- 著者
-
上羽 瑠美
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
- 巻号頁・発行日
- vol.125, no.10, pp.1440-1445, 2022-10-20 (Released:2022-11-05)
- 参考文献数
- 45
新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) による新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) は, 2019年末に始まり, 世界中で大流行となった. COVID-19 の臨床症状はさまざまだが, 特にほかのウイルス感染症と比較して感覚器障害 (嗅覚障害・味覚障害) の頻度が高いことが特徴である. 新型コロナウイルス感染のためにはホスト側の ACE2 や NRP1 といった受容体の存在や, TMPRSS2 や Furin といったプロテアーゼの存在が重要である. COVID-19 による嗅覚障害では, 気導性嗅覚障害, 嗅神経性嗅覚障害, 中枢性嗅覚障害の全てが生じ得る.多くの場合, 発症から2週間以内に改善するが, 半年以上経過しても症状が改善せず遷延する場合がある. 治療法はまだ確立されていないが, 症状が数週間続く場合には, ステロイド鼻噴霧や嗅覚刺激療法が適応となる. 本稿ではまず新型コロナウイルス感染の機序について説明し, 次いで COVID-19 による嗅覚障害の機序について解説する. 最後に, COVID-19 による嗅覚障害の臨床像や治療法について述べる.