- 著者
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駒津 順子
大矢 勝
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.4, pp.197-205, 2021 (Released:2021-05-07)
- 参考文献数
- 8
「洗浄における酸・塩基中和説」とは, ①汚れは酸性汚れとアルカリ性汚れに分類できる, ②酸性汚れとアルカリ性汚れは各々アルカリと酸で中和して除去できる, とする説である. その説は日本の消費者の中で広まっているが, 科学的な誤りが含まれている. そこで本研究では関連情報をインターネット上から収集して分析し, 誤情報が生まれて拡散していく過程を調べた. その結果, 酸性汚れ・アルカリ性汚れに分類する方法に問題のあること, 過度の酸性化やアルカリ化を中和と表現するなどの問題が確認できた. その情報が広まった原因は, もともと中和に関して種々の定義が存在していたことと, 酸・塩基に関連する用語を厳密に理解するのが難しいことである. 日本語の用語としての酸と酸化が混同しやすいことも関与している. 酸とアルカリの中和という表現は, 単純で分かりやすいため多くの人に受け入れられたのであろう.