著者
趙 瑞
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.5-17, 2022-02-25 (Released:2022-03-31)
参考文献数
3

映像表現におけるリアリティの問題は、古くて新しい問題である。1895年にリュミエール兄弟によって『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)が上映された際、観客は驚いて映画館から逃げたという有名な逸話がある。これは写実性が現実の列車と結びつき、観客に映像のリアリティが伝達された結果であるといえる。しかし今日のリアリティの問題は、コンピュータグラフィックス技術により現実世界を再構築することから、非現実的な「虚構の写実」、「作家によって作られた写実」を追及することへとその軸が移っており、そこから先端映像技術や作家の創作意識を含めた、さまざまな検討すべき課題が新たに生まれている。本論文では、アニメーションにおけるリアリズムのアプローチについて、ダイナミクスアニメーション技術の応用とその表現力の視点から考察し、さらにアンドレ・バザンの映画理論を確認することで検討を行う。具体的には、アニメーションにおけるリアリズムの考え方について、ディズニーが1994年と2019年にそれぞれ制作した『ライオン・キング』を比較し、その問題を分析する。さらに、実験アニメーション作品『Ugly』(2017年)を取り上げ、作家の創作活動を確認していく。本論文の目的は、アニメーションにおけるコンピュータグラフィックス技術とその表現を考察することによって、アニメーション表現の変容を明らかにし、今後の創作活動の方向性を示すことである。

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趙瑞「三次元コンピュータグラフィックスアニメーションの表現力――技術と表現についての考察」『映像学』107巻、2022 年2月。 https://t.co/I0A3VHnmN7

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