- 著者
-
伊賀 聖屋
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.4, pp.150-178, 2008-05-01 (Released:2010-07-01)
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
-
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7
近年, 新たな食料供給のあり方としてショートフードサプライチェーン (SFSC) が注目を集めている. その主な特徴は, 主体間の近接性や独自の価格形成・保証方式にある. 本稿では, ローカルな場面で酒造業者A・B社が酒米生産者と結ぶ提携関係をSFSCと位置づけ, その形成過程とそれが個々の主体に及ぼす影響を考察した. その結果, 以下の点が明らかとなった. (1) A・B社と酒米生産者の提携関係は, そこでの「個人間の相互作用」と「密な情報交換」に対する各主体の期待が合致することで生み出された. (2) その形成過程では, 主体の積極的働き掛けのほか, 自然食品のネットワークや生産地域内の近隣関係が各主体の思惑を結びつける機能を果たしていた. (3) 提携が主体に及ぼす影響としては, 信頼関係の醸成, ネットワークの進化, 酒造業者による経済的支援, 市場競争力の強化, 生産調達リスクの増加が挙げられ, これら作用をいかに活用ないし克服するかが提携の存立に向けた鍵といえる.