著者
近藤 武 吉田 睦子 笠原 香
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.187-192, 1976 (Released:2010-03-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高濃度のフッ素はin vitroでコリンエステラーゼ (ChE) を阻害することを確認したので, NaFによるラットChEへの影響を検討することとした。先ず2%NaF溶液をラットの体重kg当り50mgを経口投与し, 投与後1, 3, 24, 48時間ごとに屠殺し, 解剖所見, 各重量を測定するため脳, 腎, 肝, 唾液腺, 血液などの採集を行った。各臓器および血清中のフッ素濃度とChE活性値を測定したが, フッ素はフッ素電極法, ChEはEllmanのDTNB法により定量を行った。血清, 腎, 唾液腺中のフッ素濃度は投与前の対照ラットと比較し, 1時間後には約100倍にまで達したが, 漸次減じ48時間後には投与前に回復した。またChEの抑制は1~3時間後に生じたが, 時間がたつと一部の臓器ではかえて上昇がみられた。ChEの抑制は, アセチルコリンの蓄積を促進させるので, 一般には副交感神経刺激症状を呈する。今回のラットの中毒でも一部のラットに流涎, 嘔吐様の症状などの中毒所見がみられた。

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