- 著者
-
内山 朋規
岩澤 誠一郎
- 出版者
- 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
- 雑誌
- 現代ファイナンス (ISSN:24334464)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, pp.61-86, 2012-03-31 (Released:2018-12-07)
- 参考文献数
- 41
人々には,右裾が厚く左裾が薄いリターン分布を持つ,宝くじのような証券を好む傾向があるとされる.このような証券は割高で期待リターンが低くなるという累積プロスペクト理論による示唆に基づき,分布の歪みを表す二つの尺度を用いて,株価リターンと投資家行動に関する実証を行う.まず,分布の歪みによって翌月の平均リターンはクロスセクションで異なり,宝くじのような証券ほど,平均的に将来のリターンが低いことを示す.この差は,期待効用理論による示唆とは整合せず,リスクプレミアムとして解釈することも難しい.次に,洗練されていない投資家は,宝くじのような証券を多く保有する傾向があり,さらには,このような証券を割高な水準にまで買い上げるという見方に整合的な結果も示す.本稿の実証結果は,累積プロスペクト理論の示唆する投資家行動がわが国株式市場で実際に存在し,株価形成に影響を及ぼしていることの証拠を提示するものである.