- 著者
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樋口 輝彦
- 出版者
- 一般社団法人 国立医療学会
- 雑誌
- 医療 (ISSN:00211699)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.13-18, 2001-02-20 (Released:2011-10-07)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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抗うつ薬の歴史は約半世紀である. その出発点となったイミプラミンはまったくの偶然に発見されたものである. うつ病の病因, 病態は不明のまま, 治療薬が先に生まれたことになる. 抗うつ薬の作用機序を解明することで, うつ病の病因に迫ろうとする試みが続けられ, いくつかの有力な仮説が生まれた. 中でもモノアミン仮説, 受容体感受性亢進仮説が有名である. 新規抗うつ薬の開発はこれらの仮説をもとに進められてきた. 初期はもっぱらモノアミン仮説が注目され, 前シナプスでのモノアミン再取り込み阻害作用のある薬物が開発された. 1980年以降は受容体への作用にも関心が持たれたものの, 直接受容体に作用する抗うつ薬は四環系抗うつ薬の一部のみであった. モノアミンの中でもとりわけセロトニンとノルアドレナリンが注目され, このいずれが主役なのかに関心が集まった. SSRIの登場でひとまず, セロトニンの役割が認知されたことになる.