著者
松島 俊夫 勝田 俊郎 吉岡 史隆
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.14-24, 2015-01-20 (Released:2015-02-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

頸静脈孔と舌下神経管は頭蓋底深部に位置し, さらにその周囲の複雑な構造のため外科的に到達困難な部位の一つである. しかもそれらに腫瘍性病変が発生すると, 頭蓋内外へ進展するため, 耳鼻咽喉科医と脳神経外科医の両者で取り扱われる境界領域でもある. この領域の外科治療を行うためには, 項部筋肉や, 側頭骨, 顔面神経管, 乳様突起, 茎状突起, 後頭顆, 環椎後頭骨関節, 環椎横突起などの骨構造や, S 状静脈洞, 頸静脈球, 内頸静脈とそれらに交通する周囲の静脈網, 近傍を走行する内頸動脈, 椎骨動脈などの血管構造も十分に理解しておく必要がある. また, 顔面神経を含む脳神経の走行も重要である. 手術アプローチを選択する際には, 環椎後頭骨関節が不安定にならないための骨削除範囲の配慮も必要になってくる. それ故, 術前画像検査では, 同部腫瘍の進展範囲と周囲重要構造物との位置関係や腫瘍による骨破壊範囲をできる限り詳しく術前から読影することが重要である. 本稿では, 屍体を用いこの領域の詳細な解剖を呈示し, その上で同部の画像解剖や到達困難な外科的到達法について脳神経外科医の立場から解説する. 同部に発生した腫瘍は頭蓋内外へ進展するため, 多くの症例で一方向からのみですべてを露出することはできない. 症例毎にいくつかの手術アプローチを単独でもしくは組み合わせて手術を行っている. また近年, 診断と治療が容易にできるようになったこの部の硬膜動静脈瘻や舌咽神経痛についても簡単に紹介する.

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