著者
遠藤 久夫
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.7-19, 1999-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
15

マネジドケアの統一した定義は存在しないが,基本的な構造は次の通りである。1)医師-保険者関係:[1] 医療の標準化とモニタリングとインセンティブによる医療への介入,[2]医師・病院のネットワーク化,2)患者-保険者関係:[1] 患者の医療機関選択の制限,[2]患者(保険加入者)の組織化。マネジドケアとは,これらの仕掛けを通じて,医療システムに見られる2種類の非効率性([1]医療需要が社会的に過剰になる非効率,[2] 医療資源を空間的,時間的に最適配分できない非効率)を改善させる制度的イノベーションである。アメリカのマネジドケアのパフォーマンスを見ると,[1] 入院率の低下,[2] 入院期間の低下,[3] 高額な治療や検査の抑制,[4] 予防サービスの増加,[5] 医療の質に対する満足度の低下,[6] 費用に対する満足度の増加,という傾向が見られる。一方,[1] 医療の質の低下,[2] 高リスク者の排除,[3] 良好な医師-患者関係の崩壊という問題点も指摘されている。マネジドケアの概念と手法をわが国の公的医療保険制度に導入することを考える際,[1] エビデンス・べースの標準化を行うための診療情報とコスト情報を有機的に結ぶ情報インフラの整備[2]「標準」のコンセンサス形成のためのシステム作り,[3] 保険者が患者の利益の代理人として行動するための制度的担保の確立,が必要である。これらの課題が解決されないまま拙速な導入が行われれば,マネジドケアの副作用の方が主作用を上回ることも懸念される。

言及状況

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