- 著者
-
半澤 誠司
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO (ISSN:18808107)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.296-311, 2018 (Released:2018-05-31)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
-
2
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本論文では,2020年東京五輪開催によって何が実現されようとしているのかを検討するための準備として,2016年のリオデジャネイロ五輪と2014年のサッカーワールドカップという二つのメガイベントを短期間に開催したリオデジャネイロ市で行われた都市開発について,文献と補完的な現地調査に基づき分析する.オリンピック関連投資資金の調達と使途に関しては,一部の民間企業への利益誘導のかたちで多額の公的資金が,オリンピックの主要地区であり住民に貧困層が少ないバーハ・ダ・チジューカに集中投下されていた.この投資による受益層が限られる一方,多数の貧困層がファベーラから追い出され,そうではないほとんどの住民も少なからず犠牲を強いられた.このような事態は,メガイベントを開催したからこそ引き起こされたというよりも,強度と範囲共に巨大な影響を各所に及ぼすメガイベントによって,既存の政治・経済力学が極端なかたちで露呈したものといえる.