著者
稲葉 ナミ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-38, 1959-04-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

1 家族数の少ない(2人家族)一般家庭の夫婦がひまで、家族数の多い(6人以上の家族)共稼ぎの夫婦が忙しいことは予想される通りであつた。2 夫の家事労働への協力をみると、平日は共稼ぎ家庭・一般家庭による差はほとんどあらわれず、休日には却つて一般家庭の夫が協力的である。共稼ぎ家庭の夫の家事労働は平日必要にせまられた半拘束的性格をおびるためであろうか。3 第1・2・3報を通して要約すると、何れの分類によつても、夫の生活時間構造には、共稼ぎ家庭・一般家庭による大きな差はないが、次の傾向がみられる。(1) 夫の家事労働については本要約2の傾向(2) 勤務時間が、共稼ぎ家庭の夫の方が長い傾向。たとえば、総平均においては17分の差であるが、子供のない家庭1時間20分、夫婦のみの家庭(家族の人数別では2人家族)1時間5分、子供がなくて家族と同居している家庭1時間56分、夫の年齢20歳代40分の差がある。これは、共稼ぎの夫は勤勉とみるべきか、家庭に帰つても妻は留守であつたり、家事労働に忙しかつたりで、家庭的くつろぎを感じることが少ないためとみるべきであろうか。(3) 共稼ぎ家庭は子供数が一般家庭の以下であり、したがつて家族数も少ない。(4) 共稼ぎの妻は平日、職業労働に家事労働が加わるので、最も忙しい生活を営み、夫達が十分の休養をとり余暇を楽しんでいる休日においても、家事労働のために相当の時間を費している。しかし、一般家庭の主婦に比べると、休日には稽々生活を楽しんでおることがうかがわれ、睡眠時間も生理的限界以下の妻はない。(5) 一般家庭の主婦は、休日のない家事労働のために平日休日共に労働時間が相当長く、夫との睡眠時間の差は共稼ぎ夫婦の差により多く、埼玉県下の共稼ぎ家庭の差に近い。このため生理的睡眠時間以下の主婦が6人以上の家族の家庭、夫が40歳代の家庭、主婦が30歳代の家庭にみられる。一般に労働時間が長くなれば、生活や生存にとつて重要度の少いものから時間が切つめられてくる.生物的生存にとつて最も重要なものは睡眠である。これが切つめられなければならないほど、労働時間が長いということは健康がおびやかされつつあることを意味する。忙しいはずの共稼ぎの妻の睡眠は生理的限界を保ち、むしろ一般家庭の主婦にこれをみたことは検討すべき問題である。ところが、内職時間をもつ一般家庭の主婦の労働時間をみると、家事労働時間が他の家庭に比べて短いことからも、主婦の家事労働に対する態度如何が、今後の問題として残されている。

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[1959年][家政学雑誌][稲葉 ナミ]

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