著者
宇野 彰
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.170-176, 2016-06-30 (Released:2017-07-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

発達性読み書き障害 (Developmental Dyslexia: DD) は, 直訳すると発達性読み障害だが後天性のdyslexia とは異なり, 読めなければ書けないので, 発達性読み書き障害と翻訳されることが多い。DD は, (知能や) 年齢から推定される読み書きの習得度と乖離がある低さが認められ, 環境要因では説明ができない障害である。すなわち, 診断評価としては, 知能検査, 読み書きの学習到達度, および文字習得にかかわる認知能力の3 種類が必要となる。出現頻度は言語の種類によって影響され, 「読み」に関しては文字列から音韻列への変換の規則性が不規則な英語では出現頻度が高いと考えられる。すなわち, 同じ能力であってもどの言語を用いるかによって, 読み書きに関する習得度が変化することになる。DD の生物学的な原因としては, 異所性灰白質や小脳回などが観察されていることから, 細胞遊走の異常が仮説としては有力である。これら生物学的原因によって, 音韻, 視覚認知, 自動化, などの認知障害が生じ文字習得に困難さを生じると考えられる。訓練法については, 日本語では症例シリーズ研究法により科学的根拠にもとづいた効果のある方法が2 種報告されている。

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