著者
中本 吉紀 飯野 ゆき子 小寺 一興
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.172-181, 2005-02-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

【目的】 騒音性難聴を呈した2症例の側頭骨標本を観察し, 聴力像と内耳変化の関係を調べ内耳変化の要因を考察した.【対象】 症例1は50歳男性, 甲状腺癌で死亡した症例で38年間印刷工場に就労し, 純音聴力検査にて4kHzを中心とした高音障害型感音難聴を認めた. 症例2は58歳男性, 上顎洞癌にて死亡した症例で22年間建設現場に就労し, 高音急墜型感音難聴を認めた.【方法】 光学顕微鏡下に内耳変化を観察し, Schuknechtらのaudio-cytocochleogram作成法に基づきaudio-cytocochleogramを作成した.【結果】 側頭骨病理所見では症例1, 2において基底回転のコルチ器, ラセン神経節細胞, 神経線維に変性, 消失を認めた. 症例1では血管条にも変性, 消失を認めた. Audio-cytocochleogramにおいて症例1, 2の難聴像と内耳変化は一致し, 特に症例1のコルチ器, 血管条の変性, 消失は限局性で高度であった.【結論】 騒音性難聴の成因として長期間の騒音暴露により基底板の最大振幅部のコルチ器は, 音響エネルギーの機械的ストレスと音刺激による感覚細胞の代謝亢進から疲弊し, 障害を生じることはよく知られている. また動物実験では, 騒音暴露により蝸牛内循環障害が生じることが報告されている. 今回の症例1においてはコルチ器に加え血管条にも変性を生じていたことから, ヒトにおける騒音性難聴の側頭骨病理変化の成因として従来からの説である疲弊効果に加え, 騒音暴露による蝸牛内循環障害も生じる可能性があると考えられた.

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騒音性難聴2症例の側頭骨病理所見 (日本耳鼻咽喉科学会会報/108 巻 (2005) 2 号) https://t.co/Y30QT6rFIt 症例1は50歳男性, 38年間印刷工場に就労し, 純音聴力検査にて4kHzを中心とした高音障害型感音難聴を認めた. 症例2は58歳男性, 22年間建設現場に就労し, 高音急墜型感音難聴を認めた.

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