- 著者
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鹿島 薫
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.7, pp.383-403, 1986-07-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 67
- 被引用文献数
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本研究では,沖積層中の珪藻遺骸群集を指標として,沖積平野や海岸平野における沖積層の堆積過程と,完新世における古地理の変遷を考察した. 珪藻遺骸群集の消長によって表現される「海進」や「海退」現象は,塩分の変化や水深の変化,さらに異地性の珪藻殻の混入状態の変化などによっており,これらは海水準の変動のほか,砂州の形成と消失,河口の移動や埋積速度の変化などの要因によっても影響を受けている.また,珪藻遺骸群集の推移から直接過去の海水準高度が推定できるのは,「海進」の初期や「海退」に伴い陸域となる直前に干潟域に生息するMd 1種群の優占する層準が出現する場合と,「海退」過程において淡水域となるのと同時に泥炭地の形成が始まる場合に限られた.さらに,大規模な河口平野など背後からの土砂供給の多い地域と,小規模な谷底平野など土砂供給の少ない地域では「海進」や「海退」の現われ方に大きな差があることがわかった.