- 著者
-
田熊 一敞
- 出版者
- 大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
- 雑誌
- 子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.26-33, 2021 (Released:2021-10-14)
- 参考文献数
- 33
自閉スペクトラム症(ASD)は,社会性・コミュニケーションの障害,興味の限定・反復的な常同行動を特徴とする発達障害の1つである.近年,母親の妊娠中のウイルス感染,薬物摂取やビタミン不足などによってASDの発症リスクが増大することが示され,薬物摂取に関しては,2000年代後半に「妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児のASD発症リスクが増大する」との臨床報告がなされている.本稿では,著者の研究グループがこの臨床知見に着目して作製・確立した“バルプロ酸の胎内曝露によるASDモデルマウス”において見いだした知見を中心として概説し,ASDの病態解明ならびに薬物療法の開発に向けた今後の展望と“基礎研究”の課題について考察する.