著者
石井 暢也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.1, pp.15-21, 2013 (Released:2013-01-10)
参考文献数
47
被引用文献数
3 3

細胞増殖やアポトーシス抑制などに係わるmitogen activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達経路の一つであるRAS-RAF-MEK-ERKシグナル伝達経路は,がん細胞において様々なメカニズムにより高頻度に活性化されることが知られており,以前より抗がん薬開発の標的分子として研究されてきた.これまでにいくつかのこのシグナル経路の阻害薬の臨床開発が試みられてきたが,いずれも明確な有効性を確認するには至らなかった.近年,いくつかのより選択性の高いATP拮抗型RAF阻害薬や非ATP拮抗型MEK阻害薬(アロステリック型MEK阻害薬)が創出されると同時に,活性型BRAF変異または一部の活性型RAS変異を有するメラノーマ等の腫瘍細胞がRAS-RAF-MEK-ERKシグナルに対する依存度が大きいことが見出されてきた.その結果,RAF阻害薬やMEK阻害薬が活性型BRAF変異または一部の活性型RAS変異を有するメラノーマに対して顕著な抗腫瘍効果を示すことが確認されている.現在,RAF阻害薬やMEK阻害薬の活性型BRAF変異や活性型RAS変異を有するメラノーマ以外の腫瘍に対する臨床効果が評価中であり,今後の適応拡大が期待される.さらに,腫瘍細胞内でRAS-RAF-MEK-ERKシグナル以外のシグナル伝達・機能を同時に抑制することによりさらに強い抗腫瘍効果を得るため,あるいは別のシグナルの活性化によりRAF阻害薬やMEK阻害薬に対して耐性となった腫瘍の増殖を抑制するために,種々の薬剤とRAF阻害薬あるいはMEK阻害薬との併用効果についても臨床効果が評価中である.このように,RAF阻害薬やMEK阻害薬などのMAPK経路阻害薬は今後のがん治療の中の大きな役割を担うと期待される.

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