- 著者
-
平井 松午
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.7, pp.447-471, 1991-07-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 40
- 被引用文献数
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開拓期における北海道移民の「流動性」に関するこれまでの研究は,統計分析かもしくは特定地区についての属地的分析に依拠してきたために,移住者の移動の規模やパターンについてはほとんど把握されていない.そこで本研究では,近年,北海道の農村地域で刊行が進みつつあり,在住世帯ごとに出身地,移住(渡道)年,入植地,分家年などを掲載した『地区誌』を利用することによって,出身地から定着地に至るまでの移住者の一連の移動行動と定着状況について考察した. 対象とした地区は全道22地区,世帯数は1,303戸である.このうち, 706戸は内地府県から北海道に移住したことが明らかな「入植世帯」, 442戸は「分家」であろた.分析の結果,第二次世界大戦前に対象地区に定着した入植世帯の約2/3は移住後道内で再移動を経験しており,この点で北海道移民は流動的であったといえる.しかしながら,移動経験世帯の約2/3は1回の移動で定着しており,再移動の大半が同一市町村内もしくは近隣市町村間の近距離移動であった.また, 22地区の中には同一府県出身者の占める割合がとくに高い地区がいくつかあり,こうした地区では道内移動を経験した入植世帯の割合が低く,同郷からの後続移民が次第に集積したものと考えられる.