著者
小倉 健太郎
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.5-26, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
19

日本のアニメを論じる際に、しばしば強調されてきたのが平面性だ。アニメの平面性を強調する議論は枚挙にいとまがない。こうした議論では、アニメの平面性はときに日本の伝統美術と結び付けられ、日本固有の性質とされる。日本文化研究者のトーマス・ラマールはこうした議論と距離を置きながらも、やはりアニメの平面性に着目している。彼はセル・アニメーション制作に用いられる撮影台に特有の多平面を層状に合成する構造を「アニメ・マシーン」とし、アニメ・マシーンによって生み出される運動を「アニメティズム」としている。アニメティズムという概念は、とりわけ美学的にアニメを分析する際にはしばしば言及される概念となっている。しかし、彼がアニメティズムの例として挙げる大友克洋監督の『スチームボーイ』(2004)は、じつのところアニメ・マシーンとは異なる構造によって生み出されている。こうした構造の先行例としてはフライシャー・スタジオが用いた回転式撮影台を挙げることができる。本論は、回転式撮影台の構造が作り出す独自の映像をフライシャー的空間と定義し、それが日本のアニメにも現れていると主張する。フライシャー的空間は、アニメ・マシーンという議論に欠けているものを浮き彫りにする。平面性に囚われないアニメの可能性がそこには表れているのだ。

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@Takagi_Hajime https://t.co/0ypO99uk0u この研究書が詳しいです! https://t.co/5u6zUVLgq9 また、この撮影台の効果を詳しく論じている論文がこちらです。
小倉健太郎「アニメ・マシーンとしてのフライシャーの回転式撮影台」『映像学』105巻、2021 年1月。https://t.co/Zua80y8A6D
J-STAGE Articles - アニメ・マシーンとしてのフライシャーの回転式撮影台 https://t.co/eM42FQ7lMT
と思って調べてみたら、よさげな論文をみっけた。後で読もう。 https://t.co/cx1ik8H0os

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