著者
野中 崇司 勝浦 保宏 杉山 浩通 宮城 文敬
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.132, no.4, pp.237-243, 2008 (Released:2008-10-14)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

オルベスコ®インヘラーは新規のプロドラッグ型ステロイドであるシクレソニドを主薬とする定量噴霧式エアゾール剤(pMDI)であり,本邦では初めての1日1回の用法による成人の吸入ステロイドとして承認された.本稿ではシクレソニドの非臨床成績および臨床成績について概説する.シクレソニドは肺に吸入された後,組織のエステラーゼによって活性代謝物である脱イソブチリル体(desisobutyryl-ciclesonide:des-CIC)へと変換される.des-CICは強力かつ特異的にグルココルチコイド受容体に結合し,既存薬に匹敵する抗炎症作用を有することがin vitroおよびin vivoの非臨床薬理試験で示されている.さらにシクレソニドの作用は持続的であることが肺細胞を用いた検討で示されており,そのメカニズムとして細胞内滞留性を有する脂肪酸抱合体の形成による可逆的な代謝経路の関与が示唆された.オルベスコ®インヘラーは完全溶解型の製剤であるために,デバイスから噴射されるエアロゾルは1μm程度の微細粒子の割合が高く,末梢気道まで効率よく到達する.そのため,本剤の効果は末梢気道にまで及ぶと考えられる.その一方で,薬剤の口腔沈着率が低いことからカンジダ症や嗄声などの局所副作用の低減が期待される.また,シクレソニドはdes-CICとしての消化管からの生物学的利用率が低いこと,全身循環に移行した場合においてもタンパク結合率が高いために遊離型薬物濃度が低いこと,さらに肝臓で速やかに代謝不活性化されることなどの特性により,全身性副作用の軽減も期待できる薬剤である.これらの特性に基づいて国内外で臨床試験を実施した結果,1日1回の用法で喘息患者の呼吸機能,症状,QOLが改善されること,および長期の安全性に問題がないことが確認された.現在,吸入ステロイドは国内外で喘息の薬物治療の第一選択薬とされているが,本邦ではその普及率は未だに低いのが現状である.オルベスコ®インヘラーが新たな吸入ステロイド薬の治療選択肢を提供し,吸入ステロイド治療の定着と喘息患者のQOL向上に寄与することを期待する.

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脱イソブチリル体は,強力かつ特異的にグルココルチコイド受容体に結合し複合体を形成.複合体は核内に移行後,DNAのGREに結合し標的遺伝子の転写活性を調節する他,各種炎症性メディエーターやサイトカイン産生に関わるAP -1やNF -κBなどの転写因子の働きを抑え炎症を制御 https://t.co/ZgGpXmG0sL
吸入ステロイド喘息治療薬シクレソニド (ciclesonide:オルベスコ®インヘラー)の薬理学的特徴と臨床効果 https://t.co/ZgGpXmG0sL
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@ImamuraTakashi ストレスやうつに関わるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、HPA axis(視床下部-下垂体-副腎系)もあやしいなと思いましたが 影響なしとされています https://t.co/7q2mh3wQlJ
J-STAGE Articles - 吸入ステロイド喘息治療薬シクレソニド(ciclesonide:オルベスコ<sub>&reg;</sub>インヘラー)の薬理学的特徴と臨床効果 https://t.co/oh02cdTxli

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