著者
古賀 正義
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.47-67, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

高校中退者がワーキングプアになりやすいことは,多くの研究が実証するところである。排除型社会が進展する今日の日本社会では,中退者が社会参加していく包摂の道筋は容易でなく,将来への「液状不安」を訴える事例さえ存在する。そこで,都立高校中退者の退学後の移行に焦点化した悉皆調査を実施した。 その結果によると,①中退理由の中心には,学校ハビトゥスとしての「生活リズム」の乱れがあげられ,自己の未達成による中退という理解が強い。②ひとり親家庭が多く,かつ就学の相談・援助的行動や文化資本が欠如している者が多い。③中退後に何らかの学習・就学活動に向かう者は半数におよび,学校に復帰した者も3割に達する。他方,非正規の単純労働となりやすい就労行動を8割以上の者が経験している。移行を模索する期間が2年ほどを経て平均6か月もある。④しかしながら,高校タイプによって違いがあるが,概して学習指向が減退し就労指向が急速に強まる。⑤リスクへの一定の不安はあるものの,全体に支援機関の利用度は非常に低く,直接的な経済的援助・無償による学習や職能開発などの支援を求めている。 以上,在学した高校や家庭等の資源や経験知に依拠した中退者の進路選択が行われやすいものの,それを活動に移すための「ケイパビリティ」(将来的な移行可能性への媒介となる環境)が重要になるとみられる。相談・支援できる他者との関係づくりを介して選択のチャンスを活かせる環境作りが求められる。

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