- 著者
-
児玉 聡
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理 (ISSN:13434063)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.4-11, 2021-09-28 (Released:2022-08-01)
- 参考文献数
- 16
COVID-19(新型コロナウイルス感染症) のパンデミックについて、生命倫理学が検討すべきなのはパンデミック対策の倫理性、すなわちパンデミック対策のために行われる政策や活用される科学技術の持つ倫理的・法的・社会的含意である。本稿では主に公衆衛生的な側面に議論を絞り、市民的自由の制限、公平な資源配分、予防行動の責任という三つの倫理的課題について論じる。これらは生命倫理学においてこれまでにも議論されてきた問題であるが、今回のパンデミックにおいて、改めてその重要性が浮き彫りになったものと言える。いずれも直ちに答えの出せる問題ではなく、本稿でも主に課題を説明するだけに留まるが、理論的かつ実践的な課題として今後十分な議論が必要である。今回のパンデミックを受けて我々にできることは、生命倫理学の観点からパンデミック対策を詳細に吟味することにより、この経験から少しでも多くの教訓を学び、次回以降のパンデミック対策に活かすことである。