著者
栄藤 稔
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-51, 2023-11-20 (Released:2023-12-28)
参考文献数
51

生成AIの技術進化が2022年から急激に加速し、ユーザーを取り込んだ新たなコンテンツ経済圏が形成されようとしている。2014年に発明されたGAN(生成的敵対ネットワーク)という技術により、人が区別できないほど精巧な画像が自動生成されるようになった。さらに、2016年、データを高度に抽象化する深層学習技術、トランスフォーマーが登場した。これは「データを与えさえすれば機械が自動学習する」という教師なし学習の大きなブレークスルーとなった。そして2022年、ChatGPTに代表されるコンテンツを自動生成する技術が登場し、多様なメディアを対象として急速に進化しようとしている。深層学習の進化、音声や画像認識の実用化、そしてこれらの技術組み合わせることで、従来人間が行っていた文章の執筆、絵の描画、楽曲の制作、動画の撮影や編集といったクリエイティブな作業がAIによって置き換えられる時代が到来した。コンテンツ制作の主体がプロのクリエーターから一般の人々へと移行する可能性が出てきた。従来のクリエーター中心の視点から、ユーザー中心の視点へのコンテンツ経済圏のシフトが予見される。AIが作成したコンテンツをAIGC(AI Generated Content)と呼ぶ。それがどのような経済圏を作るかを議論したい。脚本の生成や俳優の演技のデジタル複製・変更が簡単に行えるようになり、これが脚本家や俳優の役割や権利への影響をもたらすことが予想される。このような変化は、クリエーターとして知られる脚本家、アニメーター、俳優などの様々な分野の専門家たちの生態系に大きな変動を引き起こす可能性がある。日本には、ポケモンに代表されるキャラクターコンテンツを中心とした世界的に成功を収めているメディアフランチャイズ事業や、ユーザー主導でのコンテンツの流通を特徴とするコミュニケーションマーケットなどの独自の文化が存在する。その代表例として初音ミクを取り上げる。デジタル技術の進化、ユーザーの積極的な参加、ファンの熱狂、そして柔軟な著作権管理を組み合わせたビジネスモデルが、日本において生成AIを効果的にビジネスに取り入れるための良い土壌を形成している。今後、ソーシャルメディアと生成AIの組み合わせによって、ユーザー生成コンテンツ(UGC)がAIGCと一体化し、世界的に広がっていくことが期待される。一方で、生成AIの技術の利用には、著作権法の問題や倫理的な課題など、様々な問題が伴う。特に、人間の感性や独自性を持つコンテンツの生成に関しては、AIとのバランスをどのように取るかが重要となる。生成AI技術と人間のクリエーターが対立するのではなく、互いに共存し、新しい形のコンテンツを共に生み出すことが、今後のコンテンツ産業の発展の鍵となる。

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興味ある人向け。 生成AIの発展と新たなコンテンツ経済圏 : 大阪大学 栄藤 稔氏著 https://t.co/bpfZORRI6V 一行だけだけが、MMDが出てくる

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