著者
崔 相
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-24, 1963-05-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1) 水槽内においては稚貝が最もよく動き回り, 成貝, 老成貝の順に動き方が弱くなるが, 特に老成貝は移動力が乏しい。2) アサリの移動運動は, 1.足を前方へのばし, その収縮, 伸長のくり返えしによる前進運動, 2.足を横または後方へ出し, のばした足を支点として体を押し出す, 3.方法2の飛躍形であって, 瞬間的に殻長の2~3倍の前進を行なう等の3方法がみられる。方法1は各大きさの貝でみられる最も一般的な動き方であり, 方法2, 3は主に稚貝, 幼貝においてみられ, 老成貝においては方法3による動き方は全くみられない。3) 天然漁場においても成貝と比べて幼貝の移動が活発であり, 幼貝の30日間における移動距離は砂質地帯 (生息環境が良好でない場所) では4.8~5.7m, 砂れき質地帯 (生息環境が比較的良好な場所) では, 1.4~1.5mであった。4) アサリは自力によって遠距離の移動を行なうとは思えない。しかし, 風波, 潮流など他動的な要因により, かなり広範囲の移動が行なわれることが想像される。5) アサリの土砂の堆積に対する抵抗性は弱い。砂に埋没されたアサリの浮上の難易は, 貝の大きさ, 埋没深度と密接な関係がある。6) 10cm埋没では底生初期稚貝と老成貝には斃死がなかったが, その他の貝では3~18%の斃死がみられ, 15cm埋没では, 貝の大きさに関係なく37~50%の斃死がみられ, 20cm埋没では稚貝, 幼貝, 成貝で63~97%が斃死し, 老成見では70~100%の斃死がみられた。7) 表層までの浮上時間は10cm埋没では幼貝, 成貝が5~9時間, 老成貝が12時間を要し, 15cm埋没では, 幼貝, 成貝が11~12時間, 老成貝が15時間以上を要し, 20cm埋没では幼貝, 成貝でさえ17~20時間を要した。8) 陸性浮泥を用いて, 殻長10~15mmのアサリを3, 6, 9, 12cmの深さに埋没した結果では, いずれの深さにおいても約2週間にわたってアサリには障害がみられなかった。

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@gessi_tori2 こんにちは。新生姜、次見かけたらやってみます!! アサリを例に歩き方を記述している論文です。二枚貝が斧足綱(類)と呼ばれるように、斧のような足で歩く種類がいます。 写真や解剖図有はちょっと見当たりませんでした。もし今後見かけたら教えてもらえると嬉しいです。 https://t.co/MIIIGBvqCr
「アサリの移動について」という論文。 上に乗せられる砂が20cm以上だと、少なくないアサリ(大きさによって異なるけど)が死ぬ、という結論。 https://t.co/RCOs99mCCt
@pocky_oolong アサリ普通に歩いて移動でした……人間を貝に例えたばかりか確認を怠って誤った見解を述べたこと、謹んでお詫び申し上げます…… https://t.co/3BM6epzv5J

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