著者
近藤 乃梨子
出版者
一般社団法人 集団力学研究所
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.321-376, 2017-12-28 (Released:2017-10-30)
参考文献数
21

過疎地域において、人口減少という問題は依然進行しているが、過疎地域を「気候や自然に恵まれた場」、「ロハスやスローライフのできる場」、「自給自足のできる場」、「子育てに適した場」として、暮らしや自己実現の観点から肯定的に捉える機運が生まれており、田園回帰志向が高まっている。過疎地域の活性化のためには、過疎地域への移住を促進するとともに、とくに若者世代、子育て世代の仕事づくりを実現することが重要である。 <br> 移住者が地域づくりの主体として、過疎地域に眠る埋もれていた地域資源をヨソモノ視点によって利活用し、「地域のなりわい」を生み出すことは、地域の価値を創造することにほかならず、過疎地域の地域づくりに新たな価値を上乗せする。この移住者による「地域のなりわい」づくりの社会的意義は計り知れない。 <br> 購入型クラウドファンディングは、過疎地域で「地域のなりわい」を起業する移住者のリスクを少しでも軽減し、金銭的負担をわけあい、心理的な応援者を獲得し、万が一失敗しても再チャレンジすることのできる簡便に導入できる資金調達の方法である。過疎地域における購入型クラウドファンディング活用の意義は、起業のための資金が調達できることにとどまらず、資金調達のためのプロジェクト終了後も、過疎地域に人とお金の流れをつくることにある。本稿では、過疎地域の移住者による購入型クラウドファンディング活用の有用性について、山口県長門市油谷向津具半島の移住者の事例を用いて、過疎地域への人とお金の流れを生み出すことを確認した。 <br> また、購入型クラウドファンディングの活用によって得られた、目標達成のために支援メンバーを事前確保したうえで、より多くの「ファン」を効率的に獲得するスキルが、新たな地域資源活用商品の販売プロモーションや都市農村交流及び移住の促進など、過疎地域に人とお金の流れを呼び込むための様々な活動に応用することができると指摘した。

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最近、マイブームのクラウドファンディング、ただお金を集めようとするのではなく、コミュニティを育んで結果として支援をして頂ける,というスタイルが健康的そう まさに社会心理学の真骨頂の分野だ!

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