著者
小塩 真司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.165-183, 2023-03-30 (Released:2023-11-11)
参考文献数
75

日本では,非認知スキルや社会情動的スキルと同様の心理的特徴の集合を「非認知能力」と呼ぶことが多い。本論文では,非認知能力について基本的な考え方を概観し,心理測定や応用可能性を含む多様な観点から問題点を論じた。非認知能力は4つの観点から概念的に定義された。まず非認知能力が認知的能力以外の多様な心理学的な特徴を含むという概念設定上の定義が確認された。続いて非認知能力の定義として測定可能性,予測可能性,介入可能性の3点が整理された。測定可能性については,信頼性と妥当性の問題,因子分析モデル,そして近年のスキルについての研究動向の問題点から論じられた。予測可能性については,帯域幅と忠実度のジレンマの観点から予測力の大きさの問題,そして社会的な結果指標の問題が論じられた。介入可能性については,介入を行う観点や立場の問題や,変化の対象となった心理特性に関連する別の心理特性の変容の可能性の問題が論じられた。以上の論点を踏まえ,今後さらに検討すべき問題が整理された。

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小塩真司先生の展望論文。勉強させていただきます。 J-STAGE Articles - 「非認知能力」の諸問題 https://t.co/6Ba5jllqLe
望ましい結果を予測する心理的な特徴は「良いもの」と一律に捉えられがちであるが、そこでは誰が主体となって判断しているのかという視点をもつことが重要である。p. 173 小塩真司. (2023). 「非認知能力」の諸問題. 教育心理学年報, 62, 165–183. https://t.co/nFcF8yEVMk
教心年報の記事が公開されました。書くのが辛くて体調悪くなったりしましたが、査読していただいた先生に感謝です。 「非認知能力」の諸問題―測定・予測・介入の観点から― 小塩 真司 https://t.co/1jSc1KGMdY

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