著者
辻本 昌弘
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.63-81, 2021 (Released:2021-04-12)

本稿は社会科学における生活史研究の意義と方法を明らかにするものである。生活史とは,インタビューや文書 史料などをもとに,ひとりの人物の来歴をくわしく記録したものである。本稿では,生活史研究におけるインタ ビューと解釈の特徴について検討したうえで,以下の 2 点を指摘した。①生活史研究の意義は,既成の通念を揺 さぶり新たな解釈を生みだす手がかりを提供することにある。②生活史研究の意義を実現するためには,イン タビューにおいて出来事を具体的に描写する口述─出来事の写生─を語り手から引きだすことが必要となる。 以上を踏まえて,生活史研究における聞き手のインタビュー技術をめぐる諸問題,さらにインタビューで口述さ れた内容を編集して生活史を執筆するうえでの諸問題を論じた。最後に,生活史研究は,語り手・聞き手・読み 手の言語コミュニケーションをつうじて新たな解釈を豊かに生みだすものであることを指摘した。

言及状況

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初めて「歴史」という視点で先行研究を眺めてみたのですが、東北大の辻本昌弘先生の生活史論文で書かれていた「生活史のインタビューでは語り手にそのときの感想や思いを聞くのではなく、出来事を写生する語りを聞かなくてはならない」という言葉に膝を打ちました。https://t.co/rQTzjfcdYB

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