- 著者
-
及川 輝樹
- 出版者
- Japan Association for Quaternary Research
- 雑誌
- 第四紀研究 (ISSN:04182642)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.3, pp.141-156, 2003-06-01 (Released:2009-08-21)
- 参考文献数
- 108
- 被引用文献数
-
13
21
飛騨山脈の火成活動の消長と,山脈の隆起により生産された礫層の形成時期には,よい同時性が認められる.それは,2.5~1.5Ma(Stage I)と0.8~0Ma(Stage III)における火山活動の増大と周辺堆積盆への礫層の供給の時期であり,その間の1.5~0.8Ma(Stage II)には火山活動が低調で,周辺堆積盆における礫層の堆積が停止している.このことから,飛騨山脈は,激しい火成活動を伴いながら,3Ma以降に2度大きく隆起しているといえる.既知の広域テクトニクスの解析結果と隆起モデルから,各時期の隆起メカニズムを考察する.Stage Iでは伸張から中間応力場下での地殻へのマグマの濃集と地殻の厚化によるアイソスタティックな隆起が考えられる.一方,Stage IIIでは,この地域が圧縮場に変化し,マグマの熱によって弾性的厚さが薄くなった地殻が座屈変形し隆起したモデルが考えられる.このように飛騨山脈は,大規模なマグマの貫入・定置・熱の影響と,伸張から圧縮場への広域テクトニクスの変化とが合わさって形成された山脈といえる.