- 著者
-
鈴木 匡子
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.216-221, 2009-06-30 (Released:2010-07-01)
- 参考文献数
- 10
患者の症状をみる臨床の技の基本は,観察から発症機序に関する仮説を立て,それをさらなる観察により検証していくということである。それに加えて,神経機能画像や神経生理学的検査の所見を得て,神経科学的知見を統合することにより,ヒトの高次脳機能の神経基盤について洞察を深めることができる。失認症の場合も系統的な診察を進めることにより,的確な診断に至ることができる。失認症は「1 つの感覚様式を通してのみ対象が認知できない」ことであり,他の感覚様式を使えば対象を容易に認知できる。この定義に基づいて失認症であることの確認をし,次に失認症の特徴を検討する。類似の症候の鑑別をするためには,常に障害の質的な面に注意を払い,一人一人の患者において障害の本質を見極める努力をすることが重要である。