著者
羽田 貴史
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.7-28, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

日本の高等教育研究は,日本高等教育学会及び大学教育学会創設後20年を経て,制度化が確定にしたかに見えるが,その学問的基盤は,他の学問分野と比べて劣弱である。特に,研究者の訓練を行う大学院が4つしかないこと,育成された高等教育研究者の就職市場が,高等教育政策・行政に関する政府関係組織や,大学教育センターなど大学の実務的組織であることは,基礎・開発・応用のバランスをもった高等教育研究の深化・発展を制約し,利益相反関係など複雑な問題を高等教育研究に投げかけている。 高等教育研究の分化は,個人の発達過程において大学生をとらえる視点を弱め,社会を構成するサブシステムである高等教育システムを,初等中等教育や職業・資格との関係で捉えることを困難にする。 さらに,学会成立の以前から,高等教育研究には,〈好奇心駆動型〉の基礎研究志向より,大学改革の役に立つ〈使命達成型〉研究志向が強かった。 教育学は,国民教育制度のための性格が強いが,高等教育研究で前提とされる改革とは,政府の策定する政策に基づく改革を意味しがちである。 その結果,大学や大学人が主体的・自主的に構想し推進する改革を視野に入れず,政府の政策を大学執行部が具体化することを「改革」と呼ぶ風潮が生まれてきた。そして,大学教員ではなく,大学執行部による教育マネジメントを根拠づけるために,データによる客観的な研究発表ではなく,結論に合わせた都合の良い研究すら見られる。

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[高等教育研究][教育社会学] 羽田 貴史(2019)分化と統合

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