著者
吉田 和彦
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.67-91, 2023 (Released:2023-08-19)
参考文献数
44

古代アナトリアにおいて楔形文字粘土板に記録されたヒッタイト語の音韻特徴として,子音の長さの対立は閉鎖音,摩擦音,共鳴音,喉音においてみられるが,破擦音については対立がないと従来考えられてきた。しかしながら,文献学の立場から古期,中期,後期ヒッタイト語という厳密な時代区分を行ったうえで分析すると,古期ヒッタイト語において母音間のシングルの-z-がアナトリア祖語の*dに遡る例があることが分かった。他方,シングルの-z-が*tを反映している例はない。この知見は,アナトリア祖語の*tiは*tsiになる一方,*diは*dziになるという音変化を示している。そして無声の破擦音はダブルの-zz-で書かれ,有声の破擦音は-z-で書かれる。子音の有声無声という特徴が閉鎖時間の長さと相関することはよく知られている。したがって,古期ヒッタイト語では破擦音にみられる子音の長さの対立がなお存続していたことが分かる。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (8 users, 8 posts, 8 favorites)

PDFあり。 ⇒吉田 和彦 「ヒッタイト語楔形文字粘土板から導き出される新たな音韻特徴――破擦音の長短の対立――」 『言語研究』164 (2023) https://t.co/MBLzdNr5H3

収集済み URL リスト