやすくしているのだろうか、そのような議論がなされないまま、子どもたちは日本を7地域に区分できることを所与のものとし、その地域区分の意味を考えることもなく形式的に分けたものとして学習していないだろうか。 https://t.co/EEFSIceecz

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