著者
根村 直美
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.117-121, 1998-09-07 (Released:2017-04-27)
参考文献数
6

道徳哲学的にみたとき、「自己決定」とは、「いくつかの選択肢の中からーつの選択肢を他人の強制によらずに選ぶ」ことを意味する。とすれば、純粋に「自己決定」による中絶とは、「産むことも可能であるが、あえて産まないことを選ぶ」ということになる。このような意味での中絶と「避けることのできないやむをえざる決定」としての中絶は明確に区別されなければならない。ところで、純粋な意味での女性の「自己決定」の権利が常に胎児の「生きる」権利に優越するということは自明ではない。女性の「自己決定権」は母体外で生存可能な胎児の生死を決定する権利を含んではいない。しかし、他方、母体外で生存不可能な胎児については、母体を使用する権利、したがって、「生きる権利」を与えるのは、女性の「同意」である。本稿は、この「同意」を妊娠が単なる「可能性」ではなく「現実」になったときに与えられるべきものとして位置づけている。

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@10_6_tea @KKei78052055 @pieandc5 こんにちは。わたしもロッキーさんやK-Keiさんに同感です。しかし”胎児の生命の権利は母体たる女性の中絶する権利より下位”だとする論もありますね。胎児は母体に依存して生きている。母体が生きていなければ胎児も生きられないから。https://t.co/XynN1Z9gEF
「人工 妊娠中絶に お ける 「自己決定」 とは何か」根村 直美 On the concept of "self-determination" in abortion 生命倫理 VOL.8 NO.1 1998.9 とかあった。 https://t.co/4d4KwTlXup
https://t.co/puFAv83eul
妊娠した女性が難しい選択を迫られる時、その選択の自由は完全でない。避妊や子育て環境という他者要員による困難な事態は社会の責任であり、選択は社会から委託された権利と言うべきではないだろうか。命を絶つという重い決断を女性の権利/責任に帰すべきとは思えない。 https://t.co/R143zGJXwP

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