- 著者
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矢野 眞和
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.90, pp.65-81, 2012-06-15 (Released:2013-06-17)
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
-
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本稿では,「政策」という補助線を設けることによって,学力と責任の関係を考察する。はじめに,学力政策の基本的枠組みに基づいて,学力政策の特質を二つ指摘し,この特質と責任の関係を述べた。一つに,学力は,生徒と教師の相互行為から生産される共同生産物であり,製品のような製造物責任を問うことが難しい。いま一つの特質として,教育に投入される資源の性質に着目する必要があり,法的責任とは別に教育費の経済的責任が重要になる。
第二に,学力の生産関数を測定する困難性を整理した。この困難に早急な解決を図ろうとする政治勢力が重なると「もっともらしいけれども,危うい」政治ショーが起きやすくなる。
第三に,困難な学力問題を広く理解するためには,国民の意識ないし世論の動きを視野に入れる必要性があることを指摘し,私たちが実施した「教育と社会保障の意識調査」結果を報告した。わが国の生涯政策への関心・選好・税負担の意識には,強いシルバーポリティクス(年齢格差)が働いており,教育政策への関心は二次的,三次的な優先順位になっている。「教育劣位社会」とでもいうべき日本の現状を明らかにした。
最後に,わが国の生涯政策の経済的責任がねじれていることを踏まえて,学力政策とトータルの教育政策を議論する一つの道筋を提示した。