著者
亘 悠哉 永井 弓子 山田 文雄 迫田 拓 倉石 武 阿部 愼太郎 里村 兆美
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.28-35, 2007-05-31 (Released:2018-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

2000年5月から2006年11月までの間に、奄美大島の森林で採集した135個のイヌの糞の内容物分析を行った。出現頻度では、アマミノクロウサギが45.2%、アマミトゲネズミが23.7%、ケナガネズミが20.0%と高い値を示し、これらの種がイヌの影響を最も受けやすい種であると考えられた。これらの種は特別天然記念物および天然記念物に指定されており、イヌ対策の重要性はきわめて高いといえる。奄美大島では現在までに森林でのイヌの繁殖は確認されていない。この理由として、奄美大島では、大型の餌動物が少なく、繁殖に十分な餌資源を得られないことが考えられた。一方で毎年多数のイヌが人間の管理下を離れている。このような状況は、ペット管理のモラルが森林のイヌの個体数、ひいては在来種への影響を大きく左右することを示唆している。これを受けて、本論文ではイヌ対策における方策を以下に提言する。1)長期的な方策:森林へのイヌの供給を絶つための方策。ペットや猟犬の管理に関わる現行法や罰則の周知、適切な法の運用、飼い主のモラル向上のための普及啓発の推進などが強く望まれる。これらは森林のイヌを減少させる根本的な解決策であり、最も優先順位の高い方策である。2)短期的な方策:すでに森林に生息するイヌに対する方策。イヌや糞などの目撃情報の提供先の明確化、情報提供後のすみやかな捕獲が可能なシステム作りが重要である。

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