- 著者
-
田中 和子
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.279-289, 2013 (Released:2014-03-05)
- 参考文献数
- 15
目 的 インドネシアバリ島の現地男性と結婚した日本人女性が,バリ=ヒンドゥー教の思想と子育てとの関係をどのように捉え,子育てをめぐりどのような生活体験をしているのかを明らかにする。対象と方法 研究者はインドネシア,バリ島に約3ヶ月間滞在し,ヒンドゥー教の思想をもつ男性と結婚した日本人女性11名を対象に,バリ=ヒンドゥー教の思想に関連した生活体験がどのように子育てに影響を与えているか,半構造的面接を行い,帰納的に分析し検討した。結 果 分析の結果,12個のカテゴリーと39個のサブカテゴリーが抽出された。 【バリの生活に馴染む努力】を積極的にする女性たちは,【ヒンドゥー教を受容】することが容易であり,【子どもに民間療法を取り入れる】ことも受容的であった。一方,ヒンドゥー教の受容が難しい場合,【子どもに民間療法を取り入れない】傾向があった。女性たちは,【ヒンドゥー教受容の難しさ】を感じながらも,【みんなで子どもを育てる】バリは日本よりも【子育てに適した環境】と捉えていた。また,女性たちは肯定的に【ヒンドゥー教と子どもの健康は関係する】と考えており,【大家族の生活に戸惑い】ながらも,【みんなで子どもを育てる】ことに感謝していた。女性たちは,【男児尊重の思想を否定】し,かつ思想に関して【子どもに選択肢を与えたい】という思いが,【ヒンドゥー教受容の難しさ】の要因として考えられた。ヒンドゥー教の受容の程度はさまざまであったが,女性たちは【バリで子どもを育てる覚悟】があった。結 論 バリ島で現地男性と結婚し,そこで暮らす日本人女性にとって,バリ=ヒンドゥー教の思想が子育てに大きく影響していた。