著者
中東 靖恵
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.72-87, 2011-03-31 (Released:2017-05-01)

日本国内では,戦後,全国共通語化をはじめとする言語変化が顕著となったが,日本から遠く離れた海外日系移民社会ではどのように日本語が継承され変容しているのか.本研究は,かつて筆者が行った広島市および山陽地方におけるアクセントの世代的地理的動態に関する一連の調査研究に基づき,パラグアイの日系社会に暮らす広島県人家族を対象に調査を行い,日本語のアクセントの継承と変容の実態と,それに関わる諸要因を明らかにするものである.本稿では,2拍名詞,3拍名詞,4拍名詞,外来語,3拍形容詞を取り上げ,アクセントの世代的動態を中心に考察を行った.調査の結果,移民1世の持つ広島方言の伝統的アクセントは,2世・3世にもよく継承されている一方で,変容も認められた.特に世代的変動が顕著である語の多くが,広島方言で見られる共通語化と同じアクセント変動であり,パラグアイ日系社会の日本語に,日本の日本語と同様な言語変化が認められることは特筆すべき事実である.1980年代以降に始まる日系移住地のインフラ整備や日本との人的交流の活発化,日本語教育環境の充実,メディアを通じての日本の日本語との日常的接触は,移住地における日本語の維持・継承と新しいアクセントの獲得に寄与したものと考えられるが,一方で,アクセントの曖昧化・アクセント型の消失傾向も認められ,この傾向は,今後,スペイン語への言語シフトとともに,進行していくと思われる.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (4 users, 4 posts, 0 favorites)

パラグアイ日系社会におけるアクセントの継承と変容 : パラグアイの広島県人家族を対象に https://t.co/CTzfe59Wjo

収集済み URL リスト