- 著者
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牛見 真博
- 出版者
- 日本道徳教育学会
- 雑誌
- 道徳と教育 (ISSN:02887797)
- 巻号頁・発行日
- vol.336, pp.53, 2018 (Released:2020-08-01)
幕末の吉田松陰(1830-1859)は「狂」の思想を重んじた。「狂」は、もとは孔子が説いた儒家の概念で、志が高く進取の気性を有することを言い、孔子の後継者を自任する孟子も好んで用いている。松陰は、「狂」を原動力として、目の前の国難に対し、天子や藩主への忠誠心、愛国心を重んじ、徹底的なナショナリズムを貫こうとした。そして、この「狂」によって、最終的には自身が重んじ、儒家の最も基本的な道徳観の一つである「孝」までも否定するに至っている。本稿は、そうした松陰の原動力である「狂」の思想と実践について、彼が兵学者として社会に立脚していたことに基づくものであることを指摘する。また、松陰の「狂」を考えることは、一般的な道徳的イメージだけでは捉えきれない松陰の人物像の一端を浮かび上がらせることにもつながるであろう。