著者
櫻井 義秀
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-19, 2004-06-18 (Released:2009-11-16)
参考文献数
33
被引用文献数
1

1995年のオウム真理教事件以降,カルト問題が初めて日本の主要な社会問題になったが,新世紀に入り,アフガン戦争,2002年の北朝鮮による拉致問題,2003年のイラク戦争という大事件が相次ぎ,カルト問題はメディア報道から消えた。しかし,カルト問題の当事者(加害者としての教団,被害者としての信者や一般市民)や研究者にとってこの問題は終わっていない。カルト問題の多面性・複雑性は,まだ理論的にも十分検討されていない。本稿では,カルトという用語の由来と用法を歴史的に概観し,次いで,ミクロ,メゾ,マクロの社会領域ごとのカルト論を批判的に検討した上で,新たな課題を発見したい。ミクロレベルでは,1)宗教社会学の入信・回心・脱会論と,2)反カルト運動が展開する洗脳,マインド・コントロール論の論争を分析する。メゾレベルでは,1)世俗社会と激しく葛藤するカルト運動がどのように組織論として位置づけられるかをみたうえで,2)反カルト運動によりカルトの実体化が進められたという構築主義的な分析を検討する。マクロレベルでは,1)異文化の流入を阻止するために自文化を再活性化しようとしたカーゴ・カルト運動と,2)グローバリズムの中で文化が相対化・多元化してくることに抗う一つの文化ナショナリズムとして反カルト運動があるという議論を批判的に検討する。今後の課題としては,カルト問題を通して明確化される社会秩序や公共性の構築という議論を提示したい。

言及状況

外部データベース (DOI)

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ネットで調べるならもっと高尚な宗教社会学の論文を引かれては如何なものか、と。 (なかなか定義は学者でも定まらない) ちなみにフランスでもカルト(仏語でいうセクト)宗教団体を定義するのはやめたんですよ(カルト的行為、に着目して相談窓口を開いてる) https://t.co/AR29QerkPE https://t.co/zrzmLgo2M9
幾つか文献を読んだ限りだと反カルト法はどの国も方針が異なっており、研究者らの中でもフランスの反セクト法を文化ナショナリズムの一環とする意見が少なくないようだ。ハッキリ言って庶民の浅知恵では特高警察の二の舞にしかならなそうなので、やはり顕学の議論を待ちたい。https://t.co/Sdt1CIPBPm
https://t.co/2aWHjQNEzr
こっちの方がいいな。 https://t.co/59IE9dHS5g
非伝統的な宗教を論じるにはどういうアプローチがあるか、というお話。枠組み作りは結構むずいらしい。 #今日の論文 『カルト論の現代的射程』 現代社会学研究 Vol. 17 (2004) P 1-19 https://t.co/3EoIIEyj21

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編集者: Was a bee
2014-08-29 23:06:40 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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