著者
谷 卓生
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.46-58, 2020 (Released:2020-02-20)

現在、ビジネスや教育、エンタテインメントなどさまざまな分野で活用が始まっている最先端技術、Virtual Reality(VR=バーチャルリアリティー)。その訳語として定着しているのが、「仮想現実」である。しかし、この訳語、特にvirtualの訳語としての「仮想」は、VR研究者などから“あまり適切ではない”という指摘がずっと続いている。VRが生みだす世界と「現実」の境目が溶けてきたような技術の進展を前にして、「“仮想”現実」という訳語には、筆者もとても違和感を覚える。そこで、本稿では、どうしてこのような訳語になったのかを調査した。VRという造語が米国で生まれたのは1989年だが、それ以前から、virtualは、「仮想」と訳されることがあった。それは、日本IBMが、1972年に当時の最新技術であるvirtual storageを「仮想記憶装置」という訳語で販売したことが大きかったとされる。さらに遡って、明治時代に西洋から入ってきた学術用語の中にあったvirtualという新しい概念を、当時の物理学者たちが、たとえvirtualの原義とずれたとしても、「仮に」や「虚」、そして「仮想」と“意訳”したことが“原点”にあったことが見えてきた。virtualの訳語の歴史をたどり、その意味を考えることを通して、今後の社会を大きく変えうるVRの本質を考察した。

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谷卓生「VR=バーチャルリアリティーは,“仮想”現実 ~“virtual”の訳語からVR の本質を考える~」 https://t.co/tKyBEibKhz
日本のバーチャルリアリティーは龍安寺の石庭らしい。ヘッドマウントディスプレイがなくとも、枯山水から山や海を感じることができる。 「仮」山水。 https://t.co/JzDmxI8HY7
https://t.co/VED0ku9K5O Virtualの訳語を考察した、「VR=バーチャルリアリティーは、“仮想”現実か」の全文、J-STAGEでも公開されています。ぜひご覧ください! #VRの訳語 #仮想現実

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